憲法_過去問

憲法総論

1 憲法前文には、国民主権主義、基本的人権尊重主義、法治主義という憲法の3つの基本原理がされている。

× 国民主権主義、基本的人権尊重主義と並ぶ全文に列挙された基本原則は平和主義である。

正 憲法前文には、国民主権主義、基本的人権尊重主義、平和主義という憲法の3つの基本原理がされている。


2 「前文の抽象性と本文各条の抽象性とは、相対的な違いに過ぎない」という主張は、前文の裁判規範性を肯定する見解の論拠となりうる。

○ 否定説は、前文は文言が抽象的で裁判の基準にはならないと主張するが、本文はこれに対する肯定説からの反論である。

3 天皇の国事行為についての責任は内閣が負うが、ここにいう責任とは政治的責任ではなく法的責任である。

× 内閣に対して法的な制裁が加えられるわけではなく、国会による追及などの政治的責任である。

正 天皇の国事行為についての責任は内閣が負うが、ここに言う責任とは法的責任ではなく政治的責任である。


4 憲法は「全て皇室財産は、国に属する」と規定しており、天皇が私的財産を所有することは認められていない。

× この規定は、皇居などの公的性格の強い財産を国有とする趣旨のもので、日用品などについて天皇の私的所有を否定するものではない。

正 憲法は「すべて皇室財産は、国に属する」と規定しているが、この規定は皇居などの公的性格の強い財産を国有とする趣旨のもので、日用品などについて天皇の私的所有を否定するものではない。




基本的人権
5 税理士会による特定政党への政治献金目的での特別会費の徴収決議は、それが税理士に関係する政治的要求を実現するためのものであれば会員を拘束する。

× 凡例は、政党への寄付は投票の自由と表裏をなすもので、会員各自が自主的に決定すべき事項であるとして、徴収決議を無効とする。

正 税理士会による特定政党への政治献金目的での特別会費の徴収決議は、それが税理士に関係する政治的要求を実現するためのものであっても、政党への寄付は投票の自由と表裏をなすもので、会員各自が自主的に決定すべき事項であるとして、徴収決議を無効とする。


6 日本国民と決行し、日本国内に生活の場を有している外国籍のものに対して、海外渡航後の帰国(再入国)を認めないことは、外国旅行の自由を保障した憲法22条2項に違反する。

× 外国人の再入国の権利は保障されていない。なお、日本国民の外国旅行の自由は22条2項の「外国移住の自由」に含まれると解されている。

7 凡例は、外国人に地方選挙権を認める場合でも、その対象は居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものに限られるとする。

○ 永住者等がこれに該当し、一時的な旅行者などを対象に含めることは出来ない。

8 現業・非現業の別や職務内容のいかんを問わず、公務員の政治行為を一律全面禁止とすることは、角に広範な制約を加えるものであるから憲法21条に違反する。

× 凡例は行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼確保の観点から、このような広範な規制を合憲とする。

9 市区町村長が個人や会社からの前科照会に応じることは、対象者のプライバシー侵害となるが、弁護士会からの紹介に応じることはプライバシー侵害とはならない。

× 判例は、プライバシーの侵害行為であって公権力の違法な公使に当たるとする。

10 禁固以上の刑に処せられた地方公務員の失職を定める法の規定は、私企業の労働者に比べて公務員を不当に差別するものであって、憲法14条1項の法の下の平等に違反する。

× そのものの公務遂行に対する信頼が損なわれることなどを理由とする合理的な区別で、平等原則違反ではない。

11 使用者の行った団結権侵害行為に対し、労働委員会が救済命令として、「深く反省する」などの文言が含まれる文書の指示を命ずることは、思想・良心の自由を侵害する。

× 判例は、「同種行為を繰り返さない旨の約束文言を強調する意味を有するにすぎない」として、思想良心の自由の侵害に当たらないとする。

12 A県が宗教法人であるA県護国神社の慰霊大祭に供物料として1万円ずつを数回にわたって県の公金から支出しても、その行為は社会的儀礼にすぎないので、政教分離原則には違反しない。

× 判例は、このようなA県の行為は、「宗教的意義が希薄化し、社会的儀礼にすぎないものになっているとは到底いうことが出来ない」として、公金の支出は政教分離原則に違反するとする。

13 国立大学で宗教に関する講座を開設することは、宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等の効果がもたらすことになるので政教分離原則に違反する。

