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「あれ?お前、腕時計どうしたんだ?」
俺は古泉の手首に目がいく。
そこには、いつもはめている厳つい腕時計がなかった。
「ああ、メンテナンスに出しているんですよ。急に故障すると困りますから」
奴はそう言うと、ズボンのベルトにぶら下がっている懐中時計を手に取って
俺に見せる。
「たまには、こういうアナログな時計も悪くないと思いますしね」
「ほぉ……」
これはこれで年代物だな……と思っていると、ふと奴の手首の白い部分が
気になる。
「ああ、これですか」
古泉は俺の視線に気付いたのか、苦笑を一つして言葉を紡ぐ。
「気を付けていましたが、この日光状況で腕時計焼けが出来てしまいましてね。
まあ、土方焼けよりはマシだと思っていますよ」
そして、奴は半袖シャツの袖の部分を少しだけめくる。
確かに腕の部分は肌の色の境目はなかった。
「まあ、男なんだし、そこまで気にする必要はないかもな」
実際、俺なんかは腕時計焼けどころか土方焼け状態だ。恐らく首も危ない。
「それはそうなのですが、一ヶ所だけとなると気になってしまいましてね」
古泉はもう片方の手を口元に当てて微笑を浮かべる。
「でも、腕時計が戻って来ましたら焼け跡も隠れますから」
「ふーん……」
俺は古泉の腕に顔を近づけると、舌先で腕時計焼けをチロリと舐めた。
「……何やっているんですか?」
奴は怪訝そうに問い掛けるが、俺はその声を無視して舐め続ける。
「………」
それから少し経過しただろうか、奴の腕がやや熱を帯びてきた。
「何、顔赤くしてるんだ?」
俺は奴の腕時計焼けから顔を離し、古泉の顔をじっと見つめる。
「え、いえ、その……」
古泉は少しだけ頬を染めて視線を泳がせる。
「変な奴だな」
「……変なのは貴方でしょう。何で腕時計焼けなんて舐めているんです?」
奴のこの意見は最もだが、敢えて答えは言わず、
「何となく、だ」
適当にお茶を濁す。恐らく、古泉も解っているだろうから。
「でしたら、僕が顔を赤くしているのも何となく、ですよ」
奴は少し照れ臭そうに自分の腕時計焼けを見つめる。
「そうか、何となく、か」
「そうです、何となく、です」

そして、俺は古泉の腕時計焼けを舐め続ける。
奴は空いた手を俺の頭に乗せる。。
頭に乗っている手の温もりを感じながら、今はこれでいい、そう思った。