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<p>魔法少女リリカルなのはStrikerS 第13話【命の理由】</p>
<p>はやて「失くしてしまったもの。起こってしまった出来事。過ぎ去っていった過去の時間は、<br />
変えることができない。だから、失いたくないと思う。守りたいと思う。守るために、強くなりたいと思う。<br />
選んだのは、戦って勝ち取ってゆくこと。見えない未来を、望んだ形に変えてゆくこと。<br />
魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」</p>
<p>アギト「生まれた時のことなんて覚えてないし、人間で言う親…マイスターが誰かなんてこともあたしは知らない。<br />
ただ静かに、たぶん随分長い間、眠ってただけ。気がつけば、白い部屋で実験動物。<br />
自分が、何のために生まれたのかが分かってただけに、辛かった。<br />
死ぬ自由すらなく、苦しいまま、いつか…心と身体が壊れて終わるんだって、思ってた。<br />
それが変わったのは…何だかひどくごつごつした手のひらと、小さな女の子が、あたしの前に現われてから」</p>
<p>ゼスト「なんだ？」<br />
ルーテシア「おいてっちゃうの？」<br />
ゼスト「あれは、古代ベルカ式。レプリカではない。純正の融合機だ。火災に気づいてやってくる局員が見つければ、<br />
丁重な保護を受けるはずだ」<br />
ルーテシア「そこでもまた、実験動物？」<br />
ゼスト「ここの連中ほど、ひどいものではない。…そう、思いたいがな」<br />
ルーテシア「ゼスト。連れていってあげよう？」<br />
ゼスト「…いいのか？」<br />
ルーテシア「うん。この子もきっと、私たちと同じだから」</p>
<p>アギト「あんなん思い出したのは、あいつらのせいだな。氷結魔法を使ってた、変なバッテンマークをつけた白い融合機。<br />
たぶん、あいつのロードの…赤い、騎士。あいつは…ロードのいない融合機の寂しさとか、知らねぇんだろうな。<br />
くっそぉ！！何かムカつく！！あんのバッテンチビめ！今度会ったら、絶対燃やしてやるぅ！！」</p>
<p>なのは「すみません、シグナムさん。車出してもらっちゃって」<br />
シグナム「何。車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスターシャッハがいらっしゃる。<br />
私が仲介したほうがいいだろう」<br />
なのは「…はい」</p>
<p>シグナム「しかし、検査が済んで何かしらの白黒がついたとして、あの子はどうなるのだろうな」<br />
なのは「あー。当面は六課か教会で預かるしかないでしょうね。受け入れ先を探すにしても、<br />
長期の安全確認が取れてからでないと…」<br />
シャッハ「騎士シグナム。聖王教会、シャッハ・ノエラです」<br />
シグナム「どうされました？」<br />
シャッハ「すみません。こちらの不手際がありまして。…検査の合間に、あの子が姿を消してしまいました」</p>
<p>シャッハ「申し訳ありません！」<br />
なのは「状況はどうなってますか？」<br />
シャッハ「はい…。特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます。<br />
今のところ、飛行や転移。侵入者の反応は見つかっていません」<br />
なのは「外には出られないはずですよね？」<br />
シャッハ「ええ」<br />
なのは「では、手分けして探しましょう。シグナム副隊長」<br />
シグナム「はいっ」</p>
<p>シグナム「検査では、一応危険反応はなかったのですよね？」<br />
シャッハ「ええ。魔力量はそれなりに高い数値でしたが、それも、普通の子供の範疇でした」<br />
シグナム「しかし、それでも」<br />
シャッハ「悲しいことですが、人造生命体なのは間違いないです。どんな潜在的な危険を持っているか……」</p>
<p>シャッハ「逆巻け！ヴィンゲルシャフト！！」</p>
<p>なのは「ごめんね。ビックリしたよね？大丈夫？」<br />
