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:無題 195-200 - (2009/04/13 (月) 03:34:46) のソース

195 :1/6:2009/02/23(月) 00:12:50 ID:HbKNhnDX


マーに手紙を書いた。読み書きは苦手だけど、マーに会えないのは寂しいから頑張って書く。本当はアーサーの方が字も上手いし 
ものを書くのも得意だけど、マー達への手紙は俺が代表して書くと決めた。 
飯が不味いこと、朝バカ早く起きなきゃいけないのが辛いこと、看守の一人が豚鼻なこと、後よくつるんでる連中との下らない会話のこと。 
仕方ないからマルコのことも最近は書いてやる。もちろんアーサーについても書く。元気だとか、野球は相変わらず下手だとかそんなことを 
書いた。 
それから、もう少しでマーに会えること。後ちょっとでマーの手料理が食べられること。それが堪らなく嬉しいこと。 
マーのことが大好きなことも忘れずにきちんと書いた。 
それからフレッドにも書いてやる。そんなに単語のスペルも知らないから、『私は元気です』『私は野球をやります』みたいな、 
簡単で教科書にでも載ってそうな単文をいくつか書く。オマケにスマイルマークを一つ描いてやって終わりだ。 こんなお遊びみたいな 
手紙でもフレッドは喜べるから随分とお手軽な奴だ。でもフレッドの笑った顔はめちゃくちゃかわいい。だからこんなままごとみたいな事も 
やってやる。 
最後にハーマンに手紙を書く。内容はマーに書いたことよりちょっと“お上品”だ。主につるんでる奴等との話やそこで習った 
“遊び”なんかについて書いてる。本当は“割りの良い稼ぎ方”とかの話もしたいけど、検閲に引っ掛かったりするとヤバイからココを 
出るまでお預けだ。 
どれもお世辞にも出来のいい手紙じゃないけど、気にしない。どの手紙にも、きちんと追伸を書いてあるかチェックする。そして、封をした。 

  『俺達は元気だから大丈夫。だから、会いに来ないで。』 


「三つも出すのか?随分知り合いが多いんだな。」 
手紙を出す時、偶然マルコと鉢合わせた。 
「いいだろ。別に。お前だって三つも出すじゃねえか。ディノが。」 
「大人は色々入用なんだよ。フレッドにハーマン…それにケイトか。例の兄弟とマンマか?」 
「何で知ってる。」 
「アーサーから聞いたんだよ。最近よく話すんだ。」 
思わず絶句した。アーサーからはそんな話聞いてない。なんだかそれがとても不愉快だった。アーサーのことは全部知ってるつもりだったのに。 
「そう怒るなよ。俺が言ったんだ。兄貴には言うなよってな。言えばお前が怒る,それじゃあ身体に障るってな。」 
フォローするようにマルコが言った。それもまたムカついたけど、それが本当だとしたらアーサーは俺のことを気遣って黙っていた 
のかも知れない。だとしたら悪いのは俺だ。…余計に腹が立つ。 
俺は提出用の箱に手紙を投げ入れると怒りも隠さずに房に戻った。 


196 :2/6:2009/02/23(月) 00:13:48 ID:HbKNhnDX
「ロイド!ロイド!」レクリエーションの時間、アーサーが血相を変えてやってきた。いつもならアーサーと一緒に適当な奴等とつるむけれど、 
今日は俺一人で図書室にいた。 
「ロイド……」 
本棚がある一角、人目につかない場所で俺は踞っていた。ココの誰もがそうであるように、普段こんな所に来ることなんか滅多にない。でも 
今日はそうするしかなかった。 
「ロイド、やっぱりこんなの無理だって。バレないようにすればいいから……」 
「ん…っ…ダメだっ……アイツラ、いつ……ふっ…確かめに来るか、わかんねぇっ……」 
膝を抱えながら、乱れそうになる声を抑える。きゅっと唇を結び、出来る限り“それ”を意識しないようにしようとした。 
「これくらい……どってこと…ないっ…」 
そう。これくらい何でもない。何でもない。自分に言い聞かせながら耐えていた。 


