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「腕時計焼け2」(2008/08/28 (木) 11:27:58) の最新版変更点
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<p>俺と古泉は海の家に居た。<br />
無論、海で泳ぐためだが、古泉は着替え終えた後――と言っても、お互い事前に<br />
海パンを着て来たから服を脱いだ後、と言ったほうが正しいのかもしれないが――<br />
日焼け止めクリームを塗っている。<br />
「……女じゃねーんだから、少しぐらい日焼けしていいんじゃねーの?」<br />
「日焼けは皮膚ガンの元なのですよ。健康第一ですからね」<br />
言うことは最もかもしれないが、若い身空でガン予防とか爺臭く感じてしまうし、<br />
何より俺はこの土方焼けを消すほうが先決だった。<br />
「手が空いているのなら、背中を塗って頂けませんか?」<br />
「ったく、しゃーねーな」<br />
断ったところでこの部屋を出るのが遅くなるだけだと判断し、奴から日焼け止め<br />
クリームを受け取る。<br />
「あーあ、何で野郎の背中を塗ってるんだか」<br />
俺はこれ見よがしに文句を言いながら日焼け止めクリームを塗りたくるが、<br />
「どうせなら朝比奈さんの背中に塗りたかったぜ」<br />
古泉は俺のそんな戯れ言も意に介さないようで、<br />
「それは奇遇ですね。僕も出来たら朝比奈さんに塗ってもらいたかったですよ」<br />
口元を手で押さえながら笑っている。<br />
本当にああ言えばこう言う奴だ。<br />
「塗り終えたぞ」<br />
塗り終えた俺は、古泉に日焼け止めクリームを返す。<br />
「ああ、すみませんでした」<br />
古泉はそれを受け取るが、その際にふと奴の手首にある腕時計に目が移る。<br />
奴は俺の視線の行く先を察したのか、<br />
「メンテナンスから戻って来たのですよ。防水仕様ですから、海でも大丈夫です」<br />
片手を挙げて腕時計を見せた。<br />
毎度ながら厳つい時計だな――<br />
ふと思い立って腕時計に手を掛け、奴が驚いている隙に素早く腕時計を外し取る。<br />
「えっと……その腕時計はめてみます?」<br />
古泉は俺の意図が掴めないようでキョトンとした表情でいるが、<br />
「いや……」<br />
俺は奴の腕を取ると、腕時計焼けを舐め始めた。<br />
「何で腕時計焼けなんて舐めているんです?」<br />
「ここだけ日焼け止めクリーム塗ってないから」<br />
古泉の怪訝そうな問い掛けに、答えになっているようでなっていない返事をする。<br />
「そう…ですか」<br />
奴は声のトーンを落としてつぶやくと、そのまま黙りこくっていた。</p>
<p>それから少し時が経過しただろうか。<br />
「……いつまで舐めているんですか?」<br />
古泉は少し緊張した声で尋ねるが、俺はその声を無視して舐め続ける。<br />
「あの……ですね」<br />
奴の腕が徐々に熱を帯び、かすかに震えている。<br />
「……日焼け止めクリームを塗っていない場所は…他にもあると思うのですが」<br />
俺は腕時計焼けから顔を離すと、そっと見上げて奴の表情を伺う。<br />
「例えば?」<br />
「ええと……その……」<br />
古泉は頬染めながら言い淀む。<br />
「どこだ? 言ってみろ」<br />
「うっ……」<br />
そんなに口で言うのが恥ずかしいのだろうか。<br />
奴は尚も頬を染めた状態で、潤んだ目を泳がせている。<br />
「………」<br />
折角だから直接言ってほしかったが、この調子だと奇をてらって足の裏とか言い<br />
かねない。<br />
「ここか?」<br />
業を煮やした俺は、古泉の顔を引き寄せてそっと唇を重ねる。<br />
そして、ゆっくりと重ねていた唇を離すと、奴は恥ずかしそうに更に頬を染め、<br />