ヴィヴィオ「あ…」<br />
なのは「立てる？」『緊急の危険はなさそうです。ありがとうございました、シスターシャッハ』<br />
シャッハ『あ…はい』</p>
<p>なのは「始めまして。高町なのはって言います。お名前、言える？」<br />
ヴィヴィオ「…ヴィヴィオ」<br />
なのは「ヴィヴィオ…。いいね。かわいい名前だ。ヴィヴィオ、どこか行きたかった？」</p>
<p>ヴィヴィオ「ママ…いないの」<br />
なのは「！！…ああ、それは大変。じゃあ一緒に探そうか」<br />
ヴィヴィオ「……うん」</p>
<p>フェイト「臨時査察って…機動六課に？」<br />
はやて「うん…。地上本部にそういう動きがあるみたいなんよ～」<br />
フェイト「地上本部の査察は、かなり厳しいって…」<br />
はやて「……ぅぅ。うちはただでさえ、つっこみどころまんさいの部隊やしな～」<br />
フェイト「今配置やシフトの変更命令が出たりしたら、正直、致命的だよ？」<br />
はやて「う～ん…何とかのりきらな…」<br />
フェイト「……。ねぇ、これ、査察対策にも関係してくるんだけど。六課設立の本当の理由、そろそろ聞いてもいいかな？」<br />
はやて「……そやね。まぁ、ええタイミングかな。今日、これから聖王教会本部、<br />
カリムのところに報告に行くんよ。クロノ君もくる」<br />
フェイト「クロノも？」<br />
はやて「なのはちゃんと一緒についてきてくれるかな？そこで、まとめて話すから」<br />
フェイト「うん」</p>
<p>フェイト「あの…何の騒ぎ？」<br />
なのは「あ、フェイト隊長。実は…」<br />
ヴィヴィオ「やだぁ～！！！行っちゃやだぁ～！！！！！」</p>
<p>はやて「エース・オブ・エースにも、勝てへん相手はおるもんやね～」<br />
なのは『フェイトちゃん、はやてちゃん…。あの…助けて！』</p>
<p>はやて「スバル、キャロ。とりあえず少し落ちつこか？離れて休め」</p>
<p>フェイト「こんにちわ～」<br />
ヴィヴィオ「え？」<br />
フェイト「この子は、あなたのお友達？」<br />
なのは「ヴィヴィオ。こちらフェイトさん。なのはさんの大事なお友達」<br />
フェイト「ヴィヴィオ、どうしたの？」<br />
ヴィヴィオ「……」</p>
<p>なのは『とりあえず、病院から連れて帰ってきたんだけど、何か、離れてくれないの』<br />
フェイト『ふふっ、懐かれちゃったのかな？』<br />
なのは『それで、フォワード陣に相手してもらおうと思ったんだけど…』<br />
スバル・ティアナ・エリオ・キャロ『すみません…』<br />
フェイト『ふふっ、いいよ。任せて』</p>
<p>フェイト「ねぇ、ヴィヴィオはなのはさんと一緒にいたいの？」<br />
ヴィヴィオ「……うん」<br />
フェイト「でもなのはさん、大事なご用で、お出かけしなきゃいけないのに、<br />
ヴィヴィオが我侭いうから困っちゃってるよ？この子も、ほら」</p>
<p>ヴィヴィオ「うぁ…ぅ」<br />
フェイト「ヴィヴィオは、なのはさんを困らせたいわけじゃないんだよね？」<br />
ヴィヴィオ「…うん」</p>
<p>スバル『な、何かフェイトさん。達人的なオーラが…』<br />
エリオ『フェイトさん、まだちっちゃい甥っ子さんと姪っ子さんがいますし…』<br />
キャロ『使い魔さんも育ててますし』<br />
ティアナ『あー！更にあんたらのちっちゃい頃も知ってるわけだしねぇ～』<br />
フェイト「だからいい子で待ってよう？ね」<br />
ヴィヴィオ「…うん」<br />
なのは「ありがとね、ヴィヴィオ。ちょっとお出かけしてくるだけだから」<br />
ヴィヴィオ「…ぅ…うん」</p>
<p>なのは「ごめんね～。お騒がせして」<br />
はやて「いやぁ～。ええもん見せてもらったよ」</p>
<p>なのは「ぅ……」<br />
フェイト「ふふっ」<br />
はやて「しかし、あの子はどうしよか？何なら、教会に預けとくんでもええけど」<br />
なのは「平気。帰ったら、私がもう少し話して、なんとかするよ」<br />
はやて「そぉか」<br />
なのは「今は、周りに頼れる人がいなくって、不安なだけだと思うから」</p>