× 宗教の果たす社会的役割など、宗教に対する中立的な立場で行われるものは政教分離原則に違反しない。

14 営利広告は営業の自由の保証を受けるが、表現の自由の保証は受けない。

× 生活上必要な情報を提供するものとして、表現の自由の保証を受ける。

15 傍聴人が法廷でメモを取ることは、裁判を認識・記憶するための補助的行為にすぎないので、これを禁止することは原則として許される。

× 判例は、メモを取ることは表現の自由の保障の趣旨に照らし十分尊重に値するもので、ゆえなく妨げられてはならないとする。

16 裁判所が、刑事事件の証拠として、報道機関にその保管する犯罪現場の取材フィルムの提出命令を発することは、報道機関の取材の自由を侵害することになる。

× 判例は刑事裁判の公正確保を優先し、取材の自由の侵害には当たらないとする。

17 表現行為に対する事前抑制は、その性質上予測に基づくものとならざるを得ないので、一切認められない。

× 判例は、「現かつかつ明確な要件のもとにおいて」であれば許容されるとする。

18 判例の検閲概念は、客体がおよそ全ての表現物とされていることや行為が「網羅的一般的に内容を審査して不適当であれば発表を禁止する」事などが特徴である。

× 判例は、検閲の対象を「思想内容等の表現物」に限定する。

19 判例は、研究者と学生はともに大学を構成する不可欠の存在であるとして、大学の自治の主体には学生も含まれるとする。

× 大学の自治の主体は研究者であって、学生は直接にはその主体に含まれない。

20 職業選択の自由に対する積極規制については、ほかのより制限的でない規制手段では立法目的を達成し得ない場合に限って合憲とされる。

× 規制が著しく不合理であることが明白でない限り合憲とされる。

21 健保29条1項の財産権の保証には、ここの財産権の保証と私有財産制度の保証がともに含まれている。

○ 私有財産性の保証はいわゆる制度的保証である。

22 財産権に対する制限が「特別の犠牲」に当たる場合でも、法律に保証規定がなければ損失補償を請求することは出来ない。

× 算定が可能なので、憲法を直接の根拠として補償を請求することが出来る。

23 土地収用法に基づいて土地を収用する場合でも、その保証は相当な額の保証であれば良く、完全な保証である必要はない。

× 土地収用法に基づく収容の場合は、完全な保証でなければならない。

24 憲法31条の適正手続きの中には、告知と聴聞を受ける権利の保障までは含まれない。

× これらの権利の保障も含まれる。

25 刑事被告人には、公平な裁判所で裁判を受ける権利が保障されているが、ここで公平な裁判所とは判断内容の公平さのことをいう。

× 裁判所の構成などの制度的な公平さをいい、判断内容の公平さまでは含まれない。

26 無罪の判決確定後に新たに有罪であることの確実な証拠が発見されたときには、無罪とされた行為について改めて起訴や処罰が出来る。

× 被告人の負担を考慮して起訴は1回の手続きで終了すべきものとされており、たとえ有罪の確実な証拠が発見された場合でも、再度の起訴や処罰は出来ない。

27 裁判手続きとして公開・対審・判決が必要とされるのは、権利義務の確定を行う純然たる起訴事件のみに限られず、非訟事件についてもこれらは必要である。

× 公開・対審・判決が必要とされるのは純然たる訴訟事件のみに限られる。

28 複数の公的年金の受給資格を有するものに対して供給調整を行うことは、資格を有するにもかかわらず全額の給付が受けられないという不合理な差別を与えるものであって、法の下の平等に違反する。

× 判例は、供給調整は立法府の裁量の範囲内にある事項で、不合理な差別には当たらないとする。

29 国は子供自身の利益のために必要かつ相当と認められる範囲において教育内容を決定する権能を有する。

○ 

30 労働者の「組合に加入しない自由」を保証する見地から、団結権の保証の中には、一定の限度で労働者に団結への加入を強制する組織強制の許容までは含まれていない。

× 組織強制の許容が含まれ、その範囲で団結しない自由は制約を受けることになる。

31 正当な争議行為に対しては不利益を課すことが出来ないが、ここにいう不利益とは損害賠償請求と刑事罰の2つのことである。

× 解雇等の不利益処分という不利益も含まれる。



統治機構

32 いずれかの議員で総議員の4分の1以上の要求があれば、議長は臨時会の招集を決定しなければならない。

× 臨時会の招集の決定は内閣の権能である。

33 国会議員が議員の活動として職務上行った発言・評決については免責特権が認められているので、院内でこれを懲罰の対象とすることは許されない。

× 免責特権について、憲法51条は「院外」で責任を問われないと規定しており、院内で除名等の懲罰の対象とすることは可能である。

34 参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間をのぞいて30日以内に議決しないときは両院協議会の開催が義務づけられている。

× 予算の議決で両院協議会を開く必要があるのは、両議員の議決が異なった場合のみである。本文のような場合には、そのまま衆議院の議決が国会の議決となる。

35 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で総議員の3分の2以上の多数で再可決したときは法律となる。

