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「ご、ごめんなさい・・・。」
俺の目の前で古泉が目を潤ませて謝罪の言葉を口にする
何度目だろうな?その言葉を聞くのは
「おまえのせいじゃないだろ、もう謝るな」
「でも・・・」
「いいから、それよりちゃんと掴まっとけよ、入れるから」
「・・・はい」

先日満を持して発売された古泉人形であるが、
御多分に漏れず俺も即刻購入した
それが今目の前にいるこいつだ
同じ顔をして済まして微笑み居並ぶ人形たちの中で
なぜかこいつが気に入って我が家に連れ帰ってきた
だが、こいつには予想外な問題点があったのだ
とにかく腰が緩いのだ
いや、緩いなんてモンじゃない
外れる、バラける、崩れる、といったほうが正しいかもしれない
連れ帰ったその日、家にかえるや否や早速箱から出して
ためつすがめつ眺め、ポーズを付け、動かし、手の中で弄び、
そしてバランスを取りながら自立させてみた
支えなしで立たせていてもちょっとした振動とかで
バランスが崩れて倒れこむ、なんてことは
他の人形(長門やハルヒ)でもあったことだから別に驚きはしない
だが古泉が女子連中と決定的に違ったのは、ばたりと倒れこんだ衝撃で
上半身と下半身がものの見事に分断してしまったことなのだ
いやびっくりしたさ、俺も
まさか倒れただけで腰が外れちまうなんて思いもしないだろう?
うわ、直るのか、これ、と思いつつ泣き別れの上半身と下半身を
手にしてブレザーの下のウエスト部分を覗き込む
白いシャツに包まれた細いウエストを予想していた俺は
そこにあるものを見て絶句した
女子連中の腰はどんなに曲げようが倒れようがこんなに簡単に崩れるように
外れちまうなんてことはなかった
だが古泉はいとも簡単に腰から下がサヨナラ状態になってしまう
その原因をそこに見たような気がした

そこにあったのは「棒」だったのだ

「あの……」
絶句して固まったままの俺の耳に小さな囁きが……ん?
今、手の中に納まっている古泉が喋ったような気がしたんだけど
気のせい、だよな、うん

「あのー、すみません。」
「うわっ!」

思わず手の中の古泉を放り投げちまった

「あいたた、ひどいなぁ、投げないでくださいよ。」
「あ、いや…すまん。」

って、なに謝ってんだ俺
今、確かに喋ったよな、こいつ
気を取り直してブン投げちまった古泉の上半身と下半身を注意しつつ拾い上げる

「えーと、何?おまえ喋れるの?」
「あ、はい。そのようです。せっかくお買い上げいただいたというのに
どうやら僕は初期不良品のようですね。」

シュールな事に目の前の喋る古泉人形は自分の置かれてる状況を
冷静かつ、的確に分析しているようだが、
いや不良品とかそーゆーことじゃねぇだろ
俺の知る限りではこのタイプの人形にトーキングギミックは仕込んでない筈だ
一体何だってんだ、こいつ
もしかして呪いでもかかってんのか?
俺の疑問をよそに尚も目の前の小さな人形は良く回る舌で喋り続ける

「箱に記載されているサポートセンターにメールか電話で連絡していただくか
お買い上げの店舗にレシート添付の上で不良品であることを申告していただきましたら
交換可能な筈ですのでお手数ですが手続きを・・・」
「うるさい、黙れ。」
「は?」
「とりあえず交換とか何とかは置いといてだ、
おまえ、センサーとかマイクとかトーキングギミックの類は仕込んでないんだよな?」
「は、はい。」
「それで何で喋れるんだよ?元来喋る仕様じゃないだろ?」

俺は古泉と同じシリーズの女子人形も持っている
購入して数ヶ月は経つが未だ彼女らが喋ったり自ら動く場面に遭遇したことは一度もない
なのになんでお前は動く?喋る?

「…さて、何故でしょう?その点につきましては僕も判りかねます。」
「もしかして呪いの人形とか」
「ありえません。」

きっぱりといいやがったなこいつ

「僕の意識…というのでしょうか、それが目覚めたのはつい先ほどです。
何人もの人に可愛がられたり、羨望の的になったりした
曰くありげなアンティークドールならまだしも
工場と店舗くらいでしか人に触れたことのないマスプロ製品に
かけられた呪いなどあるはずがないでしょう。
それに僕を実際に手にとって触れたのはあなたが初めてですから。」

肩をすくめ手のひらをあげる、お決まりの例のポーズつきだ
だがいくら色男な古泉といえどいまだ下半身の繋がってない
間抜けな状態で格好つけたってきまりやしない

「あー、古泉。」
「はい、なんでしょう?」
「とりあえずよくわからんものはおいといてだな。
その、体がバラバラなままじゃ何だし、下半身くっつけてもいいか?」
「あ…、そういえば先ほども僕を元に戻そうとしてくださってたんですよね。」
「おう」
「すみません、ではお言葉に甘えてお願いします。」
「んじゃ、嵌めるぞ。」
左手の中の古泉を逆さにしてブレザーの下を覗き込む
さっき確認したとおりやはり胴体があって然るべき場所には
空虚な空間に突き出た肌色の棒がある

「あのぅ…」
「なんだよ?」
「あまりまじまじと見つめないで頂きたいのですが。」

もじもじとブレザーの裾をつまんで顔を赤らめる古泉

「なんだ?さっき俺に声をかけたのももしかしてそれが言いたかったのか?」

こくん、と頷いて口元に手をあてて上目遣いにこちらを見上げている

「…だって、人に喜んでお見せするような所ではないでしょう?」

確かにそうかも知れんがそこまで恥ずかしがることもなかろう
第一きちんと嵌める為にはどことどこを繋げるのかちゃんと位置を確認しておかないとな
さもないと二度も三度も嵌めなおし、なんて事になるぞ
それでもいいならあてずっぽうでやっても構わんがな、俺は

「…わかりました。あなたにお任せします」
「よし、そんじゃブレザーの前広げて持っててくれ」
「僕が、ですか?」
「当たり前だろ?俺両手塞がってるんだぞ?」

なんだ?その恨めしそうな目は

「わかりました…これでいいでしょうか?」

諦めて溜息をつきながら自分のブレザーを広げて見せる古泉
うっすらと頬を染めて顔を背けている

「赤くなってんじゃねーよ」
「と、仰られましても…。自分のみっともない所を見られるのは恥ずかしいです。」

そういうもんかね?
ま、出来れば他人に弱点は見せたくない気持ちはわからんでもないが
現時点でのこの状態は不可抗力というべきだろう
あてずっぽうに突っ込んで古泉の体を支えている棒を
勢い余って折っちまったりしたら…恐ろしいからな
こいつに痛覚があるかどうかさえわからんが
少なくとも俺には抵抗できない状態の奴をいたぶって楽しむ趣味はない
安心しろ、これを嵌め込んだらその恥ずかしさともすぐにおさらばだ

作業としては簡単なものだ
大して力が要るわけでもなく、器具や専用の工具なんてものも必要ない
下半身の孔を上半身の棒に宛がい、ぐり、と力を入れて押し込む
ただそれだけ、なのに

「古泉……。おまえ…、みっともないってそういう意味だったのか?」

(つづく)