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「なぁ古泉。この中から一枚引け」

俺は、風呂上がりにミネラルウォーターを飲んでいる古泉に6枚のカードを差し出した。
勿論、古泉にはカードの表が見えないように。

「はぁ、占いか何かですか?」

お前にはこれがタロットカードにでも見えるのか?
まあ、古泉の今後を左右するという点では占いともとれなくはないが…。

俺が頷くと、古泉は嬉しそうに頬を緩ませた。
今年の正月は閉鎖空間やら何やらで古泉は初詣に行きそびれ、おみくじを引いていなかった。
だから、これをその代わりにでもしようと思っているのだろう。
俺にはそんなつもりは無かったんだが、ちょうどいい、それに便乗させてもらおう。

あいつはウキウキという擬音がつきそうな動作で、俺から見て一番右のカードを引いた。
俺は思わずにやけてしまう。

「じゃあそれはそのまま机に伏せて、もう一枚」

ほら、と古泉を促す。
今度は俺は真ん中のカードを少し突出させておいた。
あれの次はこれしかないだろう?

古泉はというと何の迷いもなくそのカードを引く。

ああ、なんでお前はそんなに俺の筋書き通りに動いてくれるんだろうな。
俺はさらに緩みそうになる口元の筋肉を総動員させた。

同じことをカードが残り1枚になるまで続け、最後に、引いた順番にカードを重ねる。
そして扇状に広げて古泉に表が見えるようにして手渡した。

古泉はそこに書かれた文字を見て、顔を真っ赤にさせた。

「み、耳責め。…乳首責め。……亀頭責め。………言葉責め。…………前立腺責め。……………」

段々と声量と読む速度が落ちていき、最後はモゴモゴとして聞き取れなかった。
だが、このカードは俺が作ったんだ。
何が残ってるかなんて解りきっている。

「最後は尿道責めだろ?順番にしていってそこに来るまでに意識飛ばしたら、お前の今年の運勢は凶。最後まで意識があれば大吉。」

俺がこう言えば古泉は潤んだ瞳で俺を見つめ、肩を震わせながら、凶は嫌ですぅ…と呟いた。

そんな古泉を無視して、
「始めの合図はお前からのキスな。期限は今日中。もしそれまで来なかったら運勢は大凶かもなー。」
と呑気な声で言い、俺は古泉に背を向け寝室に向かった。

さて、古泉が来るまであとどのくらいだろうな。

 

カチャッ

あれから数時間。
刻限ギリギリになって寝室のドアが開いた。

あぁ、よかった…。
俺はほっと胸を撫で下ろした。
正直もう来ないんじゃないかと諦めかけていたのだ。
さすがの古泉でもあんな素人が作った占いなんぞは信じるまいと。

しかし、古泉は律儀にやって来た。
古泉のそういうところが堪らなく好きだ、と思う。

「覚悟、決まったのか?」

今まで読んでいた本をベッド脇のテーブルに置きながら問う。

しかし、いつまで経っても古泉から返事がなくて、俺はドアへと目を向けた。

………………!!!?

どういうことだ?

俺の脳内では、ドアノブに手をかけたまま、耳まで真っ赤にした古泉が恥ずかしそうに俯いている予定だったのだが…。

実際にいたのは、パジャマの前がはだけかけ、息が荒く、頬を紅潮させた古泉だった。
さらに目はとろんとしており、足元は覚束なく、ドアに捕まっていないと立っていられないようだった。

そんな艶やかな古泉の姿を見て、俺は言葉を失った。

…どうした、古泉?

俺が言葉を発せないでいると、ふいに古泉はドアから手を離し、右へ左へフラフラしながら俺の方へ足を向けた。
近づくにつれ、初めは悩ましげだった顔に段々と喜色が差してくる。

俺は状況が把握出来ずに、ベッドで上半身を起こしたままただ呆然と見ているしかなかった。

「つかまえましたぁ~!」

ベッドまでたどり着いた古泉は、勢い良く俺に抱きついてきた。
そしてそのまま唇を軽く合わせるだけのキスをし、クスクスと笑い始める。

触れあった唇から微かにアルコールの匂いがした。

「ちょ…っ!古泉、お前酒飲んだのか?」

俺の胸に楽しそうにグリグリと頭を擦り付けていた古泉を一旦引き剥がし問うてみると、こいつは悪びれもせずこくりと頷いた。

お前はまだ未成年だろう。
そう言ってやろうと口を開こうとしたら、古泉の人差し指で止められた。

「僕、合図しましたよね?」

ああ、そういうことか。
目をそらしながら言う古泉を見てやっと理解した。

こいつは酒を気つけ剤にしたのだ。

お前はそこまでして占いがしたかったのか?
というか、気つけ剤にしては量が多すぎるだろう。
俺が呆れ返っていると、古泉は焦れたように俺の耳たぶを舐めまわし始めた。
ぴちゃぴちゃと古泉の唾液が絡む音がする。

ちょっと待て、それは俺の仕事だ。

首に回されている腕をそのままに古泉を押し倒すと、古泉は最後に耳全体をひと舐めしてから呟いた。

「僕、今年は大吉がいいです。」

それはお前の頑張り次第だな。

古泉の引いたカードに従い、まずは耳元で囁いた。

つづく