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その古泉は中学時代、男達に乱暴をされてトラウマになり、それ以来見知った男に対しても仮面を脱ぐことはなかった。
そんな古泉の唯一心を開ける相手、それが俺だ。
機関に入る前から古泉を弟のように可愛がってやった俺、
古泉も俺を兄に対するような態度で慕ってくれている。
だけれど機関に入ってゆったり出来る時間が少なくなり、強制的に親とも分かれる羽目になった古泉は、
俺をもはや兄ではなく親に対する態度をとっていた。
身寄りがなくなった古泉は俺と同居することになって、
俺はより一層古泉の心身の変化、成長過程を見ることが出来た。
だけれど成長する過程で増していく色気、闇の部分からくるどこか儚い空気は俺をも危ない奴にさせようとした。
そんなある日、俺は気付いた「古泉の様子が…おかしい」。
そうだ、数日前から俺との接触を極度に嫌う様になっていたのだ。
指が少し触れただけで腕を引っ込めて「すみません」と謝る、今までそんなことなかったのに異常だ。
反抗期?だが反抗期なら「すみません」でなく「さわらないでください」とか、
それと同じ様な意味を持った視線で俺を睨みつけてくる筈だ。
反抗期にしては、やけにびくびくとしていて、怯えている古泉に俺は違和感を覚え、ついに古泉に問いただした。
数時間の問答の末、やっと古泉が放った一言に俺は愕然とした。
瞳から涙がこぼれ、それといっしょに怒りや後悔や反省や同情の念が溢れ出してくる。
思わず古泉を抱きしめたが、今まで接触を嫌がっていたのに古泉は怯えもしないで、やっと俺に向ける視線に不安の色が消えた。
それから何年かたった今、古泉は高校生になった。だが、俺は忘れていたのだ。
古泉の友達に、古泉を狙っている奴がいる。
それに気付いたときはもう遅くて、俺の携帯が震えていた。
古泉がいるという学校へ俺は急いでチャリを飛ばした。俺は思う。
古泉をつけている不審者とか、おっさんとかばかりに注意していたが、古泉の色気はそんなもんじゃない。
ノーマルな男子でさえガチになってしまう危険なものだったのだ。
そして最近よく古泉と遊んでくれている奴、今思えば、あいつらエロ本とか女子とかアイドルの話は全くしていなかった…。
そんなことを考えているうちに学校につく。全速力で部室棟の裏まで駆け抜ける。
ハッ。そこには古泉を囲む「あの」男たちは何やら古泉のとりあいで揉めているらしかった。
だけれど古泉は隙をついて逃げることが出来ない。何故なら「俺とやった方がいいよなあ?」と全員がしきりに問いただしているからだった。
思わず顔がカッと熱くなって、「古泉!」と叫びそうになった、その瞬間。
「僕を独り占めしたいようですが、つまらないですし僕には…………」
その言葉を聞いた瞬間、俺はやっぱり「古泉!」と叫んでいた。
古泉が途中で自分の言葉を途絶えさせた意味がなくなってしまったが、こんな奴らに屈する必要はねえ。
なんだなんだと男達が狼狽しているうちに古泉をさらって、素早く自転車のもとへの駆け抜ける。
そして俺は自転車の後に古泉を乗せて俺たちの家まで自転車を飛ばすのだ。
家までは自転車でも何分かかかる。
時間が経つにつれて落ち着いてきたのか、見つけた時奥歯をガタガタ言わせて怯えていた古泉も、今では俺の腹に腕をまわし、肩のあたりに顔を寄せている。
自転車をこぐ音だけが静寂に響いていた、その時古泉がしっとりとした口調で言った。

「僕……さっき言葉を途切れさせたと思うんですよ」
独り言のような感じで古泉は続ける。
「それは勿論貴方を庇う為にも途切れさせたのです。貴方も恐らく気付いてはいるでしょうが」
ああ、そうだ、やっぱりお前は頭が良すぎるよ、……こんなことは口には出さないのだ。だが思っていた。
(このことで古泉が何者かに襲われる可能性があるのなら、勿論言うに決まってる。)
「ですが……、それ以外にもあって……、決して庇うためのみに言ったわけではなくて……」
古泉は慎重に言葉を選んで言っていた。その分いつもよりも言葉に重みがあるような、愛想笑いのときの口調とは違っていた。
「…………ふっ」
突然、古泉が薄く笑った。優しくて、何故だかとても悲しい色。
「……僕は、本当に……貴方が好きすぎますね……」
俺は何故だか、何も言えなかった。
自分たちの未来がどうなるのか、古泉はどうなるのか、そんな考えが期待も不安もぐちゃぐちゃに混ざって俺の心をかき乱していたからだ。


(だが、俺は、お前を生涯平和に生きさせてやる)


空は紺色で、星がキラキラと輝いていた。
未来でも俺と古泉は、この空を見ているのだろうか。

-END-