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それは僕が最初に組んだパーティーだった。
駆け出しの吟遊詩人である僕を、彼らは歓迎し受け入れてくれた。
そのパーティーは剣士が二人、僧侶と魔法使い、盗賊が一人ずつ。
彼らは既に旅慣れていて、僕とのレベルの差も大きかった。
どうして僕と組んでくれたのかとても不思議で。
分不相応な戦闘の数々はとても怖かったけれど
僕の職業はそこまで敵と直接戦う訳でもなかったから。
彼らのフォローの元、何とかなってしまった。
彼らはとても優しく僕を導いてくれて。
良い仲間に恵まれたと、そう思っていた。

切っ掛けは些細な事だったように思える。
いや、毎日命のやり取りをしているのだ
些細と言い切ってしまうのは僕の甘えだろう。
明らかにレベルの足りない僕は、どんなに直接敵に触れないとは言え
やはりパーティーのお荷物だった。
幾ら彼らに守って貰っていても、間に合わない時はどうしても生まれる。
攻撃に晒される度に僕の演奏は途切れ、それは彼らへの支援が途切れる事となり。
手馴れた彼らにそこまでの危機は訪れなかったものの
最終的には仲間の負担を増やしてしまう事となるのだ。
少しずつ蓄積されていく劣等感。
自分に出来る事を、そのスキルを高めようと努力はした。
しかしそう簡単に追いつける訳が無い。

ある晩、宿で同室になったパーティーリーダーの剣士は
思い悩んでいた僕に、歌の練習に付き合ってやろうかと言いだした。
二人だけの部屋。剣士を前に竪琴を手にして歌う僕。
いつしか剣士は腕を伸ばし、強く抱き締められて、唇が塞がれる。
取り落とした竪琴は床で跳ね、不協和音を響かせた。
当然僕は抵抗をした。
しかし剣士の力は強く、逃れられない僕にこれも練習の一環だと彼は言う。
触れられる度に僕の口からは高い声が漏れ、そんな僕を彼は褒め、気を良くしていった。

一度一線を越えてしまえば、もう抗いようが無い。
歪んだ歌の練習は幾度と無く繰り返され、やがて相手は剣士だけではなくなった。
当初宿による際に与えられていた一人部屋は無くなり、パーティーの誰かとの同室を宛がわれた。
まるで日替わりのように僕は彼らと夜を共にし、様々な声を引き出される。
思えば剣士二人は優しい方だった。前衛と後衛という遠慮があったのだろう。
反面後衛職は、特に日頃僕のせいで負担が増えている僧侶との夜は
つらい事の方が多かった。
竪琴を手に歌わされながら体を弄られ、声が途切れる度に最初からまた歌い直す。
僕は一曲も歌い終える事が出来ず、最終的には僕自身の吐き出した白濁に塗れた床に這い蹲りながら
僧侶の足元で、彼の言う神様に己の至らなさを懺悔するのだ。
枯れた喉はどんなに僧侶の力で癒されようとも、その無力感屈辱感に僕は何度も魘された。

宿に泊まった時だけだったはずの行為は、次第に他の時間までも侵食して行った。
本来一対一で行うべき秘め事は、どうせ同じ事だとパーティーの面々の目に晒される。
野営の時は焚き火を囲み談笑する彼らの前で、僕は一人淫らな声を上げ
日中戦闘の合間ですら、戯れのように翻弄された。
歓楽街で買った女性との行為を強いられた事さえあった。
状況に応じて歌い奏でる吟遊詩人という職の僕は
最早彼らにとって僕の体ごと、打てば響く楽器の一つでしかない。
初期とは大幅に変わってしまった彼らからの扱いが辛くて悲しくて
合間を見つけては、僕はそれまで以上に一人練習に打ち込んだ。
もっと僕の歌と演奏が上手し、足手纏いにならなくなれば
以前のような彼らに戻ってくれると思っていたのだ。

しかしどれ程時を重ねても、何も変わらなかった。
他者を受け入れる事を覚えた僕の体は、彼らと僕自身に快楽を齎す。
自分が惨めで堪らなく、パーティーを脱退したいとリーダーに申し出た。
申し出は受け入れられず状況は悪化し、僕には常にパーティーメンバー誰かの目が付き纏った。
度重なる行為と戦闘の日々に疲弊しきった僕は体調を崩す事も増えていく。
僕が寝込む間だけ、彼らは以前のように優しかった。

回復祝いとして連れて行かれた、人の多く品の良い酒場での事だった。
どうせこの夕餉の後はパーティーの誰かに、もしくは皆に抱かれるのだろう。
僕は自分の体だけでなく、心にも限界を感じていた。
こんな場所で話すべきでは無いと知りつつも、衝動のままに彼らへ脱退希望を告げた。
ここならば、体面を気にする気質の彼らは無理強いをする事も出来なくなる。
部屋で落ち着いて話すべきだと引き摺られそうになったが
僕はそれに必死で抗った。
第三者の奇異の目が、揉め事を起こしている僕たちに向けられ始め
見かねたお人好しの一人が声を掛けてきた。
随分と身なりの良い紳士だった。
見知らぬ人を巻き込んでいると知りながらも、僕はこれまで心の内で温めていた
当たり障りの無い、けれど覆す意思の無い脱退への動機を語った。
今この機を逃したら、僕はきっとこのパーティーから離れられない。
嘘ばかりの僕の言い分と、取り繕うような彼らの言質を聞き終えた彼は
一度離れてみるのも良いのでは無いかと、穏やかにそう言った。
冒険者とは一線を画す貫禄を持つ彼に、権威主義のパーティーメンバーは逆らう事も無く
僕は久方振りの自由を得る事に成功した。

その後暫くの間、僕は豪奢な彼の家に招かれ歌を奏で過ごした。
誰もが知っている伝承を、また虚実の入り乱れた有象無象の冒険譚を歌い語る僕に
彼はゆったりと耳を傾けてくれた。
何も不自由の無いお抱え詩人のような日々。
だが、それもある晩彼が歌ではなく僕自身を欲した時に終わりを迎えた。

僕はまた旅を続ける事にした。
不本意な事も多かったが、あの手馴れたパーティーで得た冒険のノウハウは
その後の僕の旅に大きな利点となった。
状況に応じて様々なパーティーを組んだ。
僕から望んだ事は無かったが、求められれば性別を問わず肌を重ねた。
一度触れてしまえば、僕は早々にそこを後にする。繰り返す事は怖かった。

やがて快楽を覚え込んだ体を鎮める術を身に付け、次第に忘れられるようになった頃
僕はある街で朴訥とした一人の剣士に出会った。
彼は組む相手を探しているようだった。
平凡という言葉がとても似合う彼の動向が、何故か気になって。
珍しい事に、僕は自分からそっと声を掛けてみた。

彼は裏表の無い人間だった。おそらくはその性癖も心根と同じように健全なのだろう。
旅そのものは決して楽な方ではなかったが
自分を必要以上に飾らない彼の実直さは、荒んだ僕の心に安らぎを与えた。
次第に彼の傍らに居る事に執着し始めた僕は
些細な事から払拭出来ていると思っていた自分の傷を再認識し
結果自棄を起こして、彼を誘った。
それでも彼は自分を見失う事も無く、その後も何も変わらなかった。
その態度に自分から誘っておきながら、酷く安堵したのを覚えている。
レベルや技能ではない、彼は心そのものが強いのだろうと思った。

以来、僕は彼の側に在り続けた。
いつになるかは解らないが、全てを打ち明けられる時が来たら
その時は、僕ももう少し変われるのかも知れない。
そう考えながら、今日も僕は彼と旅を続けていくのだ。