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今日も残り僅か、少し早いがそろそろ寝ようかと思っていた所でチャイムが鳴った。
控え目に、だが、何度も鳴らされるその音に、面倒臭いと思いつつも玄関へ向かう。
いったいこんな時間に誰が何の用があってやって来たというのか。
足音に気付いたのだろう、聞き覚えのある声がドア越しに耳に届いた。
「あ…あの…遅くにすみません」
その声を聞くが早いか、バッとドアを勢い良く開ける。
目の前に居たのは予想通り、古泉一樹だった。
「こんばんは。すみません…突然尋ねてしまって。」
全く構わない。それよりも古泉に会えた事で寝るのを邪魔されたイラつきなんて遥か銀河の彼方に飛んでいったくらいだ。
ダッフルのコートに、古泉には珍しく被っていた帽子が良く似合っていて、可愛いったらない。
複眼とは正にこの事だ、後で写真撮っておこう。
それにしても、こんな時間にこんな所に何をしにきたのだろうかと疑問を持つ。
当の古泉は挨拶の後に何故か黙りこくってしまい、眉を八の字にしてこちらを見て来る。
困った顔も可愛い。じゃない。何でまたそんな出会っていきなりそんな顔なのか。
そう尋ねてみると、古泉はよりいっそう弱々しい表情を作り、ゆっくりと被っていた帽子を取った。




「こんな、ことになってしまいました…」


俺の古泉に耳が生えていた。


偽物かとも思ったが、そうではないらしい。
その証拠にへたりと垂れたその耳は、時折ピクピクと微かに動いている。
「こんなものをいきなり見せられても…困りますよね…」
だんだん尻すぼみになる声と共に、耳が余計にへたりとなった。
「急にこんなものが生えて、動転してしまって…誰かに相談しようって思ったら、貴方の顔が浮かんで…」
突然に押しかけてしまってごめんなさい、と古泉は俯いて謝る。
さて、当の俺といえば、暴れ出したがる本能を意思の力で押さえ付けるのに精一杯になっていた。
夜中にやってきたネコ耳古泉。食って下さいという意味で取っても誰も文句は言えんだろう。
そっと古泉の頭に手をやり、髪質とはまた違う、いくらか柔らかい毛並みを撫ぜる。
気持ち良い。思わず無言で撫で回していたら、古泉がおずおずといった風に口を開いた。
「あの…耳だけじゃなくてその、尻尾も…」
長いダッフルの裾の下からチラリと揺れて見えたのは、古泉の髪と同じ色の、可愛らしい尻尾だった。