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「──トイレで出すレモンティーがあるらしい」
長門さんの呟きに、僕は思わず自分の耳を疑いました。……トイレで、ですか?
「どんな物か飲んでみたい」
レモンティーなら幾らでも朝比奈さんが用意して下さると思いますが。
「どうやらそれとは違う物。この場合トイレで出すと言う点に意味があると推測される」
トイレで……ですか。常識的に考えて飲み物を出すような場所ではありませんよね。
一体どのようなレモンティーなのでしょうか。
「古泉一樹、あなたも飲んでみたい?」
ええ、まぁそうですね。良くは解りませんが。
しかしトイレで飲食をするのは、どうかとも思いますけどね。
「それには同意する」
ですよね。良かったです。そこで否定されたらどうしようかと思っていました。
「でも気になる」
そうですねぇ……誰かに尋ねてみましょうか。

あ、丁度良い所に朝比奈さんがいらっしゃいました。
「こんにちはぁ。今日はまだお二人なんですね」
ええ、そうですね。時に朝比奈さん。お聞きしたい事があるのですが。
「はい、何ですかぁ?」
ええと、少々お恥ずかしいのですが、トイレで出されるレモンティーってご存知ですか?
「え……」
長門さんと今その話をしていまして。一体どのような物のことなのかと。
「え、え、……長門さんと、古泉くんが、ですか……?」
「ええ、そうです」
「飲んでみたいと話していた」
「の、飲むんですかぁ……」
朝比奈さんの顔が引き攣ってるように見えます。そんなに問題のある紅茶なのでしょうか。
「そうですかぁ……二人で出し合って飲むんですね……。そんな仲になってたんですね……」
朝比奈さん?どうされました?顔色が優れないようですが……。
「ふぇ、あ、だ、大丈夫ですよぉ!えっと、あの……。
……あ、愛があれば、きっと美味しいんじゃないでしょうかっ」
愛情、ですか?まぁ確かに愛有る料理は美味しいでしょうけれども。
でも今は料理では無く紅茶の話でして。
お茶に詳しい貴方ならご存知かもと……あ、あれ、朝比奈さん。どちらへ。
……虚ろな表情のまま出て行かれてしまいました。
あの様子だとご存知だったのでしょうね。そんなに凄い物なのでしょうか。
「知りたかった」
僕も同感ですよ長門さん。

「検索する」
余程知りたかったのでしょうか。長門さんはそう呟いてPCの前に座りました。
キーボードを打つ様子もなく、画面を見ているだけですが……まぁ調べ方は人それぞれと言う事で。
ヒューマノイドインターフェイス的な調べ方をしたのか、ほんの数秒で長門さんは目線を上げました。
「解りましたか?」
ほんの僅かに長門さんが頷いた。流石としか言えません。
して、それはどのような紅茶だったのかと問うてみれば。
「古泉一樹」
改めて名前を呼ばれ。一体何があったのか、長門さんの目は意外に真剣でした。
「あなたはレモンティーを本当に飲んでみたい?」
……これはどういう意味なのでしょうか。もしや体に悪い物なんでしょうか。
「長門さんは……どうなのですか?」
まぁ長門さんなら例え毒物を服しても、大丈夫そうではありますが……おっと、これは内緒ですよ。
「あなたの出す物なら……見てみたい。飲みたいかは、その時にならないと解らない」
それは僕が紅茶をお入れすると言う事で良いのですか?
それくらいならお安い御用ですよ。
「そう」
長門さんがすくっと立ち上がり、朝比奈さんの作業スペースから
空のコップを手に取って僕の方へと向かってきます。
カップだけでは紅茶は入れられませんよ?
「平気。あなたは出せる」
残念ながら、僕は空間限定の超能力者ですから。ご期待には添えられないかと思われます。
「出せるはず」
……すみません。仰っている意味が解らなくて。ティーポットも無しに紅茶は無理ですよ?
「大丈夫。あなたのそこから出る」
そう言って長門さんの白く小さな手がある一箇所を指差しました。
指先を目で追えば。そこは……。

長門さんが指差したのは、僕の下半身でした。
……どういう意味でしょうか……。
「つまり、そこから出る物を紅茶に見立てた表現」
下半身から出る物……。そんなのは二種類の液体位ですよ。
なんて品の無い冗談を言っている場合では無くて。
「その片方」
どうやら随分と悪趣味な話だったようです。
しかしながら、そこまで紅茶に似ているとも思えませんが……。
「…………」
長門さんは考え込んでいるみたいです。
そういえば、嘗てそれを飲む怪しげな民間療法が流行ったらしいですが。
でも、あれらは自分の物を飲むのであり、他人のでは無いとも聞いた覚えがあります。
それにしても、あれだけの会話で、あっさりと話の意図を把握した朝比奈さんには驚きますね。
同意を求めるように長門さんに話しかければ、彼女は極僅かながらに首を縦に振ってくれました。
さぁ、これでこの話は切り上げましょうか。
幾らなんでも趣味が悪すぎますし。

しかし長門さんの中ではまだ続いていたようでした。
「情報の伝達に齟齬が発生した」
暫しの間を置いて、ぽつりと長門さんが呟きました。何の事でしょうか。
「この場合のレモンティー。視覚情報からすると確かに似ては居ない。
つまりは紅茶そのものでは無く、レモンと言う所が重要。
恐らくはレモンの絞り汁に見立てたと考えられる」
……僕が似ていないと言った事について考えていた、のでしょうか……。
何処までも生真面目に考える姿には敬意を覚えますが。
しかしそんな事まで考えなくても良いじゃないですか。
今後レモンティーを飲む時に、思い出してしまいそうで怖いですよ。

とりあえず謎は解けたと言う事で手を打ちませんか……。
懇願するように言えば、長門さんはゆっくりと首を左右に振りました。
……どうしてですか。
「あなたの出す物なら見てみたい。わたしはさっきそう言った」

それは頭をガツンを殴られたような衝撃でした。
待って下さい長門さん。それはもう話が違います。
レモンティーの謎は解けたじゃないですか。
それで終わりで良いじゃないですか。
「……」
カップ片手に無言で僕に近寄ってくる長門さん。
その顔はいつもと何も変わらずで。
無表情の迫力に押されて、僕は壁際へと追い詰められてしまいます。
先程朝比奈さんがいらしたように涼宮さんや彼が来てくれれば
この異様な空気も霧散してくれるのに。
やがて僕の背中に壁の固い感触が当たりました。この後はどう逃げるべきでしょうか。

そもそも、人に見せる物では無いですよね……止めましょうこんな事は。
僕は必死に真顔の長門さんを説得しようとするけれども
長門さんは何も言わずに僕の間近までやってきて。
彼女の白い手が僕の頬に伸ばされました。
「……興味がある」
優しく頬を撫でる手に、僕は言葉を失ってしまい。
そのまま体に沿って下がっていった手が
ズボンの上から僕の中心部を撫で上げて。
僕は小さく息を呑む。
興味って……。こんな事……おかしいですよ長門さん。
強張った僕の顔を見上げて、長門さんが微かに目を細めたように思えました。
「……いつもと違うあなたが見てみたくなった」
長門さんの外見にそぐわぬ力強さに、僕の体は簡単に壁に押し付けられてしまう。
無茶苦茶です長門さん。
ベルトを外され、ファスナーを下げられる音に
僕は怖くなってきつく目を閉じました。