その仕事を持ってきたのはえらく身なりのいい、政治家の秘書でも通用しそうな男だった。
俺は表向きはAV男優をやっているがそっちは表向きだ。AVの男優なんてのは女優の10分の1の収入しか無い。それよりも時々単発で入るヤバいショーでの仕事がメイン。自慢じゃないが俺は女を泣かせるテクには自信がある。AV男優やってた頃にちょっとした依頼を受けた所、えらくウケて、芋づる式にそういう仕事が入るようになった。当然ヤバい仕事も多い。秘密厳守は当たり前だ。客はちょっとおおっぴらには名前を言えないような連中だったり、さんざん啼かせた相手が一ヵ月後に華々しく芸能界デビューなんて話も珍しくない。
だがこんな依頼人は初めてだ。大抵は明らかに暴力団関係者だとか芸能界崩れの連中だとかそんなのばっかり相手にしているからな。しかも提示された金額が破格だ。ちょっと恐ろしくなった。まさか仕事が終わった後に始末されるんじゃないだろうななんて不安が頭をよぎって断ろうかと思った。しかし相手があまりに丁寧で熱心で、俺は結局依頼を受けてしまった。半分は欲、それからもう半分は好奇心で。
当日、迎えの車に乗ってきたのは同じ依頼人で、「申し訳ありませんが」と前置きして俺に目隠しをした。よくあるパターンだ。会場の場所を知られないようにって事だろう。目隠しは建物の中に入っても付けられたままだったから、よくはわからんがとにかくデカくて豪華な屋敷な事は間違いない。そして、男優は俺の他にももう1人いた。案内されたのはちょっとしたクラッシックのミニコンサートでも開けそうなご立派なホール。ステージの上には眩しいくらいの光が当てられていて、その分客席は真っ暗で観客の顔どころかどれくらいの見物人がいるのかもわからない。多分TVで見るようなヤツやデカイ会社のエライさんがいるのは間違いないだろうな。気が重い。理由は簡単だ。
ステージの上のベットに手足を繋がれているのが年端も行かない少年だったからだ。
俺は女専門なんだがな、と言ったのだが依頼人は真顔で「挿入の必要はありません。とにかく快感を与えれば良いので」と押し切られた。ショーのネタになるくらいのタマなのかと半信半疑だった。まさか観客全部が同性愛者って事は無いだろうな。けれどそれならば俺みたいなノンケではなく、本当のゲイのヤツらに依頼が行く筈だ。
しかしいざステージに上がってみて、俺は初めて依頼の意味を納得した。確かにこりゃ下手な女よりよっぽどいい。
シーツに転がされてたのは至ってノーマルの俺ですらちょっとグッとくるような、えっらくキレイな少年だった。
元々色素が薄いのだろう髪はライトに照らされて殆んど茶に近い。それがサラサラとシーツに散らばってるのが実に絵になっている。顔立ちは完璧な女顔で、一瞬美少女と見紛う。上品でいかにも頭も良さそうで、どう見ても良家のお坊ちゃんだ。おいおい、こんなのどっからさらってきたんだよ。この商売で飽きるほど見た、芸能界の垢に塗れたガキどもとは明らかに人種が違う。こんな所には似つかわしくない。逆にそういうのを汚すってのがたまらない見世物になるんだろう。茶の瞳が潤んで俺達を睨みつけているのが変に色っぽい。着ているのは大きめのシャツが1枚きりで、そこから伸びる足は白く長くていい形をしている。女たちが歯噛みして羨ましがるだろうシミ1つ無いキメ細かい白い肌が、今はうっすらと上気していてまさにピンク色で実に美味そうだ。しかし足だけでも何箇所か痣や怪我の跡があるのが気になった。勿体無いな。長年こういう裏稼業をやってる俺のカンだが、これは暴行とかそういうので出来たものじゃないような感じがする。依頼人は「彼は貴重な存在です。商品ではありますが、同時に財産でもあります。丁寧に扱って下さい」と言っていたがこりゃどういう事だ?
