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:せら-01

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55syota

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252 :せら-01 (1/2):2008/11/04(火) 16:28:56 ID:ZS4auG45
 星良(せら)は2階の自室から空を眺めながら、物憂げにため息をついていた。
「はぁ……」
 その様子をもしも部外者が見ていたなら、なぜ高校の男子寮の一室に小学生の女の子が居るのかと首を傾げていただろう。
 実際、外を歩いていたサラリーマンらしき男は星良を見つけた途端、慌てて寮の表札を二度見していた。

(やっぱり、おれは男には見えないのか……)
 星良自身も自分が高校生男子らしからぬ容姿をしていることは、日頃の周囲の態度から嫌でも自覚させられていた。
 だからこそ、悩んでいる。
(あの子に告白したとして、相手にしてくれないだろうなぁ……)
 例えクラスの皆から『星良に惚れる奴はロリコン』とまで言われていても、生物学上は15歳男子。女の子を好きになって恋に陥ったりもするのだ。

 カワイイカワイイとは30分に1回は言われるものの、カッコイイとは生涯に一度も言われたことがない。低身長で華奢で非力、見た目も名前も男らしくない。
 友人達に『ロンゲのモダンボーイはナオンにモテモテ』と熱弁されて試しに髪を伸ばしてみたもののセミロングになっただけで、ますます男らしくなくなった気もしている。というか嵌められた気がする。

(でも、もしあの子がおれのことをカワイイじゃなく、カッコイイって言ってくれたら……)
 悩む余り、次第に妄想じみていく。
「そんでもって一週間で30センチ身長が伸びたおれは見下ろしながらあの子の顎に手を置いて、ついにファーストキスを……なんちゃって、なんちゃってぇ!」

 ひとりでテレながらパタパタ両手を振って悶える星良を現実に引き戻したのは、聞き慣れた男子の声だった。
「せら、せーらー。いろんな意味でヤバイから戻ってこーい」
「ほにゃあ!?」
 妄想内ではいま正に唇が触れ合おうとしていたところで正気に返り、思わず素っ頓狂な声が出てしまう。
「くっ、その声のせいで『せら病』ってのが流行ってるそうだが、俺まで発病させる気か?」
「英介……! い、いつからそこに居た?」
「ああ、おまえが校庭に埋まっていたオーパーツで身長を伸ばすところから。おまえってアニメキャラ並に妄想を声に出すよな」
「あああああーあー!」
 哀れな星良は真っ赤になると両耳を塞いで布団に潜り込むことでしか、精神の均衡を保てなかったのだ。


 しばらくのあいだ精神を統一させた星良は、何事もなかったように布団の中から這い出ることができた。
 待っていたかのように英介がペットボトルのジュースを手渡してくる。
「まあ飲みねえ。それほど恋に悩むお前のために、親友の俺がいい物を持ってきてやったからな」
「い、いい物?」
 さっきのことは努めて頭から追い出して、星良はバナナオレをひと口飲んで息をついた。

 いい物、と聞いて以前に英介が見せてくれた本の数々が脳裏に浮かぶ。
「いや、それは、いまはいいよ。それに英介の持ってるのって、その、マ、マニアックなのばっかりだからおれとは趣味が……」
 縄で縛られたり首輪に着いた鎖を引かれたりしている女の子のイラストを思い出して、また頬が火照ってきてしまう。
「なーにを考えてんだよ。そうじゃなくて俺が持ってきてやったのはなあ、なんと人類憧れの……惚れ薬、だ!」
「ほれぐすりぃ?」
 星良は遠慮なく馬鹿を見るような目を英介へ向けた。


253 :せら-01 (2/2):2008/11/04(火) 16:29:55 ID:ZS4auG45
「な、なんだよ、その馬鹿を見るような目は!?」
「馬鹿を見る目だよ」
 星良はわざとらしくため息をついて首を振ってみせた。
「馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどここまで馬鹿だったなんて。ただの馬鹿だなんて馬鹿にするのも馬鹿馬鹿しいくらい馬鹿だな」
「くっ、人を馬鹿の王様みたいに言いやがって。ちゃんと古い文献を頼りに調合したんだからな」
「英介が調合したの? そんな危ない物を飲ませられるもんか」
 なおもどれだけ自分が馬鹿じゃないかを証明しようとする英介を無視して、星良はペットボトルを傾けた。

