僕は今痴漢に遭っていた。
満員電車で身動きも取れず、声を上げるにも男としてのプライドがそれを許さない。
僕は同性にもそういう目で見られる事は多くて。お尻を軽く撫でられる程度の痴漢なら
幸か不幸か、まぁ多少は慣れているとも言えて。
大体この手合いはそこまでしつこくは無いものだから。
そして僕は男だから、この程度で動揺していては……。

半端な慣れが裏目に出るというのも良くある話で。
いつしかお尻に触れていたその手は、前方へと回ってきていた。
車内の隅に追いやられている僕には、身じろぐ隙間も纏わり付く手を退ける余裕も無く。
制服のジャケットで隠れているのを良い事に、その手はズボンのファスナーにまで
手を掛けてきた。
……これは明らかにまずい。
こんなにも積極的な痴漢は初めてで。
落ち着けと自分に言い聞かせても、僕の心臓はいう事を聞かない。
やがて隙間から手が忍び込み、下着を掻き分け、情け無い事に硬くなり始めている僕自身に触れた。
侵入してきた手が一瞬止まる。
何故止まったのかも想像がついてしまい。ますます自分がふがいない。
「…良い趣味してるな変態」
小さな囁きが聞こえた。
良くはないし、それ以前に僕の趣味では無いんですが。
それに変態というのは男である僕に痴漢しているそちらでしょう。
などと言い返せるはずもなく。
弱い部分を守るはずの体毛は僕のソコには無く。直接肌に指が触れるのが解る。
抵抗も、勿論言い訳も出来ずに、僕はこの場をどう切り抜けるべきなのかを
焦って上手く働かない頭で考えるのみだった。

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最終更新:2007年09月20日 21:16