魔法少女リリカルなのはStrikerS 第13話【命の理由】
はやて「失くしてしまったもの。起こってしまった出来事。過ぎ去っていった過去の時間は、 変えることができない。だから、失いたくないと思う。守りたいと思う。守るために、強くなりたいと思う。 選んだのは、戦って勝ち取ってゆくこと。見えない未来を、望んだ形に変えてゆくこと。 魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」
アギト「生まれた時のことなんて覚えてないし、人間で言う親…マイスターが誰かなんてこともあたしは知らない。 ただ静かに、たぶん随分長い間、眠ってただけ。気がつけば、白い部屋で実験動物。 自分が、何のために生まれたのかが分かってただけに、辛かった。 死ぬ自由すらなく、苦しいまま、いつか…心と身体が壊れて終わるんだって、思ってた。 それが変わったのは…何だかひどくごつごつした手のひらと、小さな女の子が、あたしの前に現われてから」
ゼスト「なんだ?」ルーテシア「おいてっちゃうの?」ゼスト「あれは、古代ベルカ式。レプリカではない。純正の融合機だ。火災に気づいてやってくる局員が見つければ、 丁重な保護を受けるはずだ」ルーテシア「そこでもまた、実験動物?」ゼスト「ここの連中ほど、ひどいものではない。…そう、思いたいがな」ルーテシア「ゼスト。連れていってあげよう?」ゼスト「…いいのか?」ルーテシア「うん。この子もきっと、私たちと同じだから」
アギト「あんなん思い出したのは、あいつらのせいだな。氷結魔法を使ってた、変なバッテンマークをつけた白い融合機。 たぶん、あいつのロードの…赤い、騎士。あいつは…ロードのいない融合機の寂しさとか、知らねぇんだろうな。 くっそぉ!!何かムカつく!!あんのバッテンチビめ!今度会ったら、絶対燃やしてやるぅ!!」
なのは「すみません、シグナムさん。車出してもらっちゃって」シグナム「何。車はテスタロッサからの借り物だし、向こうにはシスターシャッハがいらっしゃる。 私が仲介したほうがいいだろう」なのは「…はい」
シグナム「しかし、検査が済んで何かしらの白黒がついたとして、あの子はどうなるのだろうな」なのは「あー。当面は六課か教会で預かるしかないでしょうね。受け入れ先を探すにしても、 長期の安全確認が取れてからでないと…」シャッハ「騎士シグナム。聖王教会、シャッハ・ノエラです」シグナム「どうされました?」シャッハ「すみません。こちらの不手際がありまして。…検査の合間に、あの子が姿を消してしまいました」
シャッハ「申し訳ありません!」なのは「状況はどうなってますか?」シャッハ「はい…。特別病棟とその周辺の封鎖と避難は済んでいます。今のところ、飛行や転移。侵入者の反応は見つかっていません」なのは「外には出られないはずですよね?」シャッハ「ええ」なのは「では、手分けして探しましょう。シグナム副隊長」シグナム「はいっ」
シグナム「検査では、一応危険反応はなかったのですよね?」シャッハ「ええ。魔力量はそれなりに高い数値でしたが、それも、普通の子供の範疇でした」シグナム「しかし、それでも」シャッハ「悲しいことですが、人造生命体なのは間違いないです。どんな潜在的な危険を持っているか……」
シャッハ「逆巻け!ヴィンゲルシャフト!!」
なのは「ごめんね。ビックリしたよね?大丈夫?」ヴィヴィオ「あ…」なのは「立てる?」『緊急の危険はなさそうです。ありがとうございました、シスターシャッハ』シャッハ『あ…はい』
なのは「始めまして。高町なのはって言います。お名前、言える?」ヴィヴィオ「…ヴィヴィオ」なのは「ヴィヴィオ…。いいね。かわいい名前だ。ヴィヴィオ、どこか行きたかった?」
ヴィヴィオ「ママ…いないの」なのは「!!…ああ、それは大変。じゃあ一緒に探そうか」ヴィヴィオ「……うん」
フェイト「臨時査察って…機動六課に?」はやて「うん…。地上本部にそういう動きがあるみたいなんよ~」フェイト「地上本部の査察は、かなり厳しいって…」はやて「……ぅぅ。うちはただでさえ、つっこみどころまんさいの部隊やしな~」フェイト「今配置やシフトの変更命令が出たりしたら、正直、致命的だよ?」はやて「う~ん…何とかのりきらな…」フェイト「……。ねぇ、これ、査察対策にも関係してくるんだけど。六課設立の本当の理由、そろそろ聞いてもいいかな?」はやて「……そやね。まぁ、ええタイミングかな。今日、これから聖王教会本部、カリムのところに報告に行くんよ。クロノ君もくる」フェイト「クロノも?」はやて「なのはちゃんと一緒についてきてくれるかな?そこで、まとめて話すから」フェイト「うん」