(まあ、冗談で元気付けようとしてくれてるのかも。ちゃんと相談に乗ってくれたのは英介だけだから、感謝はしてるけど)
 英介のくれたバナナオレの甘さが落ち込んだ喉に気持ちいい。
 しかし次の瞬間には、それを飲んだことを後悔させられた。
「別に気分悪くはなってないだろ? 早く効き目が出るように、そのジュースの中に惚れ薬混ぜてたんだよ」

 普通ならここで漫画よろしく噴水のようにジュースを吹き出すのだろうが、星良はどちらかというと綺麗好きな方だったので、そんな汚い真似はできなかった。
 代わりにゴクンと喉を鳴らしてさらにひと口、惚れ薬入りバナナオレを飲み込んでしまった。

「……なにをなにに入れてたって?」
「惚れ薬をそのジュースに」
「ごめん、もう一回」
「おまえはもう惚れ薬を飲んだんだって。見てろよ、いまから女子の前に出ればおまえはモテモテ……あ、そういえば男にも影響あるのかね? うわ、もしかして俺もヤバイか?」
 ひとり慌て始める英介を冷ややかに眺めつつ、星良は状況を整理しようと考えた。

「英介、お・ま・え・なぁ……!」
 どうやら英介が勘違いをしているらしいのは確かだ。
「惚れ薬なら普通、相手に飲ませるものだろーっ! う、ううん、そういう問題じゃない。勝手に! 無断で! わけのわからないものを飲ませるなんて、ああもうどうするんだよぉ!」
 今度は星良が慌てる番だった。かといってもう飲んでしまったものはしょうがない。
(だ、だいたい、惚れ薬なんて便利な物が本当に調合できるわけない。ないけど、それはいいとしても……)

「材料は? なんの材料で作ったのをおれに飲ませたんだよ!?」
「え、そりゃもう伝統と実績の素材……」
 ごそごそと英介は自分の鞄から古臭い本を一冊取り出してみせた。
 開かれたページに載っていたのは、真っ黒な四本足のイラスト。
「元祖イモリの黒焼き!」
「この、バカーーーっ!」
「ぐふっ!」
 込み上げる不快感のやり場もなく、とりあえず小さな拳を固めて右ストレートを叩き込む星良だった。


 なんとか英介に勘違いを理解させて疲れ切った星良は、その日はもう夕方から寝込むハメになってしまった。
 実際に身体へどれだけの影響があるかはともかく、気味の悪い物を飲まされた不快感は夜になっても消えない。

 一部屋二人ずつを割り当てられているこの男子寮での星良のルームメイトは、他でもない英介だ。だからこそ、恋愛の相談ができるほど仲が良くなったのではあるが。
 ベッドで寝込む星良の横で、いまだに英介は感心したように呟いていた。
「なるほどなぁ、相手に飲ませるのが惚れ薬で、モテたい奴が飲むなら惚れられ薬か……」
「ホント、おまえはバカの王様だよ……。バカが8人集まると英介になるんだ……」
 英介のバカな様子を見ているとまともに怒り続けるのも馬鹿らしくなってくる。

「しっかし、別に誰かに惚れるとかはないみたいだな」
 英介が少し落胆したように、ホッとしたように苦笑いした。
 釣られて星良も苦笑いを返す。
「イモリの黒焼きくらいでホントに効果があるわけないだろ」
「いやあ、ひょっとしてと思ったんだけどな。あー、他に気分悪いとかないか?」
「んー……?」
 聞かれて、改めて星良は自分の身体の異常を探してみた。もう吐き気もないし、頭痛などは初めからない。少し熱っぽくて心臓の動悸が激しいように感じられたが、ただの気のせいにも思える程度だ。

「なんともないよ。あんな物を飲まされたのが気持ち悪いってだけ」
「そ、そうか。なら良かった」
 若干の嫌味を込めてやったが、英介は心の底から安堵している。
(やり方は変だけど、相談のことを英介なりに心配してくれたからなんだよな。えへへ、なんだかんだで優しいよな)
 このときはまだ自分のちょっとした変化に、星良は気付いていなかったのだった。


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