<p>スバル「書類仕事苦手ぇ～」<br />
ティアナ「今日はライトニングの分も引き受けちゃったしね～。…それでも、保育士もどきよりは楽だわ」<br />
スバル「え～。私は結構楽しかったけどなぁ～っと」<br />
ティアナ「…ああ。それ昨日の」<br />
スバル「アルトが記録した、各種の詳細データ付き。あれだけのことをしでかして、<br />
使ってたのは魔力じゃなくて別系統のエネルギー。そんなの、身体の中に内包してるってことは…<br />
やっぱり、こいつら…。ん？あぎっ！！…ティ、ティア？」<br />
ティアナ「馬鹿ねぇ。こいつらが何なのか考えるのなんて、あたしらの仕事じゃないでしょ？<br />
判断するのはロングアーチスタッフと隊長たち。あたしらが作ってんのは、その判断材料としての報告書。<br />
分かったらさっさと作業」<br />
スバル「んん……はぁい」<br />
ティアナ「それに確定が出たとしても、あんたが悩むことじゃないでしょ？ちゃんとしてなさい」<br />
スバル「ティア…。うん、ありがと」<br />
ティアナ「うっさいっ」</p>
<p>カリム「どうぞ」<br />
なのは「失礼します。高町なのは一等空尉であります」<br />
フェイト「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です」<br />
カリム「ああ、始めまして。聖王教会教会騎士団騎士、カリム・グラシアと申します」</p>
<p>カリム「私たちは個人的にも友人だから、いつも通りで平気ですよ」<br />
クロノ「と、騎士カリムが仰せだ。普段と同じで」<br />
はやて「平気や」<br />
なのは「じゃあ、クロノ君、久しぶり」<br />
フェイト「お兄ちゃん、元気だった？」<br />
クロノ「！！それはよせ。お互い、もういい歳だぞ？」<br />
フェイト「兄妹関係に年齢は関係ないよ、クロノ」<br />
はやて「さて、昨日の動きについてのまとめと、改めて、機動六課設立の裏表について。それから、今後の話や」</p>
<p>キャロ「何か、本当に普通の子供だよね」<br />
エリオ「うん…」(この子が人造魔道師素体だとするなら、知識や言語がはっきりしすぎてる。<br />
人工受精子なら、こうはならない。たぶん、記憶があるんだ。元になった人物の)<br />
キャロ「エリオ君？」<br />
エリオ「！」<br />
キャロ「どうかした？」<br />
エリオ「あ、ご、ごめん！何でもない！」<br />
キャロ「？」<br />
エリオ(プロジェクトＦは、まだどこかで続いてる)</p>
<p>クロノ「六課設立の表向きの理由は、ロストロギア・レリックの対策と、独立性の高い少数部隊の実験例。<br />
知っての通り、六課の後見人は僕と騎士カリム。それから僕とフェイトの母親で上官、リンディ・ハラオウンだ。<br />
それに加えて、非公式ではあるが、かの三提督も設立を認め、協力の約束をしてくれている」<br />
なのは・フェイト「！」</p>
<p>カリム「その理由は、私の能力と関係があります。私の能力、プロフェーティン・シュリフテン。<br />
これは最短で半年、最長で数年先の未来。それを詩文形式で書き出した、預言書の作成を行うことができます。<br />
二つの月の魔力が上手く揃わないと発動できませんから、ページの作成は、年に一度しかできません。<br />
予言の中身も、古代ベルカ語で、解釈によって意味が変わることがある難解な文章。<br />
世界に起こる事件をランダムに書き出すだけです。解釈ミスも含めれば、的中率や実用性は割とよく当たる占い程度。<br />
つまりは、あまり便利な能力ではないんですが…」</p>
<p>クロノ「聖王教会はもちろん、次元航行部隊のトップもこの予言には目を通す。<br />
信用するかどうかは別にして、有識者による予想状況の一つとしてな」</p>
<p>はやて「ちなみに、地上部隊はこの予言がお嫌いや。実質のトップが、この手のレアスキルとかお嫌いやからなぁ」<br />
なのは「レジアス・ゲイズ中将。だね」</p>
<p>クロノ「そんな騎士カリムの予言能力に、数年前から少しずつ、ある事件が書き出されている」<br />