フェイト「あの…何の騒ぎ?」なのは「あ、フェイト隊長。実は…」ヴィヴィオ「やだぁ~!!!行っちゃやだぁ~!!!!!」
はやて「エース・オブ・エースにも、勝てへん相手はおるもんやね~」なのは『フェイトちゃん、はやてちゃん…。あの…助けて!』
はやて「スバル、キャロ。とりあえず少し落ちつこか?離れて休め」
フェイト「こんにちわ~」ヴィヴィオ「え?」フェイト「この子は、あなたのお友達?」なのは「ヴィヴィオ。こちらフェイトさん。なのはさんの大事なお友達」フェイト「ヴィヴィオ、どうしたの?」ヴィヴィオ「……」
なのは『とりあえず、病院から連れて帰ってきたんだけど、何か、離れてくれないの』フェイト『ふふっ、懐かれちゃったのかな?』なのは『それで、フォワード陣に相手してもらおうと思ったんだけど…』スバル・ティアナ・エリオ・キャロ『すみません…』フェイト『ふふっ、いいよ。任せて』
フェイト「ねぇ、ヴィヴィオはなのはさんと一緒にいたいの?」ヴィヴィオ「……うん」フェイト「でもなのはさん、大事なご用で、お出かけしなきゃいけないのに、ヴィヴィオが我侭いうから困っちゃってるよ?この子も、ほら」
ヴィヴィオ「うぁ…ぅ」フェイト「ヴィヴィオは、なのはさんを困らせたいわけじゃないんだよね?」ヴィヴィオ「…うん」
スバル『な、何かフェイトさん。達人的なオーラが…』エリオ『フェイトさん、まだちっちゃい甥っ子さんと姪っ子さんがいますし…』キャロ『使い魔さんも育ててますし』ティアナ『あー!更にあんたらのちっちゃい頃も知ってるわけだしねぇ~』フェイト「だからいい子で待ってよう?ね」ヴィヴィオ「…うん」なのは「ありがとね、ヴィヴィオ。ちょっとお出かけしてくるだけだから」ヴィヴィオ「…ぅ…うん」
なのは「ごめんね~。お騒がせして」はやて「いやぁ~。ええもん見せてもらったよ」
なのは「ぅ……」フェイト「ふふっ」はやて「しかし、あの子はどうしよか?何なら、教会に預けとくんでもええけど」なのは「平気。帰ったら、私がもう少し話して、なんとかするよ」はやて「そぉか」なのは「今は、周りに頼れる人がいなくって、不安なだけだと思うから」
スバル「書類仕事苦手ぇ~」ティアナ「今日はライトニングの分も引き受けちゃったしね~。…それでも、保育士もどきよりは楽だわ」スバル「え~。私は結構楽しかったけどなぁ~っと」ティアナ「…ああ。それ昨日の」スバル「アルトが記録した、各種の詳細データ付き。あれだけのことをしでかして、 使ってたのは魔力じゃなくて別系統のエネルギー。そんなの、身体の中に内包してるってことは… やっぱり、こいつら…。ん?あぎっ!!…ティ、ティア?」ティアナ「馬鹿ねぇ。こいつらが何なのか考えるのなんて、あたしらの仕事じゃないでしょ? 判断するのはロングアーチスタッフと隊長たち。あたしらが作ってんのは、その判断材料としての報告書。 分かったらさっさと作業」スバル「んん……はぁい」ティアナ「それに確定が出たとしても、あんたが悩むことじゃないでしょ?ちゃんとしてなさい」スバル「ティア…。うん、ありがと」ティアナ「うっさいっ」
カリム「どうぞ」なのは「失礼します。高町なのは一等空尉であります」フェイト「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です」カリム「ああ、始めまして。聖王教会教会騎士団騎士、カリム・グラシアと申します」
カリム「私たちは個人的にも友人だから、いつも通りで平気ですよ」クロノ「と、騎士カリムが仰せだ。普段と同じで」はやて「平気や」なのは「じゃあ、クロノ君、久しぶり」フェイト「お兄ちゃん、元気だった?」クロノ「!!それはよせ。お互い、もういい歳だぞ?」フェイト「兄妹関係に年齢は関係ないよ、クロノ」はやて「さて、昨日の動きについてのまとめと、改めて、機動六課設立の裏表について。それから、今後の話や」
キャロ「何か、本当に普通の子供だよね」エリオ「うん…」『この子が人造魔道師素体だとするなら、知識や言語がはっきりしすぎてる。 人工受精子なら、こうはならない。たぶん、記憶があるんだ。元になった人物の』キャロ「エリオ君?」エリオ「!」キャロ「どうかした?」エリオ「あ、ご、ごめん!何でもない!」キャロ「?」エリオ『プロジェクトFは、まだどこかで続いてる』
クロノ「六課設立の表向きの理由は、ロストロギア・レリックの対策と、独立性の高い少数部隊の実験例。 知っての通り、六課の後見人は僕と騎士カリム。それから僕とフェイトの母親で上官、リンディ・ハラオウンだ。 それに加えて、非公式ではあるが、かの三提督も設立を認め、協力の約束をしてくれている」なのは・フェイト「!」
