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「天地明察」滝田洋二郎監督(エーチームグループ/エーチーム所属)


時代に挑む気概を描く


●「天地明察」滝田洋二郎監督…時代に挑む気概を描く


公開中の「天地明察」は滝田洋二郎監督の新作だ。2009年に「おくりびと」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞して以来の監督作。

江戸時代に暦作りに挑んだ安井算哲(後の渋川春海)の物語に込めた思いを聞いた。

「早く撮りたかった。感じるものがあれば、題材は何でもいいと思っていた」

アカデミー賞受賞後、初めて取り組む作品が注目されるのは当然だが、「やってみたいと思わせる、引っかかる何かがある」という選択基準は、受賞後も変わらない。冲方丁(うぶかたとう)のベストセラー小説「天地明察」の何が、引っかかったのか――。

「『息吹』ですよね」

江戸前期。太平の世が続く時代に、天文学や数学、暦学に心を奪われた安井算哲(岡田准一)は、改暦という大事業に挑む。暦をつかさどる朝廷に反旗を翻すことになるが、新しい時代を切り開こうという気概を、原作では「息吹」と表現している。

「安定した時代というのは、既得権を手放さない人たちがいて、何かを始めようとすると、必ず拒否されてしまう。江戸時代もそうだし、現代も社会の構造は似ていると思う。だからこそ、何かを始めようとする息吹を感じる映画を撮りたいと思った」


算哲だけではない。本因坊道策(横山裕)は囲碁の世界、関孝和(市川猿之助)は算術の世界に新風を吹き込もうとする。「算哲の妻になるえん(宮崎あおい)も自分の意見をきちんと言える人。そういうまなざしをもっている若者たちの青春映画にしたかった」

囲碁、算術、暦学と、難しそうな題材を青春映画に仕立てる手腕は、監督ならでは。「情報量が多いから、気になって説明し始めると、あっちもこっちも必要だとなる。シンプルに分かりやすく絵にしながら、人間ドラマに仕上げていくことだけを考えました」

「映画を撮るのは、お客さんに見てもらうため」という作り手としての心構えも、受賞の影響を受けていない。「こびるわけではないけれど、自分の思うことをちゃんと観客に示して、いい会話をしたい。まずは、観客にどう感じてもらえるかを考えないと」

多作も映画監督としての証しだ。「僕の場合、何もしなかったら、あんた誰よ、みたいなもんですから。常に、映画と一緒に呼吸していたいですね」


●『天地明察』滝田洋二郎監督、「これは現代日本の縮図です」


「金環日食」に始まり「金星の太陽面通過」、「金星食」と非常に珍しい天文現象が起きた、まさに「天文ゴールデンイヤー」の2012年。400年前の江戸時代に、将軍に囲碁を教える名家の息子として生まれながら、星や太陽を観測し、日本初の暦作りに挑み、日食が起こる日も言い当てた安井算哲(後の渋川春海)の物語を、『おくりびと』の滝田洋二郎監督が映画化した。

『天地明察』の原作は、2010年本屋大賞第1位となった冲方丁(うぶかた・とう)の同名小説。安井算哲を岡田准一、妻えんを宮崎あおい(※「崎」は旧字。「大」→「立」)、算哲に重要な教えを授ける天才和算家の関孝和を市川猿之助。算哲のライバルにして親友であり、囲碁界の革命児・本因坊道策を横山裕、天下の副将軍・水戸光圀を中井貴一、そして算哲に改暦事業を命じる保科正之を松本幸四郎が演じる。

江戸時代前期、大きなずれが生じ始めていた暦。この時代、暦は多くの日本人の生活の基盤である以上に、宗教、政治、経済にまで影響を及ぼしていた。暦を司る者が国を治めるというほど重要な意味を持っており、その莫大な利権を朝廷が独占していた。幕府が時を司ってこそ、真に君臨できると考えていた会津藩主の保科正之は、安井算哲に今の暦の間違いを正し、新たな暦を作るという改暦事業を任せる……。

――かつて日本には、こんな凄い人たちがいたんだと、勇気付けられる映画でした。今のような不安な時代だからこそ、安井算哲のような男を描くことで、日本を元気にしたいということは意識されていたのでしょうか?

その意識はありましたね。鎖国をして情報が入ってこなかった時代にも関わらず、算哲も関も、現代に匹敵するレベルに達する天才だった。コンピューターも情報もない中で「ケプラーの楕円の法則」に近いところまで自力で到達していたし、天体そのものが、まだまだ動いているんだということに気付いたことも凄い。精度でいえば、今のグレゴリオ暦に近い、相当高いレベルまで行っていた凄い人たちです。

彼らは未知なる天体に裏切られ続けますが、それでも諦めずにやり通したことも素晴らしい。また、人は一人で生きているわけではなくて、一所懸命に生きていると必ず誰かに助けてもらえるし、あるいは自分が誰かを支えて、支え合ったりもするという関係も良いですね。

一番好きなのは時代背景です。天下泰平といっても戦がなくなっただけで、朝廷との関係も含め、これから本当に江戸幕府は、徳川の時代は続いていくのか。そんな時に、国を思う人がいたということ。この時代は人材を発掘しなければ、次の世代に託せない時代です。そんな時代に保科正之や水戸光圀のように人を育て、信じ、大事を任せるという大きな決断をする人がいたのは素晴らしいことです。

算哲は暦を、道策は囲碁を変えようと命を懸ける。腹切りになるかもしれないことをやるわけです。関は甲府藩のお抱えで、実は彼が授時暦を担当していたけれど、自分の算術を極めようと、一人で研究に没頭する清貧の学者の道を選ぶ。えんという女性はあの時代にありながら自分の考え方を持ち、算哲に思いをちゃんと伝え、サポートも出来る。この算哲、道策、関、えんという4人の青春映画に収斂しながら、その成長物語と、彼らを見守る保科と水戸の2人の姿を描いています。

大いなる日本的な公家、よく見えない聖域……といった構造は多少シンプルにはしましたが、現代に置き換えられることばかりです。この映画を観ると、多分皆さん思い当たるところが多々あると思います。今の日本にも“聖域っぽい人”“既得権を離さない人”もいれば、訳の分からないものもたくさんある。足らないのは、保科と水戸のような人。彼らのような人がいないから、政治も経済も含めてこんな日本になってしまったと。時代劇に見えて、この映画は現代日本の縮図です。


●監督・脚本:滝田洋二郎

1955年富山県高岡市(旧福岡町)生まれ。
『コミック雑誌なんかいらない!』(85)『木村家の人びと』(88)『陰陽師』(01)『壬生義士伝』(03)など監督。
『おくりびと』(08)が米国アカデミー賞外国語映画賞を受賞。
エーチームグループ/エーチーム所属


アイドルグループV6の岡田准一(31)が主演する映画「天地明察」(滝田洋二郎監督)の大ヒット御礼舞台あいさつが1日、東京・新宿ピカデリーで行われた。
9月15日の公開からこの日までに観客は55万人を突破した。岡田が客席に見た回数を尋ねると9回という人もおり、「この作品に関われたことを誇りに思う」と、あらためて本作への思いを語った。