郊外の寂れた小屋で彼等は大いに語り合った。

「最近のラムザをどう思う?」
「駄目よ」
「そうだな 変わったとは言わないけど」
全員がうなずく。
「俺達はラムザの側近になるべく選ばれたエリートだ!」
「ああ!」
「ラムザが家の名を捨ててもここまで付いて来た!」
「真の忠誠!!」
「俺達は真の忠誠をラムザに示している!」
「なのにラムザは…」
「あの女騎士達が来てからラムザは駄目になったのよ!」
ヒステリックな声に一時、皆が閉口する。
「まあ…だ」
「あんな女 クリスタルになればいい」
「馬鹿言うなよ」
「…あなたは名家の奥方になりたかっただけでしょ?」
「そうよ悪い!? ラムザは騙されているのよ!」
「…まあ 落ち着け」

「ラムザが俺達を見ないなら独立するしかあるまい」
「それは嫌よ ラムザからは離れたくないわ」
「ラムザから離れては俺達の存在意義も無くなるぞ!」
「仕切り直すだけだ ラムザを連れて独立する」
「今のラムザが俺達に付いて来るかよ?」
「無理にでも連れて行く」
「…え?」
「ラムザを誘拐するんだ」

(うわぁ… 何か面白いことになってンな)
小屋の外でラッドが盗み聞きしていた。
ラムザ誘拐計画。
冷静なるリーダー格、算術士♂の提案を皆は受け入れた。

「しかし正面から拐うような真似は無理でしょう?」
話術士♀が銃をクルクル回す。
「…まあ ラムザも抵抗するだろう そしてアグリアスは手強い」
「いい装備品は私達には回ってこない」
涙目の忍者♀がう~と唸る。
「ラムザ馬鹿よ…」
「スキが無いなら作れ」
シーフ♂が華麗なコインマジックを披露する。
「先生が言ってたろ?」
「…俺は正面からヤりあってみたいがね」
竜騎士♂はシーフが隠したコインを見つけて弾いた。
「そうよ 私達の力を見せ付けるのよ!」
コインをキャッチしたモンク♀が、それを二つに曲げた。
「あ 嗚呼!? 銀貨なのに!」
(あの女はこの手で…倒す!)
「人は誰でも過ちを犯す」
算術士♂は立ち上がった。
「ラムザは過ちを犯した」
皆も立ち上がる。
「主の過ちを正すのは正しい部下の務めだ!」
「おお!!」
「ラムザの信頼を…我等の忠義を取り戻す!!!」
「おお!!!!」

(カーッ ヤバいなコレ)
ラッドは小屋を立ち去ることにした。
(どンな手を使って来るか 楽しみにしてるぜ?)
無論、ラムザ達に教えるつもりは無かった。
夕暮れ時、ラッドは宿に帰った。
(隣の部屋にはアグリアスがいるだろ)
「ああ お帰りラッド」
(まさか寝込みを襲うようなことは無いよな…)
宿を取れば大概、ラッドはラムザと同室だった。
「何処に行ってたの?」
「お散歩よ …お前なに読ンでンだ?」
ラムザは寝台に寝そべって古臭い本を読んでいた。
(… 絵本を見る子供のようだな)
「この本面白いよ 見つけて来てくれてありがとうラッド!」
「…?? 俺じゃないぞ」
「あ あれ!?」
「……」
「じ じゃあ誰だ?」
(誘拐されろ)

ノックが待ち遠しい。
私は部屋で落ち着かない時を過ごした。
(そろそろ また詰まる所でしょうね)
あの本を先に読んでいて良かった。
こんなことで浮かれている自分に些かの嫌悪も感じる。
ノックが鳴った。
(さあ次の選択肢は…)
表情を整えてドアを開けた。
「あの!」
「ん?」
ラムザでは無かった。
「よ よろしければお話でもしませんか?」
なんだ、機工士の…
「ピスタチオか」
「…ムスタディオ(以下ムスタ)です」
この男には悪いが煩わしさしか感じない。
「残念だが今はそんな気分ではない」
「そ そんなことを言わずに?」
ムスタを睨みつけそうになったので目を閉じた。
「駄目よ お姉さまには先約があるの」
(…?)
目を開けるとムスタの後ろに話術士♀が立っていた。
「相談を聞いて貰えるんでしたよね?」
「む… そう だ」
そんな約束をした覚えは無かったが渡りに舟。
「ほら帰った帰った!」
突っ放なされたムスタは肩を落として廊下に消えた。
「すまないな おかげで助かった」
「…いえ」
閉めようとしたドアを彼女が足で止めた。
「本当に 相談があるんです」
「悪いが今はそんな気分では」
「彼に告白 されたんです」
「…ほう?」
女性として、隊の年長者としての私に相談に来たのか。
苦手な話だがさて…どうしたものか。
「彼とは隊の者か 誰のことであろう?」
彼女は無言で横を向いていた。
(…… !?)
視線の先にはラムザの部屋のドアがあった。
(…え?)
「相談 聞いてくれますか?」
「… 私で良ければ力になろう」
私は彼女を部屋に招き入れた。

(作戦は始まった さあ勝負よアグリアス…!)

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最終更新:2010年03月26日 16:43