「……何だよ。朝っぱらから。」 
前の傷は思ったより酷くなく、一週間もすれば随分よくなった。その間はアイツラの性欲処理に使われることもなく、久しぶりに静かな時間を 
過ごせた。だからこそマー達に手紙もかけた。ただ、その分ヤツラは欲求不満になり、更に俺にその責任を擦り付けてくることになった。 
それは当然――あくまで“ヤツラにとってしてみれば”だけど――強姦と言う形で俺に向けられてくる。お陰で最近は睡眠時間にまで不自由 
するようになっている始末だ。その朝も、ほんの数時間前まで好き放題レイプされていた。 
「何、お前もこの所色々大変だろ。だからコナーが労ってくれるんだとさ。」 
アレックスは含んだ笑いをしながら俺に言う。コイツラが笑っているときに録なことがあった試しがない。畜生が。 
「…ありがたくて涙が出るね。ギネスでも奢ってくれるのか?それともピートで煮たクソまずいジャガイモか?“人参頭”。」 
「くくくっ、もっといいもんだとよ。」 
膝にアーサーを載せながら、ユルギスが言った。……このユルギスが一番アーサーに馴れ馴れしくしやがる。ヤツラのボスはアレックス 
だけど、コイツの方がある意味危なくて、警戒しなきゃならない。 
「そこに座れ。」 
アレックスが指したのは木箱の上。指示通りに移動して腰を下ろす。またオナニーを見られるんだろうか。それとも、手足を縛られて 
孔を犯されるのだろうか。不安ばかりが渦巻く。 
「脚開け。ケツ穴見えるようにしろよ。」 
そう言いながら、アレックスはこっちにやって来る。手には何か瓶を持っていた。アレックスは俺の下半身を裸にし、瓶の蓋を開けると、 
その中身を手に取った。オイルか何かに見える。少しとろみのあるそれを指に取ると、アレックスは俺の孔に挿入した。 
「くっ………!」 
「チッ。暫く使ってなかったから固くなってやがる。面倒臭ぇ。」 
アレックスの言う通り、ソコは指一本でも痛みがあった。出し入れをされる度にずきずき痛み走る。ヌルヌルとした液体で少しは楽に 
なっている筈なのに傷のこともあってか、初めてレイプされた時のように辛く感じる。 
「いっ……ぅぐっ…はぁっ……はぁっ……あうぅっ!」 
指を二本、三本と追加され、息が上手くできなくなる。もしかしたら処女の時よりも辛いかもしれない。目尻に涙が滲んでくる。少し 
でも楽になろうと息んだり、逆に力を抜こうとしたけど一向に異物感は無くならない。本来は出すべき所に挿入れられる感覚。 
閉じようとする部分を無理矢理抉じ開けられる感覚。どれも最低だ。この状態で強姦されたら、とてもじゃないけど体が持たない。 
「やめっ…ふっ…馬鹿野郎っ……!」 
ぐちゃぐちゃと三本の指をピストンされた。ただいつもと違い、わざと前立腺を避けて刺激を続けた。そのせいでいつもは苦痛を 
紛らわせる“偽物の快感”も録に与えられず、もどかしさと辛さだけがどんどん募る。思い切りアレックスの肩に爪を立てた。服の上 
からじゃ殆んど意味がないのは分かっていたけれど、そうしなければ気が済まなかった。 
「……そろそろいいか。コナー。」 
びしょびしょになった指を抜きながら、アレックスがコナーを呼ぶ。きしし、と気色悪い笑い声が聞こえた。 
「おい、精液便所。病み上がりのテメエのために取って置きのプレゼントだ。“天にも昇る”ほど悦ばせてやるよ。」 
そう言ってクレーターだらけの酷い面の前にある物を差し出した。 

あの、看守の耳を落とした“アレ”だ。 

まさか―― 
「安心しろよ。あの屑看守とは違う。もっと気持ちいいことだぜ?」 
アレックスは瓶の中身をクロスにまぶした。それから、ゆっくりとソコに先端を潜り込ませた。 


