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「花見をするわよ!!」

正に花見季節と言っていいこの時期、この唐突なハルヒの一言で花見が行われることが決定付けられた。
普通なら桜の花が咲き乱れる場所で所謂「花見の席」を設けるのだろうが、我らが団長殿は
「酒臭いおっさんまみれの中でなんてまっぴら御免だわ!」
という勝手な理由に基づき、長門の部屋で催されることとなったわけだ。
それだと肝心の桜の花がないだろうと思ったが、
「これを飾れば十分に花見として成立するわ!」
公共の場で咲き乱れている桜の木々からもぎ取ったであろう桜付きの枝を俺に差し出す。
単に酒が飲みたいだけの飲んべえが雨天でも花見をする理由付けみたいな方便だが、それを指摘すると
「だったらあんたが一人で場所取りをする?」
と言い返されてしまってはぐうの音も出ない。
さすがの俺も自分一人で場所取りのために数時間も座り込んで待ちたくはないからな。
ああ、折れてしまった桜の木よすまん。
これを読んでいるいい大人はこんなことをしてはいかんぞ。


――とまあ、そんなわけで、花見とは名ばかりの宴会が長門の家で催される運びとなった。
面子はいつものSOS団員五名ポッキリ。
大人が居ないというのにアルコールを口にする不届き者は誰も居ない。
そんなものに頼るまでもなく、女子三人が作った料理に舌鼓を打ちながら、俺たちは常にハイテンションな状態で宴を続けていた。
その理由の一つに挙げられるのが、長門のゲームコレクションの中にあった「桃鉄」である。
普通の「桃鉄」は四人ゲームであり、我らSOS団は五人だから必然的に一人余るわけだが、それがハルヒの不思議パワーでねじ曲げられた結果、何と「桃鉄」が五人用になったのだ。
「相変わらず無茶をする奴だな」
俺は溜息を一つつくが、
「まあまあ、これは小さい改変ですし、何ら影響はないでしょう」
一方の古泉は苦笑を一つ浮かべるだけで至って穏やかなものだ。
そりゃまあ、目からビームが出るわけでもなく、お前に実害があるわけでもないしな。

かくて俺たち五人は本来は四人用であろう「桃鉄」を――少なくてもハルヒと朝比奈さんの二人は疑問に思うこともなく遊ぶ運びとなった。


それから――
「桃鉄も満喫したし、そろそろ別のゲームに移りましょう!」
ようやく――と称していいぐらいの時が流れた頃、疲労困憊の俺たちを余所にハルヒは言い出した。
本当は99年までプレイしたかったらしいが、ゲーム内で計算してみた限りだと、軽く見積もっても丸一日は優に超えるらしく、流石にぶっ通しでそこまでプレイするのは無理だと判断したらしい。
ハルヒと長門の二人だけなら余裕で可能だろうが、生憎と俺を含む他の三人は付いていける筈がなく、しかも一時間ほど経過した時点で長門の部屋が精神と時の部屋になりかねない状況になったので、慌てた俺と古泉の二人は何とかゲームを終わらせる方向へ話を進めたわけだ。
おーい、古泉。『小さい改変』レベルじゃねえぞ、全く。
「別のゲーム? 俺は目が疲れたから少し休みたいんだが」
そんなわけで、俺としては少し身体を休めたかったわけだが、体力気力共に満ち溢れているハルヒにしてみればまだまだ物足りなかったらしい。
「相変わらずキョンはおっさん臭いわねえ」
ハルヒは溜息を一つつくと、片手を腰に当て、もう片方の手を掲げて叫んだ。
「解ったわ、そんなキョンのために野球拳をやるわよ!」
「はぁ? 野球拳? この面子で?」
俺がハルヒに向かってすかさず疑問系で返すと、
「ふぇぇぇ~」
朝比奈さんはハルヒの発言を聞いておろおろと怯える。
それはそうだろう。
彼女のことだ、自分が負けたことを考えるといてもたってもいられないに違いない。
「それはそれは……」
古泉はにこやかに微笑み返すも若干顔が引きつっている。
まあ、こいつの立場では無理もないだろう。
この手のゲームは激弱な上に、勝利の女神が微笑んでいるどころか正にそのものであろうハルヒと長門の二人が居たのでは敗北を確信しているに違いない。
「………」
一方の長門はそんな二人を無言で眺めている。
長門のことだから自分が脱ぐことよりも誰が脱ぐことのほうに関心があるのだろう。
恐らく長門的にはこの二人がターゲットに違いない。
いや、普段部室では中々拝めそうにない分、古泉のほうがややリードか?
ある意味において俺の同士とも言えるから、隙を見て俺が勝てるよう頼んでみるか。
誰も俺の素っ裸なんか見ても楽しくはないだろう。
「流石にアンタの全裸姿なんて見たくないからパンツが残った時点でリタイヤだけどね。
それに、アンタ以外は目の保養になること請け合いなんだから、有り難いことじゃないの」
「いや、しかしだな……」
目の保養と言うだけなら十二分なるであろうハルヒが憮然として言い放つ。
確かに俺を除いた四人の裸体を拝むことが出来るのなら文句を言う筋合いはないどころか大歓迎だ。
万が一、自分がパンツ一丁になる羽目になったとしても大した痛手ではない。
「まあ、アンタばかりいい目を見るのも癪だから、一番最初に負けた人は最後まで勝ち残った人の言うことを何でも聞く――でいいかしら」
「おいおい、まるで俺が一番最初に負けるような言い草だな」
少なくても、俺よりこの手の勝負事に弱い奴の存在を忘れてはいけない。
それに、
「五人で一斉にじゃんけんというのはアイコが多発するからじゃんけんの進行が遅くなるんじゃないか?」
ハルヒは俺のこの疑問に顎に手を当てて考え込む素振りを見せる。
「それじゃあ、最初は二人と三人に別れて、勝ち残った二人で決勝戦ということにしましょう!」
だが、それも一瞬の間でしかなく、目を輝かせて意気揚々とその手を掲げて宣言した。
何がどう決勝戦なのかは知らんが、これなら五人一斉にやるよりも進み具合は早そうではある。
だが、問題は組み合わせだ。
理想とするのは俺が最後まで勝ち残ることだが、ハルヒと長門が居る限りそれはほぼ無理であろう。
ならば、少なくても最善の手――古泉と朝比奈さんに勝ち残らせてはいけない。
そんな俺の思いが通じたのか、組み合わせは次の通りになった。