まぁいい。余計な詮索は無用だ。痛めつけろと言われるよりはヒィヒィ善がらせろと言われるほうがよっぽど気が楽だしな。それに男に興味は無いが、これなら悪くない。いや悪くないどころかノッてきた。それはもう1人の男も同じらしかった。
狂乱の宴の始まりだ。
少年は見かけに寄らず、なかなか負けん気が強いようだった。俺達が近寄り、囲んで見下ろすとそれでもきつい目で睨んでくる。「そう睨むなよ。心配するな。天国に連れてってやるから」そう言ってみると顔を逸らされた。そりゃそうだろうな。唇を噛み締めてるから、傷にならなきゃいいなと思った。さっさと喘がせて口を開きっぱなしにさせりゃいいだけの話だ。勿論観客の事も考えてちょっとは焦らしたりショーアップも大事だがね。
さて、まずは軽いお触りからいこうか。俺達は客の視線を遮らないように少年を取り囲んでまずはシャツの上から身体を触る。耳や首、胸に脇。指と掌と爪を使ってちょっとでも反応があればそこを更にしつこく攻める。女なら、身体のどこでもそれなりに感じるし、カンジさせる自信もあるが、男は個人差がある筈だ。さてこのガキはどうかな。あんまり不感症じゃ白けるんだがな。だがそれは無用な心配だった。4本の手で身体をまさぐられる少年は初めは必死で唇を噛んでいたものの、3分と持たずに息を荒げはじめたのだ。
「…っ、あ…」それまで一言も声を出さなかった少年が初めて声を出した。声変わりして間もない感じの甘いテノールだ。布の上からでも乳首が立ってるのがはっきりわかる。もう1人の男が開かされた足の間にいて、素足を撫で回していて、足の間からは低いモーター音。
少年は初めからローターを仕込まれているらしかった。依頼人はまるで自社の製品の説明でもするみたいに淡々と「まだアナルは調教中なのです。大事な少年なので無理は禁物です。とにかく快楽を与えて下さい。出来れば自分から強請るくらいにしていただきたい。しかしくれぐれも挿入はしないで下さい」そんな事を言っていた。初物は大物に高く売りつけるんだろうな。こういう所に連れてこられる女はクスリを与えられている場合も多いんだが、そんな事も無かった。せいぜいが酒か軽い興奮剤くらいだろう。手足の拘束具も肌を傷つけないように内側にラバーを張ったものだ。余程大事な商品と見える。
股間は既にテントが張られ始めていた。そろそろ本番と行こうか。俺達はゆっくりとシャツのボタンを外し始めた。
客の誰もがこの少年に注目している中、白い胸元が曝け出される。予想通りのベビーピンクのカワイイ乳首。女の柔らかい肌とはまるで違う、硬いのに皮膚は薄くてなめらかな手触り。女の裸なんぞ見慣れている俺でも妙に興奮した。だがまだ全部は脱がせない。肝心の場所にだけは布をまとわりつかせたままで俺達は素肌に本格的な愛撫を始める。
「く、……ああ、ん」乳首を舐めて舌で転がしてやると女と大して変わらない反応だし、首も弱いらしくて舐めたり引っ掻いたりされると腰を浮かせてる。しかも足も感じるらしく、もう1人のヤツに太股の内側を舐められたり足の指をしゃぶられたりして全身をびくびく震わせている。すっかり勃起しているんだろう、腰の辺りに残ったシャツはすっかり盛り上がっていて頂上にはシミが出来ている。「ひぃ、あぁ、あー、あっあっ」涙を浮かべた瞳と目が合う。途方にくれたような顔で首を振る。たまらない。おいおい、今からこんなに感じてたら持たないぞ。本番はこれからだ。しかし俄然楽しくなってきた。こうなりゃマジでヨがり狂わせてやろう。
