集団走行

集団走行(しゅうだんそうこう)とは、複数の人間や動物が何らかの形で一様に走行することを言う。当項目では、特に人間の自転車における集団走行について説明する。

概要

自転車を一人で移動手段としてのみ使用する場合、通常は単独での走行となる。しかし何らかの理由により、複数人で移動する場合はやむを得ず集団走行をしなければならない。
自転車で集団走行をする場合、一人で走る時には必要にならない周囲への気配りが必要となる。以下、そのためのルール等を説明する。

なお、自転車に少し乗る人になると、「一人で走ること」を「単機(たんき)」あるいは「単車(たんしゃ)」と呼ぶことがある。

集団での走り方

自転車は車道の左側を走らなければならないと法律で定められている。「単機」の場合も集団の場合もこのルールに則って走る。集団の場合は、縦に列をなして一人一人がぶつからないように車間をある程度設けて走行するのが一般的な方法である。車間は、詰め過ぎても広すぎてもならず、これは感覚で慣れていくほかない。ただし、詰めるよりは広い方が事故防止にはつながる。

完全に一列になるという必要も無い。必然的にそうなってはしまうが、1台ごとに右か左のどちらかに僅かに寄っていると、前方の確認がしやすくなる。

以下は当部活における集団走行の解説をする。以下の解説は必ずしも一般的な集団走行には当てはまらないことに留意されたい。

サインシステム(手信号)

集団走行は一人で走る場合とは違い、急な減速や、突然の方向転換などは危険である。これを防ぐためには、集団内で何らかの意志伝達を行う必要がある。

走行時の注意喚起あるいは信号の替わりとして、当部活では以下のようなサインを設けている。サインは口で発する言葉(『』内の言葉)と手を使ったジェスチャーによって表現する。ジェスチャーをする際には、一瞬だけ片手運転となるが、新入生など自転車に慣れていないうちはこの片手運転が困難な場合がある。その場合は、言葉のみで良いとされている。

サインは走行している人全員が、伝言ゲームのようにして最後尾まで伝えるルールとなっている。すなわち先頭の走者がサインを出した場合は、後続を走っている走者も同じようにサインを出す。そのまた後続の走者も同様である。これを繰り返して最後尾の走者まで伝わると、最後尾の走者は何らかの確認の意思を示す(具体的には「はい」などの返事)。

基本的にサインは先頭の走者、あるいは最後尾の走者いずれかが発する(発信者はサインによって決まっている)が、何らかの要因により、真ん中の走者がサインを発することもある。なお、特記が無いものはまず先頭の走者が発する。
  • 『徐行』
意味:後続の走者に徐行を指示する。徐行とは、すぐにストップ出来るような速度まで減速、またはその速度で走行することである。
ジェスチャー:腕を斜め下に出す。この際、筆者は手のひらを後ろの人に向けているが、これは部員それぞれであり、統一されていない。
  • 『ストップ』
意味:後続の走者に停止を指示する。止まりそうな速度になる時にも出されることが多い。
ジェスチャー:腕を後ろに出したあと、手の甲を背中に押し当てる。
  • 『路駐』
意味:最後尾の走者に路上駐車があることを知らせる。路上駐車がある場合は、それを避けるようにして通行しなければならず、その際に道路の中央まで出なければならないことがある。後続に車が来ていなければそのまま通過できるが、そうでない場合、後続の車をいったん止めた上で通過しなければならない。すなわち、最後尾に「後ろから車が来ていたら止めて」と伝える意味合いを持つ。このため、工事や自転車を避けるのに使われることもある。なお、通過のタイミングが整った時に、最後尾は「いいよ!」などの返事をすることになっている。
ジェスチャー:人差し指と中指を立てて残りの指を折りたたむ。この手のまま挙手をするようにし、さらにその手を左右に振る。
  • 『よけて』
意味:サインの通り、この先に障害物があることを知らせる。電柱や車止め、歩行者などをよける際に使用する。後述の『対向』と組み合わせて使用されることもある。
ジェスチャー:腕を後方に出し、手で障害物のある側に行かないように手を振る。向きは違うが、手招きと同様の所作である。左に障害物がある場合は左手、右にある場合は右手を用いる。「手招き」が遅れると、『徐行』と間違えることがある。
  • 『障害』
意味:『よけて』同様、この先に障害物があることを知らせる。『よけて』は衝突の危険があるものに使用するのに対し、『障害』は踏むと何らかの危険がある場合に使用される。すなわち、空き缶やペットボトル、木の枝、石や縁石にあてがった補助スロープなどがこちらの対象になる。
ジェスチャー:障害物を指さし、その指をぐるぐる回す。
  • 『対向』
意味:歩道内や自転車を除く一方通行路内で対向車が来ることを知らせる。対象は車、バスや自転車だが、歩道内の場合は歩行者の場合もある。意義としては後述の『後続』等と同様、現状より右側(または左側)を通行するのは危険、というものである。
ジェスチャー:このサインに対するジェスチャーは存在せず言葉だけの場合も多いが、『よけて』のジェスチャーを一緒に行うことがある。(特に対象が歩行者の場合)
  • 『行きます』
意味:信号が赤に変わりそうな時、急な減速が危険なため、やや速度を速めて少々強引に通過することを指示する。この際、真ん中の走者が危険と判断し、『ストップ』等の指示を出して集団がちぎれることがある。このため、この指示を出した後、先頭の走者は後ろの状況を確認することが望ましい。
ジェスチャー:人差し指を立てたまま挙手をし、その手を前後に振る。
  • 『後続』『大型』など
意味:このサインのみ最後尾の走者が最初に発する。路肩が狭い、後続車が大型のトラックであるなど、現状より右側を走行することが危険であること、あるいは現状より左側に寄る必要があることを知らせる。狭隘な道や交通量の多い道で多用される。
ジェスチャー:ジェスチャーは無く、「後続」と発声するのみである。なお、後続車が何であるかによって『後続』『大型』『バス』『自転車』などとサインが変わる。

