どうしよう。困った。僕は彼に気付かれないようにそっと腰を引く。
キョン君の温かな体温だとか、互いの風呂上りの良い匂いだとか、頬にかかる吐息だとかそういうものが僕の体を熱くする。幸せで、心からリラックスしていて、このまま眠りについてしまえたらいいのに僕の体はそれを裏切る。「機関」に長い事弄ばれた僕の体は既に自分で性のコントロールができなくなっていて、心ではどんなに嫌だと思っていてもささいな刺激で簡単に欲情する。気がついたら余計逆効果で、僕の性器はゆっくりと起き上がり始めてる。
冗談じゃない、こんな事を彼に知られたら。せっかくこうやって一緒に眠ってくれているというのに、きっと気味悪がられるに決まっている。彼はお風呂で僕の体を全部見ているから、僕がどんな目にあったのかだいたい解っているだろうけど、想像する事と実際を目に見ることはまるで違う。僕は誰でも構わず反応するような見境の無い体なのだと彼が知ったら。
「眠れないのか」飛び上がるほど驚いた。キョン君が目を開けて僕を至近距離でじっと見ている。いつもなら「顔が近い!」と怒るような距離なのにそんな様子も無い。「その、…すみません」「何で謝る」「いえ…」どうしよう。いや、彼は気がついていない筈だ。「ちょっと、トイレに行ってきます」それだけを言って僕は彼に下半身の変化を気付かれないように毛布から抜け出す。その時だった。「……!」彼が無言で僕の手首を捕まえた。「あの…!?」彼は僕の顔をじっと見て、それから天井の辺りを見てまた僕に視線を戻す。「別に隠さなくてもいいだろうが。恥ずかしい事じゃないだろ」
気付かれている…!出来る事ならこの世から消えてしまいたい。僕は尿意を刺激されて浣腸されてローターを体に挿入されて快楽を感じるような節操の無い、いやらしい人間で彼はそんな僕にすら優しくしてくれる人なのに。知られたくない。彼や涼宮さんや朝比奈さんや長門さんに軽蔑されたら僕は。彼は溜息を付いて、呆れたような顔をして僕を見ている。どうしよう、どうしよう、どうしよう。ごめんなさい。僕はあなた達の好意に値する人間じゃないんです。本当はそんな価値も無い。逃げ出したいのに、けれどキョン君はしっかりと僕の手首を捕らえているから僕はどうすることもできない。「こっち来い」その手をぐっと引かれる。一体何を!?再び彼に片手で抱き寄せられる。もう片方の手は僕の熱くなった股間に触れていた。「…っ!」ごめんなさい、すみません、そんなつもりじじゃないんです、すみません!僕に触っちゃだめです、あなたまで汚れる…!「おい、落ち着け」彼から逃げようと暴れる僕をキョン君は必死で宥めるように両腕で抱きしめる。僕は自分が恥ずかしくて情けなくて、彼に顔向けが出来ない。「いいから落ち着け!隣に聞こえるだろうが」小声で鋭くそう言われてハッと気がついて、僕は慌てて声を飲み込む。暗闇の中奇妙な沈黙が生まれて僕は体を硬くする。彼がためいきをついてぽつりと言った。「…単なる生理現象だろ。誰でもある事だ」でも。「俺達の年代じゃしょうがないだろ。俺だって結構しょうもない事でタッて困った事くらい何度でもあるぞ。お互いさまだ」彼がもう1度そっと僕の足の間に触れる。こうやって僕は何度も顔も名前も知らない男達に弄られて嬲られて、その度嫌悪に吐きそうになって、でも体は浅ましく射精して。でもそれが彼の手だというだけで少しも嫌だとは思わなかった。「もしもお前が嫌じゃなかったら、…してやってもいい。オプションだ」嫌な訳が無い。彼に触ってもらえたら消毒になるように思えるくらいだ。「嫌じゃないです」やっとの事でそう答えると、彼の手がパジャマの上から僕の股間を優しく撫でる。それからパジャマの中から下着の中へ手を入れて、直接僕の性器を握る。その手つきはとても慎重で優しくて、まるで大事なものを撫で摩るようで、僕の体はどんどん熱くなる。「……っふ、く…」指で作った輪で僕を包んでそれを上下させる。カリの部分に引っ掛けるようにされて思わず腰が揺れた。「痛くないか?」声を出すと変な喘ぎが出そうで恥ずかしくて首を横に振る。気持いい。幸せで溶けそうだ。先端を指の腹で擦られるとぬるっと滑る感触。「ぁは、…はっ…!」呼吸が荒くなって、我慢できずに彼にしがみつく。
「ああ、くそ!」「…え?」突然彼が悪態を付くから快感の中で彼の顔を見る。彼の顔も真っ赤だった。一体どうした事か。「古泉、ギブアンドテイクだ」「…は?」彼が僕の手を取る。導かれたのは彼の股間。そこは僕に負けじと熱くなっていてる。そんなまさか。呆然と彼の顔を見ると彼は決まり悪そうに僕を睨んでる。「お前がその無駄に整ったツラで色っぽく喘ぐからだ。責任取れ」何て事だろう。このちょっと人には言えないような事態に彼までが僕につられて欲情している。でもまるで共犯者みたいで、嬉しい。「はい、…喜んで」小さく笑って僕も彼のパジャマの中へ手を進め、下着の中に手を入れる。彼の性器もすっかり硬くなっていて、僕はそれに思いつく限りの愛撫をする。どんどん硬く多きくなるのが嬉しくて、いつも見ず知らずの男達に強要されるそれとは比べ物にならない。自分の気持よい動きを相手にすれば、その動きはそのまま自分に返される。彼が僕と同じように気持良さそうにしているのが嬉しい。多分純粋な刺激が感触がどうとかより、気持の問題で秘密の共有とか連帯感とか彼の優しさとかそういうものがもたらす高揚感に煽られて僕はいくらも持たなくて、それは彼も同じみたいだった。「…っ、ぁ、すみません…も、う…」「俺も、も、ヤバイ」先端を強く擦られて、僕が先に彼の手の中に射精し、そのすぐ後に彼も僕の手の中に射精した。彼が腕を伸ばしてティッシュを数枚僕に渡してくれて、お互いの手を拭き取り、顔を見合わせてお互いに小さく苦笑いする。もう1度抱きしめられて、彼が小さく囁いた。「これでおあいこだ。…誰にも言えない秘密が出来た」「…え」「ハルヒにいじめられたとか告げ口するなよ」「しませんよ。…こんなに良くして頂いたのに」「……っ」良くとかゆーな、と彼が視線を彷徨わせる。ああ、何て優しい人なのか。「今度は眠れそうか」「はい、とてもよく眠れそうです」「ならいい」おやすみ、と彼が僕の目尻に唇を押し当てるから、僕はお返しにおやすみなさいと囁いて彼の頬にキスをして僕は幸せな眠りに落ちた。
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