カリム「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地。死せる王の下、聖地より、かの翼が蘇る。死者たちが踊り、<br />
なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、それを先駆けにあまたの海を守る法の船も砕け落ちる」<br />
なのは「それって…」<br />
フェイト「まさか」<br />
カリム「ロストロギアをきっかけに始まる管理局地上本部の壊滅と…そして、管理局システムの崩壊」</p>
<p>レジアス「査察の日程は決まったのか？」<br />
オーリス「人員は確保しました。週明け早々に行います」<br />
レジアス「連中が何をたくらんでいるやら知らんが、土にまみれ血を流して地上の平和を守ってきたのは我々だ。<br />
それを軽んじる海の連中や蒙昧な教会連中に、いいようにされてたまるものか！<br />
何より、最高評議会は私の味方だ。そうだろ？オーリス」<br />
オーリス「はい」</p>
<p>オーリス「機動六課について、事前調査をしたのですが、あれはなかなか巧妙にできています。<br />
さしたる経歴もない若い部隊長を頭にすえ、主力二名も移籍ではなく本局からの貸し出し扱い。<br />
部隊長の身内である固有戦力をのぞけば、後は皆新人ばかり。そして何より、期間限定の実験部隊扱い」<br />
レジアス「ふん。つまりは使い捨てか」<br />
オーリス「本局に問題提起が起きるようなトラブルがあれば、簡単に切り捨てるでしょう。そういう編成です」<br />
レジアス「小娘は生贄か。元犯罪者にはうってつけの役割だ」<br />
オーリス「まぁ、彼女はそれさえ、望んで選んだ道でしょうけれど」</p>
<p>はやて「ほんなら、なのはちゃん、フェイトちゃん」<br />
なのは「うん」<br />
フェイト「情報は十分。大丈夫だよ」</p>
<p>はやて「……あのな！」<br />
なのは・フェイト「？」<br />
はやて「私にとって、二人は命の恩人で、大切な友達や。六課が、どんな展開と結末になるかは、まだわからへんけど」<br />
なのは「その話なら、出向決める時に、ちゃんと聞いたよ？」<br />
フェイト「私もなのはも、ちゃんと納得してここにいる。大丈夫」</p>
<p>なのは「それに、私の教導隊入りとか、フェイトちゃんの試験とか、はやてちゃんや八神家の皆、<br />
すごくフォローしてくれたじゃない」<br />
フェイト「だから今度ははやての夢をフォローしないとって」<br />
はやて「あかんなぁ。それやと、恩返しとフォローの永久期間や」<br />
なのは「あはははは！」<br />
フェイト「友達って、そういうもんだと思うよ」<br />
なのは「八神部隊長。今のところ、部隊長は何も間違っていないであります」<br />
フェイト「だから大丈夫。いつものように、堂々と命令してください。胸をはって、えへんと」<br />
はやて「……うん！！」</p>
<p>なのは「ただいまぁ～」<br />
ヴィヴィオ「！！」<br />
フェイト「ただいま～」<br />
なのは「ヴィヴィオ。ただいま。いい子にしてた？」<br />
フェイト「ありがとね。エリオ、キャロ」<br />
エリオ「いえ」<br />
キャロ「ヴィヴィオ、いい子でいてくれましたよ」<br />
なのは「そう」</p>
<p>はやて「グレアムおじさん……。あたしの命は、グレアムおじさんが育ててくれて、<br />
うちの子たちが守ってくれて、なのはちゃんたちに救ってもらって。<br />
あの子が、初代リインフォースが残してくれた命や。あんな悲しみとか後悔なんて、<br />
この世界の誰にもあったらあかん。あたしの命は、そのために使うんや」</p>
<p>次回予告</p>
<p>スバル「出動待機の日々。続く訓練と、日常と」<br />
なのは「機動六課の行く先と行き場のないあの子。私に今できること」<br />
スバル「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS第１４話」<br />
なのは「Mothers＆Children」<br />
