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予想だにしなかった内通者の存在により、僕の艦隊は壊滅寸前まで追い込まれた。
ただしそれは装備面での話だ。隊員に死者はほとんどいなかったらしい。
緊急事態を告げるブザー音がけたたましく鳴り響くコックピットで、
僕は後頭部に銃を突きつけられていた。
「古泉幕僚総長、我が軍はあなたの能力と知識を高く評価しています。
あなたが素直に投降すれば、隊員の安全は保証しましょう」
淡々とした声で告げられる。
今はそうしたとしても、どうせ後からこちらを皆殺しにすることは変わらないくせに。
思わず嘲笑を漏らしそうになって息を呑む。
両手を上げて無言のうちに降伏の意志を示すと、そのまま両手首を後ろに拘束される。
「あなたの理解力の高さに感謝しますよ」
心にもないことを言ってのける敵に内心唾を吐きながら、僕は促されるままに自艦を後にした。

敵艦に連行されると、牢獄へと入れられた。
牢獄とは言っても牢屋ではない。ごく普通の、隊員が生活する部屋とほとんど変わらない。
監視カメラがついていることと、扉を無理に開けようものなら、瞬時にレーザーが照射され
命を奪われること以外は。
驚いたことに、僕は両手首の拘束も外され、自由な姿で部屋に入れられた。
自殺する気がないことを見透かされているのか、そしてあざ笑われているのか。
なんにせよ捕虜としては破格の待遇である。
だがたいして時間も経たないうちに、僕は別の部屋へと移動させられた。
今度の部屋は真っ暗で、家具も一切ないようだった。
発狂寸前まで追い詰めて、服従させるつもりだろうか。
する事もないので、部屋の隅に腰を下ろす。
こんなことになっても、僕の心は不思議と平静を保っていた。
今頃団の皆はどうしているだろう。怒り狂っているであろう団長……もとい閣下を
うまくコントロールしていてくれれば良いのだが。
そう、僕は皆が助けに来てくれると信じているのだ。
人とは、得てして希望が打ち砕かれた時のためにあえて最悪の展開を考えてしまうものだが、
彼らがいてくれる限り僕は希望を持つことができる。
根拠もなくそう思えるのだ。

だから……真っ暗だった部屋がいつの間にか薄暗い程度の明るさになっていて、
僕の真向かいの空間にグロテスクとしか形容できない機械の触手の群が存在していることに
気づいた時も、僕は希望を捨てたりはしなかった。
あまり観察したくもないが、薄闇の中目を凝らせば、今いる部屋の約1/3のスペースは
機械の触手がうねうねと蠢いていた。
僕との距離は約数m。
直径5cm程の太いものから糸のように細いものまで、その全てが
機械でありながらどこか有機的な動きをしている。
まったく敵軍も悪趣味な拷問を思い付いたものだ。しかもこれを男にしかけるなんて。
普段、団の皆に見せる笑顔はとうに消えているだろう。
今の僕の、不快感と嫌悪感を露わにした表情を見たら、皆は驚くかもしれない。
「……っ!!」

天井を伝っていつの間にか背後に回り込んでいた触手が、両腕に絡みつく。
反射的に力を込めて振りほどこうとしたが、蛇のように両腕に這わされた触手は
まるで吸盤のように腕に吸い付いて離れなかった。
「やめ……ッ、やめなさい! こんなことをして、僕をどうするつもりですか!」
無様だと思われようが、抵抗せずにはいられない。
両腕を吊られた万歳の格好で、ぎりぎり爪先立ちが出来ない高さまで体を持ち上げられる。
足下には腕を吊っているのと似たような触手がいくつも蠢いていた。
それを必死に蹴り飛ばしながら叫ぶ。
激しく体を動かしていたせいで、帽子が床に落ちていくのが見えた。
『――ごきげんよう、古泉幕僚総長』
唐突に、かなり加工が加えられた声が響いた。
声、というよりは電子音に近い。
『我が艦での待遇はいかがですか?』
最悪に決まっている、そう叫びかけて唇を噛む。
ここで感情的になればそれこそ敵の思うつぼだろう。
足下の触手との攻防に必死になりながら、僕はどこからか鳴り響く電子音を聞いていた。
『こちらとしては貴方に手荒な処遇はしたくないのですよ。先にもお話した通り、
我々は貴方の能力、知識を高く評価しているのです。
貴方にはぜひ我々側について頂きたい。
しかし貴方はそれを良しとはしないでしょう。
だから我々は何としても貴方を籠絡する必要がある。
そこはそのための部屋なのです』
「っ、あ!」
そう電子音が言い終えたのとほぼ同じタイミングで、片足を絡め取られてしまった。
しゅるしゅると太ももまではい上ってきた触手の先端が、あろうことか僕の股間を
ズボン越しに上下になぞり始めたのだ。
しかもその触手の先端はまるで人の指のような形をしていて、
遠慮なしに刺激を与えてくるのだから堪らない。
「ぅ、………っ」
ぎゅっと目を瞑り、歯を食いしばる。
もう両手両足は絡め取られてしまった。
武器も持ち合わせていない。
僕にできる抵抗は、もうそれ位しか残されていなかったのだ。
『苦痛に耐える訓練はしていても、快楽に耐える訓練はしていないでしょう?
肉体や精神に損害を与えずに、服従させる。
なんとも合理的だとは思いませんか』
心なしか楽しそうな様子を漂わせた声は、それきり途切れた。

