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デンバー地震

デンバー地震(デンバーじしん)とはアメリカ合衆国コロラド州のデンバー市の北の地域で1962年の春頃から1965年11月ごろまで地震が頻発した現象である。一ヶ月に数十回から多いときで60回以上も地震が発生していた。(Wikipedia「デンバー地震」より)」
 当時、コロラド鉱山大学の大学院生と地質コンサルタントにより、震源地周辺の工場が汚水を地下に注入しているのが原因だ、との指摘がなされた。
 はたしてこの指摘は本当だろうか?(当時は陸軍、地質学者、米国地質研究所から否定を食らった)
 相関係数を用いて地震の発生回数と汚水注入量の関係を調べてもよいが、ここでは「時間」という情報を生かすために時系列に沿って地震発生回数と汚水注入量をプロットしたグラフより双方の関係を調べる。
 具体的には、グラフの「波」に注目する。

大波の検定

 地震回数と汚水注入量のグラフのそれぞれ「真ん中」(メディアン)に線を引き、データを半々に分ける。もしも2つのグラフが同じ「波」を作っているなら、片方のデータが「上」(または「下」)にあるとき、もう片方のデータもまた「上」(または「下」)にあることになる。


 そこで、「上」を+、「下」を-と消める。そして、同じ時間(実際には汚水注入の効果の遅れを考慮し1ヶ月ずらしてある)のデータの積をそれぞれ計算する。すると、両者のデータが同じ「側」にあるとき符号は+に、違う「側」にあるとき符合は-となる。
 つまり、「波」が同じならば積の記号はすべてが+となることが期待できる。逆に、2つの「波」が鏡に合わせたように対称であれば積の記号がすべて-となることが期待できる。そして、2つの「波」にまったく関係がないとき、積の記号は+と-が同じ位の回数出現することが期待できる。
 そこで、「2つの『波』にはまったく関係がない(2つのグラフは独立である)」という仮説をたてる。そして、この仮説の元での食い違いの測度(\chi^2値)を計算し、その値が十分に大きければ(\chi^2分布の5%点の値よりも大きければ)この仮説を棄却し、「2つの『波』は無関係ではない」と主張することにする。
 食い違いの測度は次のように計算される。

\chi^2=\frac{(16-10)^2}{10}+\frac{(4-10)^2}{10}=7.2

そして、自由度が1の(+と-という2つの期待値を考慮しているので2-1=1)\chi^2分布における5%点は3.84であり、帰無仮説の成立している条件のもとでは、7.2というような値は5%よりも小さい確率でしか出現しないことがわかる。よって帰無仮説を棄却し、「2つの『波』は無関係ではない」と主張することにしよう。

小波の検定

 先は「真ん中」でデータをばっさりと切断し、いわば巨視的にグラフの関係を観察した。では、もっと細かく観察しても「2つのグラフは無関係ではない」といった主張はできるのだろうか?
 グラフの変化の方向に注目する。ある月におけるグラフの値は先月より増えているか、減っているかである(変化しない場合はとりあえず無視する)。


ここで増えている場合を+、減っている場合を-として、「大波の検定」のときのように積の符号を考える。この場合もグラフが同じなら積の符号は+に、対照なら-に、無関係なら+と-が半々、といった具合になることが予想される。
 そこで「+と-が半々」という帰無仮説をたて、この仮説からの食い違いの測度を計算する。

\chi^2=\frac{(9-9.5)^2}{9.5}+\frac{(10-9.5)^2}{9.5}=0.05

「大波の検定」で見たように、この値が3.84より大きくなければ仮説は棄却できない。よって「小波」を検定した場合、「2つの『波』は無関係ではない」という主張はできないことになる(ただし、「無関係である」かどうかは主張しないことにしておく)。

結局最初の話はどうなったのか?

 否定的な意見もあったものの、ためしに注入をやめてみたら地震はとまってしまった。また、本文中にある「松代群発地震」の後に松代で行われた注水実験でも同様の現象が観察された。

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最終更新:1970年01月01日 09:00