なのは・スバル「Take off!」</p>
<p>魔法少女リリカルなのはStrikerS 第13話【命の理由】</p>
<p>はやて「失くしてしまったもの。起こってしまった出来事。過ぎ去っていった過去の時間は、<br />
変えることができない。だから、失いたくないと思う。守りたいと思う。守るために、強くなりたいと思う。<br />
選んだのは、戦って勝ち取ってゆくこと。見えない未来を、望んだ形に変えてゆくこと。<br />
魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」</p>
<p>アギト「生まれた時のことなんて覚えてないし、人間で言う親…マイスターが誰かなんてこともあたしは知らない。<br />
ただ静かに、たぶん随分長い間、眠ってただけ。気がつけば、白い部屋で実験動物。<br />
自分が、何のために生まれたのかが分かってただけに、辛かった。<br />
死ぬ自由すらなく、苦しいまま、いつか…心と身体が壊れて終わるんだって、思ってた。<br />
それが変わったのは…何だかひどくごつごつした手のひらと、小さな女の子が、あたしの前に現われてから」</p>
<p>ゼスト「なんだ？」<br />
ルーテシア「おいてっちゃうの？」<br />
ゼスト「あれは、古代ベルカ式。レプリカではない。純正の融合機だ。火災に気づいてやってくる局員が見つければ、<br />
丁重な保護を受けるはずだ」<br />
ルーテシア「そこでもまた、実験動物？」<br />
ゼスト「ここの連中ほど、ひどいものではない。…そう、思いたいがな」<br />
ルーテシア「ゼスト。連れていってあげよう？」<br />
ゼスト「…いいのか？」<br />
ルーテシア「うん。この子もきっと、私たちと同じだから」</p>
<p>アギト「あんなん思い出したのは、あいつらのせいだな。氷結魔法を使ってた、変なバッテンマークをつけた白い融合機。<br />
たぶん、あいつのロードの…赤い、騎士。あいつは…ロードのいない融合機の寂しさとか、知らねぇんだろうな。<br />
くっそぉ！！何かムカつく！！あんのバッテンチビめ！今度会ったら、絶対燃やしてやるぅ！！」</p>
<p>なのは「すみません、シグナムさん。車出してもらっちゃって」<br />
シグナム「何。車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスターシャッハがいらっしゃる。<br />
私が仲介したほうがいいだろう」<br />
なのは「…はい」</p>
<p>シグナム「しかし、検査が済んで何かしらの白黒がついたとして、あの子はどうなるのだろうな」<br />
なのは「あー。当面は六課か教会で預かるしかないでしょうね。受け入れ先を探すにしても、<br />
長期の安全確認が取れてからでないと…」<br />
シャッハ「騎士シグナム。聖王教会、シャッハ・ノエラです」<br />
シグナム「どうされました？」<br />
シャッハ「すみません。こちらの不手際がありまして。…検査の合間に、あの子が姿を消してしまいました」</p>
<p>シャッハ「申し訳ありません！」<br />
なのは「状況はどうなってますか？」<br />
シャッハ「はい…。特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます。<br />
今のところ、飛行や転移。侵入者の反応は見つかっていません」<br />
なのは「外には出られないはずですよね？」<br />
シャッハ「ええ」<br />
なのは「では、手分けして探しましょう。シグナム副隊長」<br />
シグナム「はいっ」</p>
<p>シグナム「検査では、一応危険反応はなかったのですよね？」<br />
シャッハ「ええ。魔力量はそれなりに高い数値でしたが、それも、普通の子供の範疇でした」<br />
シグナム「しかし、それでも」<br />
シャッハ「悲しいことですが、人造生命体なのは間違いないです。どんな潜在的な危険を持っているか……」</p>
<p>シャッハ「逆巻け！ヴィンゲルシャフト！！」</p>
<p>なのは「ごめんね。ビックリしたよね？大丈夫？」<br />
ヴィヴィオ「あ…」<br />