「ふぅ………っく、ぅ…」
せめてもの抵抗にと腰を捩っても何の意味もなかった。
股間をなでさする触手の動きは一向に止まる様子を見せない。
その上、信じられないことに僕はこの状況で勃起しそうにすらなっていた。
厳しい訓練と実戦をこなす日々の中で、性的刺激に触れることなど皆無に等しい。
くわえて実戦では、ある意味で性的興奮に似たような興奮状態におかれるため、
それで「ごまかして」いたのだ。
それがここに来てこの直接的な刺激。
僕は必死で快楽にあらがっていた。
その間も触手は僕の体を這い回る。
まだ服の上からの刺激とは言え、普段他人には触れられない腕の内側や内股を、
触手の先端でなぞられると肌が粟立つ。
かと思えば上着の下に潜り込んだ触手は、アンダーの上からわき腹をしつこくさすり、
わきの下をするりと撫でていったりする。
素肌には触れずに刺激を与えてくる触手の動きが、「まだ始まったばかりだ」と言わんばかりで
逆に不安をあおった。
全身を触手に絡め取られている僕の姿は、客観的に見ればさぞ卑猥なものだろう。
いや、むしろ嘲笑の的になるだろうか。
勃起しそうになる体を必死に抑えていると、不意にズボンの中に細めの触手が入り込んできた。
ひやりとした感触が脚に触れる。
それはごくゆっくりとした動きで僕の脚を這い上ってゆく。
すると、驚くことにその先端が肛門をつついたのである。
「……!! や、何を…!」
反射的に体を弓なりに反らして触手から逃れようとするが、この体勢では全くの無駄だ。
脚を拘束していた触手も左右に動き、僕は空中で両足を大きく開かされてしまう。
「や、嫌だっ、止めなさいっ」
誰もいない部屋に響く制止の声は、さぞ滑稽だったことだろう。
それでもそんな場所に触れられれば黙ってはいられなかった。
固く閉ざしていた唇を開き、見栄も外聞も捨てて無様に抵抗する。
だが、それが相手の思惑だったのだ。
「ふぐっ!?」
開いた口に恐ろしいスピードで触手が入り込んできた。
蠢く触手の中でもかなり太いものだ。
僕はそんなものを突然くわえさせられた驚きに声を上げた。
同時に、肛門をつつくだけだった触手も、無理やり内部へと押し入ってきた。
幸いにもそちらの触手はさほど太くないらしく、違和感は少なかった。
しかしそれも一瞬のことに過ぎなかったのだ。
口の中にグイグイと侵入してくる触手の動きが一瞬停止する。
疑問に思う間もなく、次の瞬間には触手から排出された液体で咥内が満たされていた。
肛門に侵入してきた触手からも何かが放出されたらしく、えもいわれぬ不快感が広がる。
しかし――
「が、ぐぁ……っ!」
僕は突然のことに体がついて行けず、気管に液体が入り噎せてしまった。
苦しい。
触手は液体を排出してからも僕の口から出ていこうとはせず、鼻も他の触手につままれ
僕はその液体を飲み干す他なかった。
むせたせいで鼻にも液体が回り、苦しさに拍車を掛ける。
僕がその液体をようやく飲み込んだ頃には、涙と涎で顔はぐちゃぐちゃになっていた。
満足したかのように、顔から触手が離れてゆく。
「げほっ、が、はっ…」
触手らが、激しくせき込む僕を見下しているようにすら思えた。
しばらく咳を繰り返し、涙で霞んでいた視界が晴れてきたころ、僕は体の異変に気づいた。
体が火照るように熱い。
頭がぼうっとして、呼吸が荒くなっている。
まさか。
「――っ、ひあ、あああっ!?」
肛門に刺さりっぱなしだった触手が、心を読んだかのように動きを再開した。
ピンポイントでぐり、と体の内側を突かれて変な声が上がる。
(催淫剤か……)
先ほどの液体の正体だろう。
確かに肉体も精神もガチガチに緊張していては快楽も快楽として
受け止めにくい。つまり、今までの触手の動きは将にウォーミングアップだったのだ。
「あ、うぁ!?」
薬で敏感にしてから一気に突き崩す。全く合理的な手段だ。
後孔の触手を除けば、他の触手の動きは先ほどとはなんら変わっていない。
(なのにこんな声が出てしまうなんて――……)
情けなさに顔を俯ければ、完全に勃起した自分の性器が見えた。
「――様、失礼致します。件の捕虜について……」
「それなら私が直に手を下している。他の者には関わらせるな」
秘書の言葉を穏やかな口調で、しかしきっぱりと遮ったのはSOS団の敵艦隊総帥、その人であった。『や……止めなさいっ!』
問い掛けにはちらりとも反応せず、広々とした執務室で客人用のソファに腰を掛け、
宙に浮かぶ映像を見つめている。
スクリーンから焦ったような音声が響いた時だけ、彼は唇の端を歪ませた。
「かしこまりました」
扉のすぐそばに控えていた秘書も、まるでスクリーンの映像や音声を
認識していないかのような淡々とした返事をして、頭を下げて退室した。

