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 俺作のほうれん草とベーコンのホワイトシチューをゆっくり口にしながら、
テーブルの向かいの古泉は楽しそうに話している。それを聞いている俺も楽しい。

「そうか、長門さんがそんなツッコミを入れるなんてなあ」

「そうなんですよ」

 とりとめもなく、今日一日の事を笑顔で報告してくる。
 機関内では、観察対象のことはフルネームで呼ぶのが通例だ。
しかし、いつの頃からか、俺がSOS団員についてフルネーム呼びしたら、
少し悲しげに顔を曇らせるようになった。会議中などはそんな顔は
一切しないのに、この家の中だけ限定で。
だから俺も、古泉と二人の時には「さん」付けで呼ぶようにした。
すると、やたらと嬉しそうな顔で笑ってくれるもんだから、
思わず抱きしめてしまったのも良い思い出だ。

 そんな古泉の変化は、もちろん上層部などに報告するわけもない。
古泉の監視役として同居し始めた訳だが、いまやただの同棲……
監視役と言うより視姦役になっている気はする。

 機関に古泉が入った時から見守っていた身としては、古泉がこんな風に
変わってきたのは嬉しいことだ。森さんや新川さん、多丸兄弟に伝えたところ、
やっぱり皆嬉しそうだった。愛されてるな、古泉。

「今度は、皆で温泉に行く事になりました」

 そう、にぱーと笑いながら(こんな笑顔は学校じゃしない)パンを千切る
古泉は、あ、と小さく漏らした。そしてバツの悪そうな顔をする。

「イベントごとだから、別途報告書でお伝えすることにはなるのに……
二度聞きになっちゃいますね、すみません」

「いやいやいや、何言ってるんだよ。聞いてて楽しいから、
言ってくれりゃあ良いのに。文字で見るより耳で聞きたいって」

「そ、そうですか?」

 俺より背が高いくせにやたらと上目使いの似合うコイツは、おどおどと
こちらを見やってくる。それに俺は肩をすくめながら笑う。

「そうだよ。まったく、古泉は本当SOS団が好きだなー。俺のことも好きだけど」

「ふぇっ」

 なんだか、古泉からやたらと可愛い声が聞こえたわけだが。本当可愛いな。

「何だ、俺のこと嫌いなのか?ショックだな……やっぱり監視役のヤツなんて
好きになるわけないよな……」

 ションボリと見えるように俯くと、古泉があたふたとうろたえている気配がする。
ああ、こういう俺だけが触れる姿があるから、安心して毎日古泉を学校に送り出せるわけだ。

「あの……」

「うん」

「……す、きです。よ?」

 頬を染めながら言う古泉を徐々に視界に納めつつ、ああ今日の夜も
ベッドで寒さを吹き飛ばしちゃうなあと思うわけであった。

(了)