その他のルール

  • 『徐行』、『ストップ』のサインのジェスチャーは左手で行うことが推奨されている。これは、右手でサインを出すと、自分の右側を走っている車に衝突する恐れがあるためである。しかし、そのほかのサインはどちらの手も使用することがあるため、この2つに関しても厳格に左手と決まっているわけではない。
  • 右左折をする際には、必ずその旨を宣言して曲がる方向に手を挙げる。もしくは指をさす。また、車道から歩道に入る時(その逆も同様)もその旨を宣言することになっている。
  • 『路駐』のサインはタクシー・バスに対しては使わないこととされている。これらに対しては原則として『ストップ』を使って一時停止をすることになっている。
  • バスは基本的にぬかさないことになっている。
サインシステムを取り入れている集団は当部活だけではないが、サインは少しずつ集団ごとに違う可能性もあるため、サインシステムは自転車界で一概に扱うことはできない。上記の例はあくまで自転車のサインシステムの一例であることに注意が必要である

先頭の役割

先頭の走者は、走行中最も「仕事」が多いポジションである。前述したように、前方の状況をつぶさに確認してそれをサインにして後続の走者に伝える役割のほか、ペースを集団の体力に合わせると言ったペースメーカーの役割も担わなければならない。さらに先頭は当然ながら風除けがいないため、向かい風の影響を最も受ける。ただ、自分のペースで走れると言ったメリットもある。

先頭の走者は時折後ろを振り向いて、後続の走者がきちんと付いてこれているかどうかを確認することが望ましい。こうすることで、何らかのトラブルで集団がちぎれてしまったことをすぐに把握できるほか、『路駐』のサインを出すときなどは、後続の状況を確認することでスムーズに通過できる場合が多いからである。先頭と最後尾の間に意思疎通が出来ていると、こう言った場面でも対処がしやすくなるため、この2人の役割および意思疎通は重要である。

速さと体力

集団走行の際には、全員が同じ速度で走らなければならない。そのため、集団内で体力に格差があると、各々がペースに不満を抱えたまま走行することになってしまう。なお、許容ペースの差異により、集団がバラバラになってしまうことを「ちぎれる」と表現する。例えば、3番目の走者に4番目の走者がついていかれず集団が分断した場合、3番目の走者は4番目の走者を「ちぎった」と表現し、4番目の走者は3番目の走者に「ちぎられた」と表現する。

走ることをメインに据えたイベントではこの体力の格差は死活問題になりかねないため、こうしたイベントでは、「基本的に同じようなペースで走れる」「同じくらいの体力を持つ」と言ったことを重点に班が作成される。このようなイベントはPラン○ランなどがある。なお、合宿においては多少の格差は考慮されないことが多い。これは、合宿において重要なのは、体力ではなく人間そのものだからである。

関連項目


2010年10月22日 (金) 21時45分55秒H

タグ:

手信号
最終更新:2010年10月22日 21:45