『うぁ、あ、ああああっ!』


**********


先程の通信からして、おそらくこの様子は敵に全て見られているのだろう。
しかしそう思っても、古泉は声を抑えることが出来なかった。
最初は衣服の上を動き回っていた触手も、今では一変して古泉の素肌を蹂躙していた。
ズボンは脱がされ、上着はたくし上げられて胸がさらされている。
「あぅ、ん……っ」
何本もの触手が体に蛇のように絡みつき、脇腹や脚の付け根の敏感な肌を撫でさする。
そんな刺激ですら古泉は快感に声を上げ、思考を支配されていった。
不意に、すでに固く立ち上がった乳首に触手が伸びてきた。
その先端はコンセントに差し込むプラグのような形をしている。
「ひあっ!?」
その触手が、古泉の乳首を挟み上げた。
突然の……そして待望の刺激に、古泉の身体はびくんと跳ねる。
「ひっ!? う、あ、あああぁぁっ!?」
驚いたような色を含む声を上げる古泉。
乳首を挟み上げている触手から、微弱な電流が発されたのだ。
「や、やだ、痒い…痒いですっ」
「痛み」ではなく「痒み」のレベルで与えられる微弱な痛感に、古泉は身をよじった。
今すぐ乳首を激しく刺激したい。そう強く思っても両腕は拘束されている。
「あ……っ、はう……ん」
先まで身体を蹂躙していた他の触手も、ピタリと動きを止めている。
胸を前に突き出して乳首を他の触手に触れさせようとしても、機敏な動きで
触手は動き回り、古泉の欲望が叶えられることは無かった。

(乳首に……触って欲しい……)
ぐりぐりと押しつぶして欲しい。つまみ上げて先端を弄り回して欲しい。
時が経つにつれ、そんなあられもない卑猥な欲望が古泉の思考を埋め尽くしていく。
情けない、そんな気持ちもあったが、薬を投与され、かつ長時間の焦らしによって
古泉の意識は敵軍の思った通りの方向へと傾いていた。
乳首への刺激だけで古泉のペニスは既に完全に勃起し、
だらだらと先走りを垂らしている。
息遣いも荒くなり、自分の呼吸なのに不思議なほど耳につく、と古泉は思っていた。

(こんな浅ましいことを考えてしまうのは、薬のせいなんだ)