197 :3/6:2009/02/23(月) 00:17:09 ID:HbKNhnDX
「ロイド…」 
アーサーが心配そうにこっちを見ている。その目に映る俺はとても無様だ。ぐちぐちと疼くアナル。連動して身体中が神経を剥き出しに 
されたように敏感になっている。端から見たらきと発情しきってハメられたがってるニンフォマニアそのものだ。荒くなる息を殺し、 
熱に浮かされたような体を抑える。 
「っ……ふぅっ…!」 
もどかしくて顔が熱くなるのがわかった。アーサーもそれを見ている。死ぬ程恥ずかしい。 
「ロイドだけこんなん嫌だ……」 
目の前でアーサーがぽつりと呟いた。俺は潤んだ瞳を向ける。 
「ロイド、俺のことは本当にいいから。ホントは俺がされるはずだったんだ。もう…」 
「うるさいっ…!お前はっ…絶対ダメだっ…!」 
途切れ途切れの声で怒鳴る。アーサーからそんな言葉聞きたくない。 
大事な家族を、しかも弟が地獄のどん底に落ちるって分かってて、奈落の縁に送り出そうとするやつがどこにいる? 
アーサーはきれいなままでいてほしい。 
アーサーをきれいなまま、最後まで守るって決めた。 
それが俺の望みで、俺がアーサーの兄ちゃんでいられる条件だ。 
アーサーをなくすなんて、俺には耐えられない。それにきっと、アーサーを失うと言うことはマーやフレッド――それから、 
ハーマンを失うってことだ。“アレ”がいなくなって、やっとみんなといられると思ったのに。 
段々アーサーも笑えるようになって、やっと幸せになれると思ったのに。 
「絶対…それだけは…絶対ダメだっ…!」 
力一杯アーサーの腕を掴んで、声を振り絞った。 
「ロ…ロイド……」 
アーサーは怯えているようだった。もしかしたら、戸惑っていたのかも知れない。とにかく、暗いトーンの声が聞こえた。もう一度 
膝を抱え直し、深く息をする。最悪なことにいつの間にか前立腺にクロスが当たる位置に降りてきている。クロスとそれを繋ぐ 
チェーンが中をこすり、ぞくっと背筋に甘い電気が走った。下着の中がべちょべちょになりかかってるのが分かる。さっきトイレで 
ペニスもアナルも拭いたのに。いかにも“欲しがってる”ような反応が死ぬ程腹立たしかった。目を閉じて、時間が早く過ぎるように 
だけ祈る。 
早く、早く、早く、早く。 
意味なんかないのに、馬鹿みたいに頭の中で何度も唱える。 
その時、ほんの一瞬空気が揺れる感じがした。反射的に目を開けると同時に、柔らかいものに包まれた。 


