それは、夏休みも終わり、残暑が残る時期のことだった。
「どうですか? これ」
目の前に颯爽とした古泉の甚平姿が映る。
どうかと問われたら似合うとしか言い様がないが、
「じじむさい趣味だな」
と言わざるを得ない。
今日日高校生が甚平なんぞ着るのだろうか?
そもそも、いつこの甚平を買ったんだ?
「それが……心当たりはないのですよ」
心当たりがない?
突然甚平が生み出されたと言うのだろうか。
「何と言いますか……気が付いたら箪笥の中に収まっていたというか」
そりゃ、家族か『機関』の人間が買っておいたやつとかじゃないか?
「それが、誰に聞いても心当たりはないとおっしゃられまして」
だったらお前が買ったはいいが忘れたとかじゃないのか?
「ですが、甚平を買う理由が思い当たらなくて」
まあ、男子高校生が甚平を自費で購入するとは思えんな。
「しかし、何で甚平なんだかなあ……」
「……似合いませんか?」
古泉は少しションボリした面持ちで俺を見つめる。
いやいや、確かに古泉にこの甚平は似合う。
だが、しかし!
「浴衣のほうが脱がせやすい」
「なっ……!」
俺は動揺する古泉をそのまま抱きしめ、
「ちょっ……夏休みの疲れがまだ……」
「まあまあ、こうして久々に会ったんだ。少しぐらいいいだろ」
なんてことを言いながら甚平を脱がしにかかる。
「本当に少しだけですか?」
「少しだけのほうがいいのか?」
古泉は頬を染めて俺から目を逸らしてつぶやく。
「……お任せします」
GOサインだと確信した俺は、そのまま雪崩れ込むように肌を重ねた。

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最終更新:2009年08月16日 07:38