甘い誘惑が頭の中に響く。
―欲望のままに快楽を乞い、享受したい。
―これは自分の意志ではない。敵の策略なのだ。
そう自分に言い聞かせ、古泉は口を開いた。
「お願いです……乳首触って、ぐりぐりして下さい……」
姿の見えない、だが確実に自分の痴態を見ている相手に懇願する。
自分の口から出た声が驚くほど媚びる色を含んでいたのに、古泉の身体の熱は
更にあおられる。
ペニスの先から先走りがこぷりと滲んだのが分かった。
そして、古泉の声に応じるように触手が動きを再開した。
「あっ、ふあっ、ああっ、あ」
望み通り、触手が両の乳首をぐりぐりと押しつぶすように愛撫する。
古泉は半開きになった唇から涎を垂らしながら、待ち望んだ刺激に喜びの声を上げた。
一旦古泉が降伏してしまえば、後は触手が焦らすような動きを見せることはなかった。
敵軍に懇願したという言質が取れたからだろう。
「あぅ、あ、あ……ちくび……気持ちいいれすぅ……!」
固く立ち上がった乳首に、男性器の形を模した太い触手が押し付けられる。
敏感な先端を容赦なく弄り回され、前立腺を刺激され、古泉は我を忘れて腰を振った。
「ひああっ! きもち、いいよぉ……もっとおしりじゅぷじゅぷって、突いてくらさいい……!!」
犬のようにみっともなく舌をだし、あさましく懇願する。
まるで気を良くしたかのように触手たちはそれに答え、その動きを一層激しくした。
「あふ、あ、も……でちゃう、出ちゃいますっ……あ、ああああああああっ!!」
甲高い声を上げ、古泉は精液を迸らせた。

その後も機械触手は、古泉を犯しては静かになり、犯しては静かになりを規則的に繰り返した。
「あ、もう……無理れす……っ!ああっ」
どれくらい時間が経ったのだろうか、古泉のアナルは触手たちを容易に受け入れ、
あまつさえ物欲しそうにひくひくと痙攣さえしてみせるようになっていた。
今日も男性器を模した触手をずっぽりと飲み込んだアナルに、細めの触手が我先にと殺到する。
それがアナルの入り口を刺激して、古泉は身をくねらせた。
「や、だぁ……お尻、いじらないで……また気持ちよくなっちゃいます……」
粘性の液体にまみれたアナルは、触手が出入りするたびにじゅぽじゅぽと卑猥な音を立てる。
その音に耳からも犯される気がして、古泉は背筋を震わせる。
「あっ、あっ、あ、う……ひあああっ!!」
勿論その間も乳首やペニス、わき腹や足の指の間などには触手がいやらしく刺激を与えている。
全身で快楽を享受しながら、古泉は悲鳴にも聞える嬌声を上げる。
ふと、はあはあと荒い呼吸を繰り返す古泉をまるで労わるかのように、一本の触手が頬に擦り寄る。
「あ……」
快感でどろどろに溶けてしまった思考では、口を開いてそれを受け入れる以外の選択肢はなかった。
古泉は自ら大きく口を開き、それにしゃぶりつく。
――古泉が陥落した時に床に落とされた制帽は、精液がこびりついてぐちゃぐちゃに汚れて切っていた。

「--古泉! 無事か!?」
明かりも時計もない部屋に拘束され、すでに日付や時間の感覚はなくなっていた。
長い睡眠に落ちた回数が両手で数え切れなくなった頃、
……古泉の身体が触手を見るだけで性的な衝動を感じるようになった頃。
閉ざされていた扉がゆっくりと開き、懐かしい声と共に見知った姿が古泉の前に現れた。
「おい、古泉!!」
呼びかけにも反応せず、あられもない姿で床にへたり込む古泉を見て、SOS団帝国作戦参謀―
―キョンが焦燥の色を濃くする。
「……なぜ、あなたが……ここに……」
やっとのことで搾り出した声は掠れていた。いつ終わるとも知れない触手からの刺激に、嬌声を上げ続けた古泉ののどはすっかり嗄れていたのだ。
ぼろぼろになり、自身の精液で汚れてしまった軍服をまとう古泉を見つめ、キョンは眉間の皺を深くした。その顔には、やりきれないという感情がありありと浮かんでいる。
「……お前がここにいる間、情勢が一変したんだ。新たな勢力が現れやがった。だから俺達と……」
そこで台詞を切り、キョンは背後に立っていた「元」敵軍の兵士に視線を投げる。
「……こっちの軍は、一時休戦になったって訳だ」
――ああ、だから解放されたのか……
そう口に出したかどうかも古泉は覚えていなかった。
見知った友人に力強く抱きしめられ、安堵に身体の力が抜ける。
「あ、おい古泉―……」
睡魔という言葉では生ぬるいくらいの強烈な眠気が古泉を襲う。
呼びかけに答える間もなく、古泉は眠りに落ちていった。
最後に視界の端に映った触手は、それまでの日々が嘘のように微動だにしていなかった。

