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 目の前のすべてが意味を失っていく。あなたの声だけが僕を満たしていく。
 陰部を何度も擦る涼宮さんのやわらかい手はとても美しいもので、こんな風に乱れている自分は、彼女に姿を認められる資格がない浅ましいものに思える。けれど。
「綺麗ね、古泉くん」
 優しく、穏やかな声。僕にとってのこの世で一番美しい存在に、そんな風に言われるから、僕の何もかもが許されていくような気がした。
「綺麗よ」
 嬉しくて、嬉しくて。嬉しさによるのか、快楽によるのか、判然としないままに頬が熱く息が上がる。こらえようとしていた声も、堰を切ったように声帯を震わす。
「……っ、っぁあ、はあ、あぅ」
「ふふ、いい声ね、好きよ」
「あ、ああ、ふぁ、す、き?」
「うん。好きよ」
 その言葉一つ一つが、荘厳な教会の鐘の音のように僕を震わす。鼓膜も、体も。あからさまに脳裏に浮かぶ羞恥さえ、揺るがして掻き消してしまう。
 声を、出したい。聞いていて欲しい。口を押さえていた手を少しずつ離す。
「ああっ、あう、うぅ、はあ、あぁんん……!」
「気持ち良いの?」
「はいっ、はい、きもち、いいですっ……っふぁぁ……」
 緩急をつけて茎を扱われるたびに、開いた両足が抗いようもなく震える。どんどん固まっていく欲望さえ、涼宮さんは見ていてくれている。浅ましく、酷い僕を。
 あなたの隠したい心をいつも見ている、酷い僕を。
「我慢しちゃだめよ」
 足の間に座り込んで、僕に快楽を植えつけている、僕のたいせつな人の声。その手は僕の体液に濡れて、卑猥な色に染まっている。自分で出したぬめる液体にまとわりつかれて、更に淫靡な高潮へ登ってしまうのが、とても、
「いやらしいのね、古泉くん。可愛いわ」
 いやらしい。
 自分では悪い事と思って浮かべた言葉も、微笑を含めた音として発されると、肯定し得るのだと思ってしまう。褒められたような気にすらなって、だからまた嬉しくなって、もっとして欲しくなる。目を開けている力も無くなり瞼を閉じ、ゆるく腰を揺らすと、「そんなにして欲しいの」と声が降りそそぐ。きれいな声。
「あああ、あ、ぁ、もっと、もっとして……」
「言えたね、いい子ね」
 髪をやわらかく撫でられる感触。ねっとりした液体が、髪や額や頬や唇に付く。自分の精液さえ、彼女の手で齎される物なら恍惚以外の何物にもならない。顔を上向けるように顎の下を撫でられるのと一緒に、性器の先端を強く刺激されて、弾かれる様に目を開いた。
 艶やかな性感の奔流にまたすぐ目を強く閉じてしまったけれど、一瞬見えたあなたの笑顔。それはひどく慈悲深く見えた。
 その慈悲には全てを差し出さなければならない気がした。だから、僕は僕の罪を両唇から搾り出す。
「……はぁ、あ、あ、ごめっ、なさい、ごめんなさいっ……!」
 一度声に出すと、自分の中身がどんどん崩れていく感触がした。自分で自分を支えきれず、手を宙に彷徨わす。
 その手は暖かく絡め取られて、あたたかい背中へと導かれた。
「いいのよ、触っても」
 僕のかみさまは、とてもやさしい人。その言葉に、母か聖母に救いを求めるように、縋り付くように、抱きしめる。ぎゅうぎゅうと密着してもまだ足らなくて、さらに両腕に力を込める。陰部が彼女と僕の体で擦られて、また快楽がやってくる。
「ごめん、なさい、はぁ、ぁんん、ごめん、なさ、あうっ」
「大丈夫よ、大丈夫」
 涼宮さんも、片手を僕の恥部、片手を僕の後頭部に回し、強く触ってくれる。そしてさすってくれる。彼女の手に付着している自分の体液が、僕に満遍なく付いていく。ああ、とても気持ちいい。
 口の中に愛らしい指が入ってくる。多分三本くらい。何一つ疑わず僕はそれを咥え、しゃぶる。口の中と、陰部と、両方から粘つく水分の音がする。そしえ咥内の指は、僕の稚拙な拘束などものともせず、頬の内側の粘膜を撫で上げてくれる。
「んんんっ……!」
 体の奥底がより熱くなる。極限は存在せず、永遠に上がり続ける温度。
 僕の内側で遊びまわっている指に更なる刺激をねだろうと舌で追いかけると、くすくすと笑う声が聞こえた。
「ねえ、そんなに触られるの好き?」
「ふ、うう、うん、」
 唇は彼女の指の形に合わせられているので喋れない。だから意思を伝えようと
必死に首をこくこくと上下させる。その拍子に指が舌を刺激して、その感触に喜びを感じる。
「いいわよ。全部、全部触ってあげるから。あなたのなかまで」
 欲に固まった性器から離れた手に寂しさを覚えたけれど、どこからか何かが自分の内側に入ってくるのを感じて、とても安心する。
 僕はいつもあなたの美しい内側を見ている。それは僕の許されざる罪だった。けれど、あなたが僕の内側を触ってくれるなら。きっと、それは悪いことじゃない。
 異物感はむしろ恍惚を導いてくれる。嬉しくって、つぶっている瞼の力を抜くと、閉鎖空間の幻を見た。灰色の世界において異物だった僕は、僕の罪は、快楽を与えてくれる指に許されていくような気がした。