× 出席議員。議事が開かれている場合=出席議員(憲法改正の場合は総議員)、開かれていない場合(例:臨時会招集の要求)=総議員と覚えておく。

36 緊急集会においてとられた措置は臨時のものであり、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がない場合には、遡及的に効力を失う。

× 同意が得られない場合、その措置は「将来に向かって」効力が消滅する。

37 国政調査権の行使で、 強制力を伴う調査方法として議員に認められているのは、証人の出頭、証言、記録の提出の3つだけである。

○ 

38 議員の被選挙権の有無に関する事項は、資格争訴の裁判の対象となるが、両議院の議員または地方議会の議員との兼職禁止に違反しているかどうかは、その対象にはならない。

× 兼職禁止規定の違反事実も議員の資格に関する事項であるから、資格争訴の裁判の対象となる。

39 内閣総理大臣は必ず文民でなければならないが、その他の国務大臣は必ずしも文民である必要はない。

× 内閣総理大臣その他の国務大臣は、すべて文民でなければならない。

40 国会議員である国務大臣の議員辞職により、国務大臣の過半数が国会議員でなくなった場合には、内閣は総辞職しなければならない。

× 国会議員である国務大臣を任命して国会議員でない国務大臣と入れ替えれば良く、総辞職する必要はない。

41 内閣総理大臣が国務大臣を罷免するには閣議に諮る必要はないが、国務大臣の訴追に同意を与える際には閣議に諮る必要がある。

× いずれも内閣総理大臣の専権であるから、閣議に諮る必要はなく、内閣総理大臣が単独でこれを行いうる。

42 内閣総理大臣が国会議員であることは、内閣が成立するための用件であるが、存続するための用件ではない。

× 成立と存続のいずれの用件でもある。それゆえ、内閣総理大臣が国会議員たる地位を失った場合には、内閣は総辞職しなければならない。

43 法律および政令には、内閣総理大臣の署名と主任の国務大臣の連署が必要であり、これを欠く法律や政令にはその効力が認められない。

× 直接の執行責任者たる主任の国務大臣が署名し、指揮監督すべき立場にある内閣総理大臣が連署する。また署名や連署は執行責任を明らかにするためのものであるから、これを欠いても法律や政令の有効性に影響はない。

44 衆議院議員総選挙後の国会で新たに内閣総理大臣が指名されたときには、前内閣は総辞職しなければならないが、新たな内閣総理大臣が任命されるまでは、引き続きその職務を行う。

× 総辞職は国会召集時に行われる。なお、後半(任命時まで)は正しい点に注意。

45 内紛のために宗派の管長から僧籍を剥奪され、寺の明渡しを求められた者が起こした住職たる地位の確認訴訟で、宗教協議の判断が訴訟の帰趨に不可欠の場合であっても、裁判所は審判権を有する。

× 法律上の争訴に当たらないので、裁判所は審判権を有しない。

46 弾劾裁判においては、弾劾裁判所の判断が終局的なものとされるのが原則であるが、弾劾裁判所の法の適用に明らかな誤りがある場合に限り、例外的に最高裁判所への出訴が認められる。

× 弾劾裁判所の判断が終局的なものであり、これについて例外はない。

47 裁判所が裁判官の全員一致で、公の秩序を害する恐れがあると決した場合には、出版に関する犯罪の対審であっても公開しないでこれを行うことが出来る。

× 出版に関する犯罪の対審は非公開に出来ない。

48 下級裁判所の裁判官は、弾劾裁判と執務不能の裁判によって罷免されるが、最高裁判所の裁判官が罷免されるのは、国民審査の場合に限られる。

× 弾劾裁判や執務不能の裁判によっても罷免される。

49 法律や命令、処分だけでなく、裁判所が行った裁判も違憲審査の対象となる。

○ 

50 納税義務者や税率等の課税要件は必ず法律で定めなければならないが、税の賦課徴収の手続きは、政令のみでこれを定めることが出来る。

× 租税法律主義に基づき、税の賦課徴収の手続きについても法律で定めなければならず、政令のみでこれを定めることは出来ない。

51 法律中に規定がない場合には、それについて条例で規制を設けることについて、特段の制約はない。

× 規定の欠如がいかなる規制も施すことなく放置すべきとする趣旨である場合には、条例による規制は許されない。

52 公務員には憲法尊重擁護義務が課せられているので、特別職の公務員である国会議員が憲法改正を主張するようなことは、およそ認められない。

× 国会が改正を発議できる以上、改正の主張は可能である。
最終更新:2009年06月23日 15:24
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