カリム「その理由は、私の能力と関係があります。私の能力、プロフェーティン・シュリフテン。 これは最短で半年、最長で数年先の未来。それを詩文形式で書き出した、預言書の作成を行うことができます。 二つの月の魔力が上手く揃わないと発動できませんから、ページの作成は、年に一度しかできません。 予言の中身も、古代ベルカ語で、解釈によって意味が変わることがある難解な文章。 世界に起こる事件をランダムに書き出すだけです。解釈ミスも含めれば、的中率や実用性は割とよく当たる占い程度。 つまりは、あまり便利な能力ではないんですが…」
クロノ「聖王教会はもちろん、次元航行部隊のトップもこの予言には目を通す。 信用するかどうかは別にして、有識者による予想状況の一つとしてな」
はやて「ちなみに、地上部隊はこの予言がお嫌いや。実質のトップが、この手のレアスキルとかお嫌いやからなぁ」なのは「レジアス・ゲイズ中将。だね」
クロノ「そんな騎士カリムの予言能力に、数年前から少しずつ、ある事件が書き出されている」カリム「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地。死せる王の下、聖地より、かの翼が蘇る。死者たちが踊り、 なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、それを先駆けにあまたの海を守る法の船も砕け落ちる」なのは「それって…」フェイト「まさか」カリム「ロストロギアをきっかけに始まる管理局地上本部の壊滅と…そして、管理局システムの崩壊」
レジアス「査察の日程は決まったのか?」オーリス「人員は確保しました。週明け早々に行います」レジアス「連中が何をたくらんでいるやら知らんが、土にまみれ血を流して地上の平和を守ってきたのは我々だ。 それを軽んじる海の連中や蒙昧な教会連中に、いいようにされてたまるものか! 何より、最高評議会は私の味方だ。そうだろ?オーリス」オーリス「はい」
オーリス「機動六課について、事前調査をしたのですが、あれはなかなか巧妙にできています。 さしたる経歴もない若い部隊長を頭にすえ、主力二名も移籍ではなく本局からの貸し出し扱い。 部隊長の身内である固有戦力をのぞけば、後は皆新人ばかり。そして何より、期間限定の実験部隊扱い」レジアス「ふん。つまりは使い捨てか」オーリス「本局に問題提起が起きるようなトラブルがあれば、簡単に切り捨てるでしょう。そういう編成です」レジアス「小娘は生贄か。元犯罪者にはうってつけの役割だ」オーリス「まぁ、彼女はそれさえ、望んで選んだ道でしょうけれど」
はやて「ほんなら、なのはちゃん、フェイトちゃん」なのは「うん」フェイト「情報は十分。大丈夫だよ」
はやて「……あのな!」なのは・フェイト「?」はやて「私にとって、二人は命の恩人で、大切な友達や。六課が、どんな展開と結末になるかは、まだわからへんけど」なのは「その話なら、出向決める時に、ちゃんと聞いたよ?」フェイト「私もなのはも、ちゃんと納得してここにいる。大丈夫」
なのは「それに、私の教導隊入りとか、フェイトちゃんの試験とか、はやてちゃんや八神家の皆、 すごくフォローしてくれたじゃない」フェイト「だから今度ははやての夢をフォローしないとって」はやて「あかんなぁ。それやと、恩返しとフォローの永久期間や」なのは「あはははは!」フェイト「友達って、そういうもんだと思うよ」なのは「八神部隊長。今のところ、部隊長は何も間違っていないであります」フェイト「だから大丈夫。いつものように、堂々と命令してください。胸をはって、えへんと」はやて「……うん!!」
なのは「ただいまぁ~」ヴィヴィオ「!!」フェイト「ただいま~」なのは「ヴィヴィオ。ただいま。いい子にしてた?」フェイト「ありがとね。エリオ、キャロ」エリオ「いえ」キャロ「ヴィヴィオ、いい子でいてくれましたよ」なのは「そう」
はやて「グレアムおじさん……。あたしの命は、グレアムおじさんが育ててくれて、 うちの子たちが守ってくれて、なのはちゃんたちに救ってもらって。 あの子が、初代リインフォースが残してくれた命や。あんな悲しみとか後悔なんて、 この世界の誰にもあったらあかん。あたしの命は、そのために使うんや」
次回予告
スバル「出動待機の日々。続く訓練と、日常と」なのは「機動六課の行く先と行き場のないあの子。私に今できること」スバル「次回魔法少女リリカルなのはStrikerS第14話」なのは「Mothers&Children」なのは・スバル「Take off!」
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