なのは「立てる？」『緊急の危険はなさそうです。ありがとうございました、シスターシャッハ』<br />
シャッハ『あ…はい』</p>
<p>なのは「始めまして。高町なのはって言います。お名前、言える？」<br />
ヴィヴィオ「…ヴィヴィオ」<br />
なのは「ヴィヴィオ…。いいね。かわいい名前だ。ヴィヴィオ、どこか行きたかった？」</p>
<p>ヴィヴィオ「ママ…いないの」<br />
なのは「！！…ああ、それは大変。じゃあ一緒に探そうか」<br />
ヴィヴィオ「……うん」</p>
<p>フェイト「臨時査察って…機動六課に？」<br />
はやて「うん…。地上本部にそういう動きがあるみたいなんよ～」<br />
フェイト「地上本部の査察は、かなり厳しいって…」<br />
はやて「……ぅぅ。うちはただでさえ、つっこみどころまんさいの部隊やしな～」<br />
フェイト「今配置やシフトの変更命令が出たりしたら、正直、致命的だよ？」<br />
はやて「う～ん…何とかのりきらな…」<br />
フェイト「……。ねぇ、これ、査察対策にも関係してくるんだけど。六課設立の本当の理由、そろそろ聞いてもいいかな？」<br />
はやて「……そやね。まぁ、ええタイミングかな。今日、これから聖王教会本部、<br />
カリムのところに報告に行くんよ。クロノ君もくる」<br />
フェイト「クロノも？」<br />
はやて「なのはちゃんと一緒についてきてくれるかな？そこで、まとめて話すから」<br />
フェイト「うん」</p>
<p>フェイト「あの…何の騒ぎ？」<br />
なのは「あ、フェイト隊長。実は…」<br />
ヴィヴィオ「やだぁ～！！！行っちゃやだぁ～！！！！！」</p>
<p>はやて「エース・オブ・エースにも、勝てへん相手はおるもんやね～」<br />
なのは『フェイトちゃん、はやてちゃん…。あの…助けて！』</p>
<p>はやて「スバル、キャロ。とりあえず少し落ちつこか？離れて休め」</p>
<p>フェイト「こんにちわ～」<br />
ヴィヴィオ「え？」<br />
フェイト「この子は、あなたのお友達？」<br />
なのは「ヴィヴィオ。こちらフェイトさん。なのはさんの大事なお友達」<br />
フェイト「ヴィヴィオ、どうしたの？」<br />
ヴィヴィオ「……」</p>
<p>なのは『とりあえず、病院から連れて帰ってきたんだけど、何か、離れてくれないの』<br />
フェイト『ふふっ、懐かれちゃったのかな？』<br />
なのは『それで、フォワード陣に相手してもらおうと思ったんだけど…』<br />
スバル・ティアナ・エリオ・キャロ『すみません…』<br />
フェイト『ふふっ、いいよ。任せて』</p>
<p>フェイト「ねぇ、ヴィヴィオはなのはさんと一緒にいたいの？」<br />
ヴィヴィオ「……うん」<br />
フェイト「でもなのはさん、大事なご用で、お出かけしなきゃいけないのに、<br />
ヴィヴィオが我侭いうから困っちゃってるよ？この子も、ほら」</p>
<p>ヴィヴィオ「うぁ…ぅ」<br />
フェイト「ヴィヴィオは、なのはさんを困らせたいわけじゃないんだよね？」<br />
ヴィヴィオ「…うん」</p>
<p>スバル『な、何かフェイトさん。達人的なオーラが…』<br />
エリオ『フェイトさん、まだちっちゃい甥っ子さんと姪っ子さんがいますし…』<br />
キャロ『使い魔さんも育ててますし』<br />
ティアナ『あー！更にあんたらのちっちゃい頃も知ってるわけだしねぇ～』<br />
フェイト「だからいい子で待ってよう？ね」<br />
ヴィヴィオ「…うん」<br />
なのは「ありがとね、ヴィヴィオ。ちょっとお出かけしてくるだけだから」<br />
ヴィヴィオ「…ぅ…うん」</p>
<p>なのは「ごめんね～。お騒がせして」<br />
はやて「いやぁ～。ええもん見せてもらったよ」</p>
<p>なのは「ぅ……」<br />
フェイト「ふふっ」<br />
はやて「しかし、あの子はどうしよか？何なら、教会に預けとくんでもええけど」<br />
なのは「平気。帰ったら、私がもう少し話して、なんとかするよ」<br />
はやて「そぉか」<br />
なのは「今は、周りに頼れる人がいなくって、不安なだけだと思うから」</p>