198 :4/6:2009/02/23(月) 00:18:48 ID:HbKNhnDX
「アー…サー……?」 
気付けば俺はアーサーの腕の中にいた。思いもよらない状況に頭が、体が固まる。 
「いいだろ?これくらい…こうしたら…少しは楽だろうから…」 
きゅっとアーサーの腕に力が込められる。 
「え…あ、ああ……」 
温かい。小さかった頃、ハーマンやアーサーと同じベッドで寝ていたのを思い出す。さっきまで縮こまっていた体がほぐされていく。 
背中に当てられた手が酷く俺を安心させた。体が勝手にアーサーの方へと凭れかかる。 
「あ…あぁっ……!」 
その拍子にクロスがぐぐっと前立腺を抉った。思わず締め付けそうになって、慌てそれを我慢する。出来るだけ中のクロスを意識 
しないよう、感じないよう、息むようにして孔を広げた。ところがそこ――括約筋というらしい――がすぐにもとに戻ろうとする。 
そして俺はまたぐちゅぐちゅになったアナルに集中してそこを押し広げる。その繰り返しだ。気にしないように、無視しようにする程 
中を苛むクロスの刺激を感じてしまう。完全に悪循環だ。 
「っ……ふぅっ…あ…んっ…チク…ショ…!」 
そんなに強い刺激じゃない。でもなぜか段々切羽詰まった息使いになる。こんなこと位で、なんで俺はこんなに乱れているんだ。これじゃあ 
アーサーにバレちまう。ぼやける頭で自分の体を呪った。 
「ロイド…ロイド…俺ここにいるから…ずっと側にいるから……」 
「…ひぐっ…アーサーっ…はぅっ………」 
欲望が弱火で炙られていく。イきたい、狂いたいって欲求でじわじわ全身を焼いていく。息はとっくの昔に上がりきってひいひい泣きそうに 
なってる。腰も少しずつ揺れはじめて、自分で刺激を求めていた。ぺニスはまだ半勃ちのままだが、確実に快感で脳がヤられ始めている。 
おかしい。いつもと違いすぎる。 
こんな感覚は今までなかった。犯され方が違うとか、溜まってるとか、そんな問題じゃない。 
もっと奥深いところ。そう、根本から違ってるんだ。“偽物の快感”なんかじゃない。 
これは――“本物”だ。 
「うあっ…!あ…あ…!違っ……!」 
気付いたときには遅かった。全身が戻れないところまで高められていて、抵抗できないまま一番の高みまで一気に持っていかれる。 
「え…ロ、ロイドっ…!?何っ…どうして…」 
「やめろっ…!やめっ…!」 
耳まで犯される。まだ声変わりもしてない高くて甘い声が全身を蝕む毒になる。アーサーが俺を抱く腕に力を込めた。それすら快感に 
感じた。身体も心も全部めちゃくちゃに犯されてる。こんな風にされたら絶対、絶対狂ってしまう。 
怖い。 
堪らず華奢なアーサーの身体にすがりつく。そして思い切り、アーサーを壊すくらいにその身体を抱き締めた。同時にずっと卑猥な熱に 
苛まれていたアナルが、耐えきれずにきゅうっと前立腺を抉り続けるクロスを締め付けた。 
「やだっ…やだっ…あ、あ…ひぃっ…んんんんーーーーーー!!!!!!」 
初めて体験する絶頂に絶叫した。アーサーの肩に涎でぐちゃぐちゃの口を押し当てて、ぼろぼろ涙を流しながら何度も痙攣して登り詰める。 
いつもからは考えられないくらい長くて圧倒的な快感に、本当に神経が焼き切れてしまったような錯覚を覚えた。 
「んー…んー……」 
やっと絶頂から降りてきた時にはもう全身の力が残っていなかった。自分で自分を支えきれず、そのままアーサーに身を預ける。 
「ロイドっ…ロイドっ……」 
「うるさい…アーサーっ…何でもないっ…」 
「っ…っ…ロイドぉ…」 
アーサーは嗚咽を漏らす。それでも俺を抱き締める腕の力は弱まらない。 
それが酷く嬉しくて、悲しかった。 


199 :5/6:2009/02/23(月) 00:19:26 ID:HbKNhnDX
どさっと言う音と共に体が麻袋の上に押し倒される。押し倒したのはアレックスだ。 
「はぁっ…あ…うぅ……」 
「なんだ、随分イい顔じゃねえか。まんま発情した犬だな。」 
アレックスが布越しにペニスに触る。 
「あひっ…!」 
ぶるりと体をひきつらせて射精をする。あれからアーサーを抱き締めながら、何度か絶頂を味あわされた。そのせいで身体中が敏感に 
なっていてどんな些細な刺激も快感に刷り変わってしまう。 
「コナー、意外によかったらしいぜ。またやってもいいかもな。」 
「だろ?“神の御加護”が身に染みたんだよ。けけけっ。」 
軽口を叩き合いながらアレックスは俺の下着を剥ぎ取る。ぬちゃっという音がして、汚い体液まみれのペニスとアナルが晒された。 
それから同じく汚物だらけの、孔から出ているクロスのチェーンを引っ張られる。 
「かはっ…!ひぎっ………」 
胃を引きずり出されるような違和感に悲鳴を上げた。しかしすぐにその感覚は甘い疼きに掻き消される。間も置かず、アレックスは 
息を荒くしながらソコへとモノの先端をめり込ませた。 
「や…あぁっ、ああああぁぁぁ……」 
録に準備もしてないのに、俺のアナルはズブズブとアレックスのペニスを飲み込んでしまった。痛みもいつもより少なくて、それが 
悔しい。パン、パンと肉がぶつかる音とクチャクチャという水の音が混じる。ピストンがどんどん早くなり、アレックスの限界が 
どんどん近づいているのだとわかった。また、あの神経を焼き尽くす絶頂に追いやられるのか。恐怖が熱で煮込まれ、ディップに 
なった脳ミソにじわじわ広がる。 
「ふっ…!キツくてチンコ食い千切られそうだっ…!おらっ!テメエの大好きなザーメン食らえっ!」 
中でアレックスのペニスが蠢くのがわかった。それから熱い精液を注ぎ込まれる。 
「ひぐぅ……あぁ…あ…」 
もう全部わからなくなる。この快感が“偽物”なのか“本物”なのか。俺が嫌なのか、悦んでるのか。 
「次は俺だ。アレックス。変われ!」 
ユルギスの声がする。それと同時にまた別のペニスが突っ込まれた。 
小さく、でも確かにアーサーが咽ぶのが聞こえた。 
(アーサー……ごめん…) 
頬を冷たいものが伝った。 