客も興奮している。空気に熱が篭って異様なムードだ。ショーがノッてる証拠だ。皆でラリッてるようなもんだなこりゃ。いよいよシャツの残ったボタンを外す。客が生唾を飲む音が聞こえた気がした。汗とカウパーに濡れたシャツを放り投げる。少年が恥ずかしさに目をぎゅっと閉じた。初々しくてたまらんね。足の間の陰茎は腹に付きそうに勃起してる。大きさも形も申し分の無いバランスで、ちゃんと剥けているがまだ濃いピンク色だ。先端を指の腹でくりくりと撫で回し、耳をじっとり舐めながら小声で囁いてやる。「目を閉じたって無駄だ。皆がお前の体を見てる。こんなキレイな体なんだからもっと見せてやれよ」「っ、はあ…」こぷっと新しいカウパーが滲んだのを指先に感じた。
おいおい、こいつ才能があるぞ。
こういうのも一種の才能なのだ。まず感度が良いのは第一条件だが他人に見られて萎縮するタイプもいるし、気が散って没頭できないタイプもいる。ところがこいつは見られて恥ずかしさに感じている。おまけにこの容姿だ。こんな逸材なかなか居ないぞ。どっから持ってきたんだろうな、こんな上玉。おっと、詮索は無用だった。せいぜいお互い楽しもうじゃないか。依頼は失神するまでイカせまくること、だ。
「…あふ、ぅ…」全身にローションを垂らす。トロトロの薄いピンクの液体が上気した肌に落ちてシーツにこぼれていくのはそれだけでいやらしい。少年はその感触だけで感じているんだろう、はぁはぁと喘いでいる。2本分のローションでぐちゃぐちゃになった体をさらに掌で撫で回してローションを全身に行き渡らせる。全身くまなくぬるぬるにしたら、2人がかりで性感マッサージだ。「ひぁん!あぁ…!…や、やぁ、だめ、だめ、あ!あ!…ああああああ!」いくらも持たなかった。少年は今日最初の絶頂へ達した。足だとかヘソを攻めまくっていた男が絶妙のタイミングで陰茎を軽く押し付けたから、精液が少年自身のの顔や首に掛かってセルフ顔射になっていて、凄絶にエロい。「あ、…は、はぁ、ぅ、ひくっ、…んぁ」少年は顔を精液が伝うのも忘れ呆然って表情で、しかしローターがアナルに埋まっているせいだろう、断続的に体を震わせている。こりゃ下手な女より余程美味そうだ。俺は男に突っ込む趣味なんぞ全く無いが、断言しよう。この少年ならイケる。むしろ試してみたいくらいだ。挿入は無しという条件が今は逆に残念に感じる。
なるほど。ゲイの男を使えば禁止していても勢いで入れちまうハプニングが起きないとも限らないからノンケの男を用意した訳だな。だがあんまり意味が無かったかもしれんぞ。俺ももう1人の男も明らかに仕事以上に興奮している。このガキは相手の性嗜好を問わずたらしこむ天性の色気がある。初物でこれとは末恐ろしいな。
余韻から醒め切っていない体に構わず更に刺激を与え続ける。少年は不特定多数の人間に見られて射精するという異常な経験に明らかに興奮していた。さきよりも更に感度が上がっている。どこに触ってもひぃひぃと上ずった声を上げる。仕事を忘れそうだ。俺達はわざと陰茎には触らずに、全身の愛撫とローターの刺激だけで射精へ持っていく。「いやぁっ、…あー!あぁん、んあ、やぁ、はふぅ…!」少年の高い甘い喘ぎがホールの中に響き渡る。乳首に爪を引っ掛けながら薄い胸を揉み、もう1人の男がつま先から足の付け根まで一気に撫で上げると少年は再びあっけなく精液を撒き散らす。「あぁ、あぁ!…だ、だめぇ…また、…っ、や、いや、ぁ、だめ、こんな、っ、あああああ!」少年は硬直した体をくたりとさせてはぁはぁと息を付いている。どれ、もうちょっとサービスと行こうか。もう1人の男と協力し合って少年の上半身を起す。客席に向けて足を開かせる。少年は恥ずかしさに抵抗らしきものを見せたが快感で溶けた体でのそれには何の意味も無くて、逆に悶えて誘ってるようにしか見えない。「もっと、全部見せてやれ」両足首を大きく開いて腰を上げさせて御開帳だ。