本艦に帰還した古泉は、23の尋問の後、しばらくの休養を言い渡された。
古泉が疲弊していたのは目に見えて明らかであったし、
それまでの信頼から敵に寝返ったこともないと判断されたからだ。
しかし帰還してからの古泉は、どこか上の空で何かを考え込んでいる様子が多かった。
にこにことしていて温和だった古泉とは、どこかなにかが違っている…
…そんな噂が、艦内にまことしやかに流れ始めた頃。
「なんだよ古泉、話があるって……」
しばらく自室にこもって姿を見せなかった古泉が、直通の通信を用いてキョンを呼び出した。
「すみません、いきなり呼び出してしまって」
自室の扉を開いて姿を見せた古泉は、髪の毛こそ少し伸びていたが、人当たりの良い笑顔を浮かべていた。
そのことに、キョンはほっと胸をなでおろす。
(最近流行ってる噂、やっぱり単なる噂だったんだな。普段どおりの古泉じゃねーか)
恐らく敵艦から帰還した直後の、精神的にも肉体的にも疲弊した古泉を見かけたいち兵士の感想に、
尾ひれ背びれがついて広まってしまったんだろう。
「どうしたんですか? 立ち話もなんですから、どうぞ」
「あ、ああ」
相変わらず嫌味なまでに整った立ち居振る舞いで中に入るよう促され、腹立たしいような、
それでいて少し嬉しいような気持ちを感じながらキョンは古泉の部屋に足を踏み入れた。
「……おい、電気点けろよ。真っ暗じゃねーか」
「ああ……すみません」
口先では謝りながらも古泉は電気を点けようとしない。意図が見えず首をかしげながらも、キョンは
電気のスイッチを手探りで探す。部屋の作り自体は同じだから、自室と同じ場所にスイッチがあるはずだ。
「あの」
壁を探ってスイッチを見つけ、まさにそれをオンにしようとした瞬間。
横からにゅっと伸びてきた古泉の手が、キョンの手首を握り締めた。
「……なんだよいきなり。離さんか」
「僕から提案があるんです」
「電気を点けてからじゃだめなのか」
「まぁそういわずに」
いくら暗闇に目が慣れたといっても、古泉の表情までは見えない。
声の調子では笑っているようだが、真意が見えない。
なにやら不穏な雰囲気を肌で感じながら、キョンは古泉に従うことにした。
「敵から……ああ、今は元敵ですか。敵軍から指摘されたんですよ」
「なにを」
「苦痛に耐える訓練はしていても、快楽に耐える訓練はしていないだろう、と」
「はぁ!?」
突拍子もない、としか思えない古泉の話に、キョンは声を上げる。
「それは事実でしたし、僕が敵軍に強制的に快楽を味合わされたのもまた事実です」
「……古泉、手痛いんだが。離せ」
「ふふ……僕、忘れられないんですよ、その指摘と……あの熱が」
自分の言葉に耳を貸そうともしない古泉に、キョンは恐怖に似た感情を感じた。握られた手首が痛い。骨がきしむようだ。
「だからね、作ってみたんです。……訓練用に、この子を」
ぱち。
「……う、わああああああああああっ!!?」
室内の照明が点いた、次の瞬間。キョンは驚きに叫んだ。
古泉の背後……古泉の自室の一角を、敵艦で見たものと瓜二つな機械の触手が埋め尽くしていたのだ。
「古泉!! なんだよあれ、お前なに考えて……!」
「可愛いでしょう? とても従順なんですよ。……まぁ、そのようにプログラムしたんですが」
ふふ、と満面の笑みを浮かべる古泉に、背後から一本の触手が伸びてきた。
それはしゅる、と音を立てて古泉の首に巻きつき、頬に一瞬触れて離れた。……キスをするように。


「さあ、訓練開始です。耐えてくださいね……」