今にも消え入りそうな声でつぶやく。<br />
「……はい」</p>
<p>本当に、ただ唇を重ねただけのキスだけど、今の俺たちにはこれで十分だった。</p>
<p>俺と古泉は海の家に居た。<br />
無論、海で泳ぐためだが、古泉は着替え終えた後――と言っても、お互い事前に海パンを着て来たから服を脱いだ後、と言ったほうが正しいのかもしれないが――日焼け止めクリームを塗っている。<br />
「……女じゃねーんだから、少しぐらい日焼けしていいんじゃねーの?」<br />
「日焼けは皮膚ガンの元なのですよ。健康第一ですからね」<br />
言うことは最もかもしれないが、若い身空でガン予防とか爺臭く感じてしまうし、何より俺はこの土方焼けを消すほうが先決だった。<br />
「手が空いているのなら、背中を塗って頂けませんか?」<br />
「ったく、しゃーねーな」<br />
断ったところでこの部屋を出るのが遅くなるだけだと判断し、奴から日焼け止めクリームを受け取る。<br />
「あーあ、何で野郎の背中を塗ってるんだか」<br />
俺はこれ見よがしに文句を言いながら日焼け止めクリームを塗りたくるが、<br />
「どうせなら朝比奈さんの背中に塗りたかったぜ」<br />
古泉は俺のそんな戯れ言も意に介さないようで、<br />
「それは奇遇ですね。僕も出来たら朝比奈さんに塗ってもらいたかったですよ」<br />
口元を手で押さえながら笑っている。<br />
本当にああ言えばこう言う奴だ。<br />
「塗り終えたぞ」<br />
塗り終えた俺は、古泉に日焼け止めクリームを返す。<br />
「ああ、すみませんでした」<br />
古泉はそれを受け取るが、その際にふと奴の手首にある腕時計に目が移る。<br />
奴は俺の視線の行く先を察したのか、<br />
「メンテナンスから戻って来たのですよ。防水仕様ですから、海でも大丈夫です」<br />
片手を挙げて腕時計を見せた。<br />
毎度ながら厳つい時計だな――<br />
ふと思い立って腕時計に手を掛け、奴が驚いている隙に素早く腕時計を外し取る。<br />
「えっと……その腕時計はめてみます?」<br />
古泉は俺の意図が掴めないようでキョトンとした表情でいるが、<br />
「いや……」<br />
俺は奴の腕を取ると、腕時計焼けを舐め始めた。<br />
「何で腕時計焼けなんて舐めているんです?」<br />
「ここだけ日焼け止めクリーム塗ってないから」<br />
古泉の怪訝そうな問い掛けに、答えになっているようでなっていない返事をする。<br />
「そう…ですか」<br />
奴は声のトーンを落としてつぶやくと、そのまま黙りこくっていた。</p>
<p>それから少し時が経過しただろうか。<br />
「……いつまで舐めているんですか?」<br />
古泉は少し緊張した声で尋ねるが、俺はその声を無視して舐め続ける。<br />
「あの……ですね」<br />
奴の腕が徐々に熱を帯び、かすかに震えている。<br />
「……日焼け止めクリームを塗っていない場所は…他にもあると思うのですが」<br />
俺は腕時計焼けから顔を離すと、そっと見上げて奴の表情を伺う。<br />
「例えば?」<br />
「ええと……その……」<br />
古泉は頬染めながら言い淀む。<br />
「どこだ? 言ってみろ」<br />
「うっ……」<br />
そんなに口で言うのが恥ずかしいのだろうか。<br />
奴は尚も頬を染めた状態で、潤んだ目を泳がせている。<br />
「………」<br />
折角だから直接言ってほしかったが、この調子だと奇をてらって足の裏とか言いかねない。<br />
「ここか?」<br />
業を煮やした俺は、古泉の顔を引き寄せてそっと唇を重ねる。<br />
そして、ゆっくりと重ねていた唇を離すと、奴は恥ずかしそうに更に頬を染め、今にも消え入りそうな声でつぶやく。<br />
「……はい」</p>
<p>本当に、ただ唇を重ねただけのキスだけど、今の俺たちにはこれで十分だった。</p>