客席からはぐちゃぐちゃの性器とその奥のローターを飲み込んでいるアナルも丸見えだろう。「や、やめ…み、見ないで…や、やぁ…あっ、だめ、だめぇっ…ん、ぁ」見ないでと言いながら一旦射精して萎えた性器がまた勃起してきてるのはどういう事だ?まだ自覚は無いんだろうがこいつ相当のスキモノだぞ。小さな尻を揉んでやるとローターが響いて感じるらしく、背中をしならせて女みたいに喘いでいる。「ぁあ…っ!ああーっ、あふぅ、んあっ、そ、それ、やめ、てぇ…あんっ、あああんっ」こりゃすごいな。アナルだけでこんなに感じてるのかよ。もしかしたら体を起したから丁度上手い具合にローターが前立腺に当たってるのかもしれんな。じゃあもっとヨがらせてやる。「ひぃーっ、いや、いやああ、だめ、おかしくなるっ、ぃ、あああ、…それ、やめ、っく、ああああああ!」少年はビクビクと全身を痙攣させて射精しないでイきやがった。ドライオーガズムってやつだ。女がイクのと似ていて、射精で得る絶頂感より快感が長くて強烈らしい。
その後はもう、少年は言われるがままに声を上げまくって自分から腰を振った。何回イッたか解らない。ってよりはイキっぱなしになってるみたいでドライも入れたら両手じゃ数え切れなのいは確実だ。しまいには精液も薄まり量も出なくなってきて、視線もうつろだ。「もう、ら、め…おね…が、…た、すけて…どうにか、して…あぅ、…も、しん、じゃう」おそらく何度イッても体の中にローターが震えているせいで熱が篭ってくすぶっているんだろう。残念ながら今日の俺達はそのオモチャを取る事どころかそこに触る事も許されていないのだ。悪いな。本当に残念だ。出来ればちゃんと本番もお願いしてみたかった。いかんな。俺はノンケだった筈なのに完全にこのガキにイカれてるらしい。
なぁ、おい。今楽にしてやるから、せめて名前を教えてくれないか?ダメモトって気分で髪を撫でてそっと囁いたが、少年は半分意識がトンでるらしくて涙や唾液で顔をぐちゃぐちゃにしながらふぅふぅ喘ぐばかりだ。さすがにもう可哀想になってきて、ローターを柔らかい肉ごしに奥に押し込めるようにその白い尻を揉む。「あっ、ひっ、ひいいいい…!」少年は性器から薄まった精液をとろとろと零し、ホールに響き渡る高い嬌声を上げてとうとう失神した。
「…いつ、き」という呟きを俺の耳に残して。
それから2年経った。その後お声が掛かる事がなかったからあのガキがどうなったかは解らない。多分本格的な調教やショーにはゲイの男達が呼ばれるんだろう。ノーマルの女専門の俺はお呼びじゃない。ちょっと、いや、かなり残念だな。しかし日々に追われてその事を忘れかけてたから再び見覚えのある依頼人が目の前に現れた時は心の中で握りこぶしを作ったくらいだった。もう1度あの少年と会えるならギャラも要らないくらいだ。勿論そんな事を言えば足元を見られるから、せいぜい吹っ掛けて貰う物は貰う約束を取り付けたが。
少年は前と似たようなシュチエーションだというのに俺の顔を見るとにっこりと笑った。2年の月日は少年の姿を大きく様変わりさせていた。身長は伸びて、俺と殆んど変わりない。どこかの高校のものであろう制服を着ていて、禁欲的な色気を放っている。幼かった女顔は甘いマスクに育ってて、これは同級生どころか年上の女だって放っておかないだろう。さぞモテるだろうな。
「名前、いつきで良かったのか?」そう聞くと彼は髪をサラリと揺らして小さく頷いて微笑んだ。ベットに自分から横たわり、俺に手を伸ばす。
「天国へ連れて行って下さい」
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