<p>スバル「書類仕事苦手ぇ～」<br />
ティアナ「今日はライトニングの分も引き受けちゃったしね～。…それでも、保育士もどきよりは楽だわ」<br />
スバル「え～。私は結構楽しかったけどなぁ～っと」<br />
ティアナ「…ああ。それ昨日の」<br />
スバル「アルトが記録した、各種の詳細データ付き。あれだけのことをしでかして、<br />
使ってたのは魔力じゃなくて別系統のエネルギー。そんなの、身体の中に内包してるってことは…<br />
やっぱり、こいつら…。ん？あぎっ！！…ティ、ティア？」<br />
ティアナ「馬鹿ねぇ。こいつらが何なのか考えるのなんて、あたしらの仕事じゃないでしょ？<br />
判断するのはロングアーチスタッフと隊長たち。あたしらが作ってんのは、その判断材料としての報告書。<br />
分かったらさっさと作業」<br />
スバル「んん……はぁい」<br />
ティアナ「それに確定が出たとしても、あんたが悩むことじゃないでしょ？ちゃんとしてなさい」<br />
スバル「ティア…。うん、ありがと」<br />
ティアナ「うっさいっ」</p>
<p>カリム「どうぞ」<br />
なのは「失礼します。高町なのは一等空尉であります」<br />
フェイト「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です」<br />
カリム「ああ、始めまして。聖王教会教会騎士団騎士、カリム・グラシアと申します」</p>
<p>カリム「私たちは個人的にも友人だから、いつも通りで平気ですよ」<br />
クロノ「と、騎士カリムが仰せだ。普段と同じで」<br />
はやて「平気や」<br />
なのは「じゃあ、クロノ君、久しぶり」<br />
フェイト「お兄ちゃん、元気だった？」<br />
クロノ「！！それはよせ。お互い、もういい歳だぞ？」<br />
フェイト「兄妹関係に年齢は関係ないよ、クロノ」<br />
はやて「さて、昨日の動きについてのまとめと、改めて、機動六課設立の裏表について。それから、今後の話や」</p>
<p>キャロ「何か、本当に普通の子供だよね」<br />
エリオ「うん…」『この子が人造魔道師素体だとするなら、知識や言語がはっきりしすぎてる。<br />
人工受精子なら、こうはならない。たぶん、記憶があるんだ。元になった人物の』<br />
キャロ「エリオ君？」<br />
エリオ「！」<br />
キャロ「どうかした？」<br />
エリオ「あ、ご、ごめん！何でもない！」<br />
キャロ「？」<br />
エリオ『プロジェクトＦは、まだどこかで続いてる』</p>
<p>クロノ「六課設立の表向きの理由は、ロストロギア・レリックの対策と、独立性の高い少数部隊の実験例。<br />
知っての通り、六課の後見人は僕と騎士カリム。それから僕とフェイトの母親で上官、リンディ・ハラオウンだ。<br />
それに加えて、非公式ではあるが、かの三提督も設立を認め、協力の約束をしてくれている」<br />
なのは・フェイト「！」</p>
<p>カリム「その理由は、私の能力と関係があります。私の能力、プロフェーティン・シュリフテン。<br />
これは最短で半年、最長で数年先の未来。それを詩文形式で書き出した、預言書の作成を行うことができます。<br />
二つの月の魔力が上手く揃わないと発動できませんから、ページの作成は、年に一度しかできません。<br />
予言の中身も、古代ベルカ語で、解釈によって意味が変わることがある難解な文章。<br />
世界に起こる事件をランダムに書き出すだけです。解釈ミスも含めれば、的中率や実用性は割とよく当たる占い程度。<br />
つまりは、あまり便利な能力ではないんですが…」</p>
<p>クロノ「聖王教会はもちろん、次元航行部隊のトップもこの予言には目を通す。<br />
信用するかどうかは別にして、有識者による予想状況の一つとしてな」</p>
<p>はやて「ちなみに、地上部隊はこの予言がお嫌いや。実質のトップが、この手のレアスキルとかお嫌いやからなぁ」<br />
なのは「レジアス・ゲイズ中将。だね」</p>
<p>クロノ「そんな騎士カリムの予言能力に、数年前から少しずつ、ある事件が書き出されている」<br />