一回戦その1――キョンvsハルヒvs長門――

とまあ、方や古泉と朝比奈さんの対決という、どっちが負けても俺にとって目の保養になるであろう組み合わせとなった。
だが、それは同時に、俺の敗北――しかも一番最初に負けるであろうことが確定した瞬間でもある。
凡人たる俺が、宇宙的パワーを持つインチキの神様と文字通りの神様の二人を相手に勝てるわけがない。
せめて相手が古泉か朝比奈さんなら――

「野球するなら~こういう具合にしやしゃんせ♪ アウト! セーフ! ヨヨイのヨイ!」

という俺の想いもむなしく、ハルヒのかけ声と共にじゃんけんが開始された。
そして、やはりというか何というか、予想通りと言っていいぐらい俺はあっさりと負け続け、パンツ一丁の素っ裸となり果てて早々にリタイヤとなった。
しかし、一回ぐらい勝たせてくれてもいいんじゃないか? 長門よ。

「本当にキョンは弱いわねえ!」
自信満々に声を高らかに上げるハルヒが憎らしい。
「じゃあ、負け犬なキョンは無視してちゃっちゃと進めるわよ!」
「了承した」
まあ、いいさ。
俺は目の前に繰り広げられているハルヒと長門のじゃんけんから目を逸らし、古泉と朝比奈さんの対決に視線を移すことにした。


一回戦その2――古泉vsみくる――

「ふぇぇ~ん。また負けちゃいましたぁ」

朝比奈さんの悲痛な叫び声と共に、彼女の身体から衣類がまた一枚すり落ちる。
そう、意外や意外と言っていいのかは解らんが、この二人の対決は古泉が圧倒的なリードをしていたのだ。
朝比奈さんもこの手の勝負事は決して強いほうではないとはいえ、古泉の全戦全勝というのは今までにないんじゃないか? 少なくても俺は見たことがない。
「すみません……ギブアップされても構わないんですよ?」
実はこのじゃんけん、ハルヒ自らの進言により一回戦に限り途中リタイヤ――つまりギブアップもOKなのだ。
無論、ギブアップした以上はそれ相応の罰ゲームが用意されているのは火を見るより明らかなのだが、それでもパンツ一丁になるよりはマシであろう、少なくても目の前に居るこの二人は。――と思ったのだが、
「いいえ、まだやります」
ブラジャーとパンティだけになった朝比奈さんは、にっこりと微笑んで古泉に続行を告げる。
「そうですか……」
古泉は朝比奈さんから顔を逸らし、少し間を置いたところで顔を戻す。
大方古泉のことだ、朝比奈さんの下着姿を前にして目のやり場に困っているのだろう。
顔を逸らした際の古泉は俺から背を向けていたため表情は読み取れなかったが、真っ赤になっていた耳からおおよその推測は出来た。
ハルヒよ、決勝戦は視線を逸らしては駄目だというルールを追加してくれないかね。

