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「は?何だって?」
人間誰しも聞きたくない台詞は頭に残らないものだ。
俺は今、まさにそれを実感していた。
「ですから。全ては涼宮さんが望んだからこそ、なのですよ」
聞き分けの悪い子供を諭すように至近距離に立った古泉が言う。
二人きりの部室で、俺は窓を背に追い詰められていた。
その指先が俺の耳朶をくすぐり、頬から顎へと撫ぜる。
能面のような笑顔は、今は奇妙な色気を醸し出し。
こいつが同性である事が不思議に思えてくる程だ。

「待て。それとこれとどういう関係があるんだ」
古泉の色気にたじろぎつつも、俺はその手を押し戻して口を開いた。
「時にあなたは、性交渉の経験はお有りですか?」
質問に答えず何て事を聞きやがる。呆気にとられて二の句が告げない俺を前に
古泉は暫し目を瞬き、口元に手を添えて思案顔を浮かべた。
そして「なるほど」と呟いて頷いた。何かしら自己完結したらしい。
「解りました。やめておきましょう」
それまで迫っていたのが嘘のように、あっさりと身を離した。

「どういう事だ」
思わず安堵しつつも、その変わり身の早さに、俺の方が戸惑いを隠しきれない。
「あなたが未経験である事も、また涼宮さんが望んだ事だとすれば
今ここであなたには手を出さない方が良いでしょう」
手を出す?誰が。お前が、か?
「そうなりますね」
待て。俺はホモじゃないぞ。
「僕もですよ。ただ、涼宮さんのご希望に沿うまでです」
……ホモを望むのか?ハルヒが?
「それだと多少語弊がありますね。男性とも女性とも交渉出来る存在を
涼宮さんが望んだからこそ、僕は今こうしてここにいるのです。
昼は淑女、夜は娼婦とも言うじゃないですか。
品行方正な優等生の隠された二面性を、涼宮さんは求めているんです」
「何でだ」
「さて。何故でしょうね。しかし解ってしまうのですから仕方がありません」
最後はお決まりの台詞。
幾らハルヒでもそこまで無茶な事を望むのだろうか。
それに、男とも女ともって、お前そんなに乱れた生活をしてたのか……。
「ああ、誤解しないで下さい。確かに訓練はしましたが
僕はまだ誰ともそういった行為には及んでいません」
そういった訓練。
古泉の言葉に、つい、なけなしの知識で
連想してしまいそうになり、慌てて思考を止める俺。
「その方が懸命かもしれませんね。耐性が無いときついでしょうから」
なら何故、耐性の無いだろう俺にこんな話をするんだ、お前は。
「全くの予備知識も無しに、こんな話をされる方が困るのでは無いでしょうか?
以前、僕が閉鎖空間にあなたをお連れしたように
遠からず涼宮さんがそういった事柄を実現化する時が来る。その為に、ですよ」
お前と俺がそうなるってのか。
「それは解りません。あなたと涼宮さんとの行為に僕が混ざるのかも知れませんし。
もしかしたら団員全員で、かも知れませんね」
どんな不純異性交遊団体だ、それは。いや同性も混ざるのか。
最悪も良い所だ。考えたくもない。
心底嫌そうに言う俺を眺めながら、古泉は何も言わず静かに笑みを浮かべていた。