カリム「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地。死せる王の下、聖地より、かの翼が蘇る。死者たちが踊り、<br />
なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、それを先駆けにあまたの海を守る法の船も砕け落ちる」<br />
なのは「それって…」<br />
フェイト「まさか」<br />
カリム「ロストロギアをきっかけに始まる管理局地上本部の壊滅と…そして、管理局システムの崩壊」</p>
<p>レジアス「査察の日程は決まったのか？」<br />
オーリス「人員は確保しました。週明け早々に行います」<br />
レジアス「連中が何をたくらんでいるやら知らんが、土にまみれ血を流して地上の平和を守ってきたのは我々だ。<br />
それを軽んじる海の連中や蒙昧な教会連中に、いいようにされてたまるものか！<br />
何より、最高評議会は私の味方だ。そうだろ？オーリス」<br />
オーリス「はい」</p>
<p>オーリス「機動六課について、事前調査をしたのですが、あれはなかなか巧妙にできています。<br />
さしたる経歴もない若い部隊長を頭にすえ、主力二名も移籍ではなく本局からの貸し出し扱い。<br />
部隊長の身内である固有戦力をのぞけば、後は皆新人ばかり。そして何より、期間限定の実験部隊扱い」<br />
レジアス「ふん。つまりは使い捨てか」<br />
オーリス「本局に問題提起が起きるようなトラブルがあれば、簡単に切り捨てるでしょう。そういう編成です」<br />
レジアス「小娘は生贄か。元犯罪者にはうってつけの役割だ」<br />
オーリス「まぁ、彼女はそれさえ、望んで選んだ道でしょうけれど」</p>
<p>はやて「ほんなら、なのはちゃん、フェイトちゃん」<br />
なのは「うん」<br />
フェイト「情報は十分。大丈夫だよ」</p>
<p>はやて「……あのな！」<br />
なのは・フェイト「？」<br />
はやて「私にとって、二人は命の恩人で、大切な友達や。六課が、どんな展開と結末になるかは、まだわからへんけど」<br />
なのは「その話なら、出向決める時に、ちゃんと聞いたよ？」<br />
フェイト「私もなのはも、ちゃんと納得してここにいる。大丈夫」</p>
<p>なのは「それに、私の教導隊入りとか、フェイトちゃんの試験とか、はやてちゃんや八神家の皆、<br />
すごくフォローしてくれたじゃない」<br />
フェイト「だから今度ははやての夢をフォローしないとって」<br />
はやて「あかんなぁ。それやと、恩返しとフォローの永久期間や」<br />
なのは「あはははは！」<br />
フェイト「友達って、そういうもんだと思うよ」<br />
なのは「八神部隊長。今のところ、部隊長は何も間違っていないであります」<br />
フェイト「だから大丈夫。いつものように、堂々と命令してください。胸をはって、えへんと」<br />
はやて「……うん！！」</p>
<p>なのは「ただいまぁ～」<br />
ヴィヴィオ「！！」<br />
フェイト「ただいま～」<br />
なのは「ヴィヴィオ。ただいま。いい子にしてた？」<br />
フェイト「ありがとね。エリオ、キャロ」<br />
エリオ「いえ」<br />
キャロ「ヴィヴィオ、いい子でいてくれましたよ」<br />
なのは「そう」</p>
<p>はやて「グレアムおじさん……。あたしの命は、グレアムおじさんが育ててくれて、<br />
うちの子たちが守ってくれて、なのはちゃんたちに救ってもらって。<br />
あの子が、初代リインフォースが残してくれた命や。あんな悲しみとか後悔なんて、<br />
この世界の誰にもあったらあかん。あたしの命は、そのために使うんや」</p>
<p>次回予告</p>
<p>スバル「出動待機の日々。続く訓練と、日常と」<br />
なのは「機動六課の行く先と行き場のないあの子。私に今できること」<br />
スバル「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS第１４話」<br />
なのは「Mothers＆Children」<br />
なのは・スバル「Take off!」</p>