200 :6/6:2009/02/23(月) 00:21:11 ID:HbKNhnDX
食事の時間、見慣れない光景を見た。アーサーとマルコ。食堂の隅で二人が何かを話している。二人は前にも何度となく話して 
いたみたいだが、実際それを見るのは初めてだ。マルコはアレックスの手下ではないらしい。だから最近はそこまで邪険にせず話を 
していた。だけど同じイタ公だ。何か良くないことを話しているかもしれない。急いで二人の所に行く。 
「アーサー!」 
「あ…ロイド…」 
「おや、お兄様の登場か。」 
悪ぶれもせず、へらへら笑いながらマルコは手を振ってくる。自然に眉間に皺が寄る。 
「アーサー、先に行ってろ。」 
「あ…ああ。わかった。」 
不安そうに後ろを振り返りつつ、アーサーは列の方へと歩いていった。俺はマルコて対峙する。 
「何を話してた。」 
「何でもないさ。まあ、野球の話や後は家族だダチの話だよ。アレックスにチクるような真似はしない。」 
俺の言いたいことを見透かしたようにマルコは答えた。最近油断していたけど、やっぱりこいつは得体が知れない。不信感が募る。 
「そう構えるなよ。一応俺は嘘は吐かない。“我々”のビジネスは信用が大事だからな。」 
マルコの顔に不穏な影がさした気がする。いつもの間抜け面じゃなく、もっと底知れない感じの笑み。 
“我々”とは前に言っていたマフィアのことだろうか。 
「信頼ってのは宝石と一緒さ。この薄汚い世界じゃ希少価値がある。だから人間は金を払ってまで信頼を買う。だから“我々”は 
信頼を重んじる。……ロイド、信頼を勝ち得るにはどうしたらいいと思う?」 
ずいっとマルコの顔が近づいてきた。鼻と鼻の頭が微かに触れる。気圧されないよう、マルコから目を離さずに少しだけ首を横に振る。 
「簡単だよ。ロイド。“約束を守ればいい。”」 
心臓が直接握り潰されるように感じた。約束を守る。 

『お前はどうだ?ロイド。』 

マルコが言ったのか。それとも別の誰かが言ったのか。胸を突き刺す問いかけが頭に響く。 
「俺…は……」 
ハーマンとの約束は守れているのか。 
自分への誓いに背いてはいないか。 
心臓が早鐘のように鳴った。 
俺は、俺は―― 

「――悪かったな。脅かして。何にせよ心配してるってのは嘘じゃない。」 
思考を遮るようにマルコが言う。その顔はいつものペテン師顔に戻っていた。 
「お前達は本当にいい兄弟なんだろうな。アーサーもお前のこと随分よく言ってたよ。」 
「……何でお前は俺達のことに首を突っ込む。」 
マルコを見据えながら疑問をぶつける。本当にこいつの考えがわからない。 
マルコは笑った。そしてほんの一瞬、マルコの瞳に何かの感情を帯びた光が過った。 
「――俺にも弟がいたんだよ。昔、な。」 
ぽつりと呟くとまたマルコはいつもの胸糞悪い笑いを浮かべる。 
「もう行こう。飯がなくなる。不味い上に量が少ないだなんて救いようがない。」 
そう言ってマルコは先に行ってしまった。俺はただ立ちすくんでいた。 
「……畜生。」 
そう言葉を吐いてから踵を返す。何故か重い感情が溢れてきた。 
それは名前もわからないくせに、本当に胸糞悪くて、最低の感情だった。 
俺はアーサーの姿を見つけると、すぐに側へと駆け寄った。 


 -[[:第6話>:無題 213-222]]
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