結局――

「これで最後ですぅ」

朝比奈さんがブラジャーを脱ぎ捨てて終了となった。
ああ、何という至福の時よ。
以前朝比奈さん(大)でチラリとだけ拝んだ胸元にある星形のホクロがばっちりと見える。
流石の古泉も朝比奈さんの裸体に顔を逸らすことが出来ず、顔を真っ赤にさせたまま視線は朝比奈さんの胸元に釘付けだ。
どうせなら、下着の上からも十二分に解るぐらい自己主張している俺の一物もそのくらい熱い眼差しで見つめてほしいものだが――
「ナニ間抜け面しておっ勃ててるのよ、この馬鹿キョン!」
ブラジャーとパンティだけになったハルヒに、どこから取り出したのか解らないハリセンで叩かれる。
「仕方ねぇだろ、生理現象ってやつだ」
「アンタが負けたからといって、まだこっちの試合はまだ終わっていないんだから、少しはこっちも見なさい!」
「へいへい」
俺は肩をすくめてハルヒと長門のほうへ身体を向けようとするが、
「………」
その時、一枚も服を脱いでいない古泉と目が合う。
ん? 少し顔が赤かったような気がするが、朝比奈さんの裸体を見た衝動がまだ完全に消え去っていなかったのだろうか。
「おや、貴方は負けたのですね」
だが、そんな俺の想いも、普段通りの微笑みで話しかける古泉の声でかき消される。
「……あの二人が本気になったら勝てるわけないだろ」
「それもそうですね。僕は組み合わせ運が良かったと言えます」
「全くだ」
それは俺も同意だ。
最も、俺と古泉では微妙に意味合いは違ってくるだろうが。

「勝ったわ! これで決まりね!!」
「………」

そして、ハルヒと長門の二人がブラジャーとパンティだけになった後、十回ほどに渡ってアイコになった末にハルヒの勝利と相成った。

「……やれやれ、涼宮さんが相手ですか」
下着一枚となった長門から視線を逸らした古泉は、肩をすくめて溜息を一つつく。
ハルヒが相手では次の勝負は負けが確定したようなものだからだ。
最も、長門が相手でも同じようなものだから、どっちが勝ったにせよ古泉が溜息をつく
羽目になることに違いはないわけだが。
「お前の運もここまでだな」
それに、ハルヒ大明神にかかればお前なんざ素っ裸のスッポンポンにされるだろう。
「確かに涼宮さんを相手に勝つことは難しいとは思いますが――」
古泉は余裕ありげな笑みを浮かべ言葉を続ける。
「少なくてもこの段階で僕の罰ゲームはなくなったわけですから、それだけでも良しとしておきます。生憎とこの中で一番最初に負けたのは貴方であり、少なくても僕は勝っていますから」
「言ってろ」
確かに古泉が言う通り俺への罰ゲームはあるだろう。
だが、後に控えているであろう罰ゲームより、今は目先の古泉の裸体だ。
誰がなんと言おうとこれだけは譲れない。
それが男という生き物なのだ。それでいいのだ。


決勝戦――ハルヒvs古泉――

かくして、ハルヒと古泉の決勝戦が開始される運びとなった。
誰もが――少なくても俺と古泉の二人はハルヒの圧勝を想定していたのだが、意外や意外と言っていいであろう、古泉がどこその宇宙的パワーでも使ったかの如く勝ち続けていたのだ。
「あーもう、しょうがないわね!」
またもや負けたハルヒは、ぶつくさ文句を言いながらも上着を脱ぎ始める。
今の俺の前にあるのは、きっちりと服を着込んでいる古泉と、ブラジャーとパンティのみとなったハルヒの姿であった。
いやはや、ハルヒのその姿も目の保養になると言えばなるのだが、大本命である古泉の素っ裸はどうした、素っ裸は。このままだと拝めないまま古泉が勝ち残ってしまうぞ。
「あ、あの、涼宮さん。この辺りでギブアップしても……」
ハルヒから視線を逸らして古泉がぼぞぼぞとつぶやく。
朝比奈さんの時と違い、露出しているハルヒを意識している様を隠せないでいる様子だ。
「あたしがそんなことするわけないでしょう! 勝負はこれからなんだから、このまま続行よ!!」
ハルヒが怒りを露わにしながら胸を揺らす。
「わ、解りました……」
いつもの平然さはどこへやら、顔を耳まで真っ赤にさせて動揺している古泉の姿は普段拝むことは出来ないし、これはこれで見ていて楽しいものではあるが、折角の古泉いじりの機会をこのまま逃す羽目になるのだろうか。

「心配ない」

まるで俺の思考を読んだかの如く、隣に居た長門が小声でつぶやく。
「これも涼宮ハルヒの作戦」
作戦だと?
「……ハルヒがわざと負けている、というのか?」
「そう」
長門はコクリと頷くと、作戦の概要を語り始めた。
それは――

   つづく