日本が世界の頂点に立った日。苦しみを乗り越え、ドイツに咲いた満開の“なでしこ”
投稿日時:2011/07/18(月) 13:31
[写真]=千葉格
「信じられないです。最後まであきらめずに戦った結果。最後まで走り続けた。全力を出し切りました。金メダルを持って帰ります」
大会MVPと得点王を獲得した澤穂希の言葉どおり、最後まであきらめず、最後まで走り続け、全力を出し切った末に、なでしこジャパンは世界一の栄冠をつかんだ。
2度の劇的な同点ゴールの末にたどり着いたPK戦。緊迫感を漂わせるアメリカとは対照的に、なでしこジャパンのメンバーは笑みを浮かべていた。世界一を懸けた最高の舞台で、最高の相手と最高の戦いができる喜び。勝利はこの瞬間に約束されていたのかもしれない。
試合後、「小さな娘たちが粘り強くやってくれた」と“娘”たちの戦いをたたえた佐々木則夫を含め、日本の全メンバーが「夢の実現への過程」を楽しんでいるように見えた。
自著『ほまれ~なでしこジャパン・エースのあゆみ』に記された澤の言葉を振り返ろう。
☆ ☆ ☆
「私の座右の銘を紹介したい。『夢は見るものではなく叶えるもの』。どんな人にだって、夢や目標はあると思う。その目標や夢が、どれだけ大きいか小さいかなんて、関係ない。その人の夢の価値は、他人が決めることではないからだ」
「その人がやりたいと思うことをやればいいし、叶えたいと思う夢に向かって突き進むべきだと思う。自分の夢や目標を達成したときは本当に嬉しいし、叶えられたからこそ、また次の夢や目標を持つことができる」
「私もいろいろな目標を達成してきたけれど、実現するのは、決して楽な道ではなかった。いろんな思いがあったし、苦しい思いもした。ただ、そういう苦しみを乗り越えたあとは、いいことが待っているし、その達成感は苦しみの何倍にもなって自分にかえってくる。そして、苦しい思いをすると、同時にもっとやれる自分が見えてくる」
「何をやるにしても壁はある。壁にぶつかるからこそ、人はがんばれるんだと思う。最初からいいことなんてない。いいことも悪いことも知っているから、人として成長できるんだと思う」
☆ ☆ ☆
澤の言葉は本当だった。「苦しみを乗り越えた」なでしこジャパンには、「いいこと」が待ち受けていた。世界一に輝いた“なでしこ”たちの言葉には、苦しみを乗り越えた喜びと達成感が満ち溢れている。
■澤穂希
「ずっと世界一を目標に戦ってきた。まだ現実を受け止められないけど、本当にうれしい。5回目にしてやっと結果を出せました。日本のみなさん、応援ありがとうございます」
■宮間あや
「ほっとしています。みんなが頑張った結果なので、みんながみんな最優秀だと思っています。(勝利の瞬間は)自分はアメリカ代表の選手にも友人が多かったので、落ち着いていました。(その後は)人生のうちで盛り上がるところはここしかないので、盛り上がりました」
「相手に支配される時間が多かったので、これをステップに新たななでしこはジャパンを作っていきたい。たくさんの先輩たちがいてこそだと思うので、みんなにありがとうございましたと伝えたいです。まだまだ大変ですが、復興に向けて日本のみなさん、頑張っていきましょう」
■安藤梢
「信じられないです。ありがとうございます。なでしこジャパンをドイツにも世界にもアピールできたと思う。それを目標にやってきたので良かった」
「一人ひとりが最後まであきらめなくて、最高でした。チームのために、一人ひとりしっかり戦えたと思うし、自分も走り回って戦いました。自分たちの姿を見て、子どもたちが夢を持ってくれたらいいと思う」
■丸山桂里奈
「(表彰台からの景色は)今まで生きてきた中で一番いい景色でした。信じられない気持ち、夢みたいだという気持ちだった。みんなのところに思いっきり駆け寄っていった。みんなでひとつになって勝ち取ったっていう大会だったので、本当に良かったと思います。(チームメートは)最高の、かけがえのない存在」
「震災以来、日本が苦しい状態でしたが、復興へ向けて立ち上がった人たちを見てパワーをもらった。それが日本を優勝に導いたと思います」
■海堀あゆみ
「優勝の実感はわかないけど、すごいことをやってのけたのかなと思う。トロフィーは触らせてもらいました。(優勝は)テレビの世界のことだったので、本当に信じられないです」
「2失点していたので、PKは絶対に止めようと思っていた。PKの前には自分とみんなを信じてしっかりやってこいと言われました。アメリカはうまかったけど、みんながそれ以上にがんばった結果だと思う。夢に見ていた優勝だし、これまで自分に携わってくれた人たちのおかげだと思うので、感謝の気持ちでいっぱいです」
■鮫島彩
「実感はあまりわかないです。素直にうれしい。全員で守り切れた。みんなで勝ち取った優勝だと思います」
「朝早くにもかかわらず、たくさんの人が一緒に戦ってくれた。本当にありがとうございます。この場に立っているのは、これまで携わってくれた人のおかげなので感謝したいです」
■熊谷紗希
「うれしいのとびっくりしているのが半分ずつぐらいです。PKは失点していたのもあったし、前線の選手を信じてずっと守って、ここまで残してくれていたので、自分の足で決めたいと思っていた。思い切り蹴るだけでした」
「(勝利の瞬間は)蹴った後、勝ったかどうかはみんなの様子を見ないと分からなかったので、ちょっと一歩乗り遅れましたけど、本当に決まってよかったです。(表彰台からの景色は)最高でした」
「夜中から応援ありがとうございます。たくさんの人の応援があってこそ、ここまで勝ち上がれたので感謝しています。これから次のステップに向けてみんなで頑張りたいです」
「(金メダルの感触は)一番輝いている色だし、そうそうかけられない色なので、本当にうれしいです」
■永里優季
「大会を通していろんなことがあって、自分も苦しい時期があったけど、こうしてみんなと優勝というものを喜び合えたことは、自分にとって大きな財産になりました。みんなひとつになって戦うという意識がすごく強くて、良いチームだなと思います」
「(優勝の瞬間は)やったんだという実感と、本当にやったのかという感じが入り混じった感覚でした。ワールドカップを優勝したことで、日本の女子サッカーが注目されると思うんですけど、これからは自分たちの世代が重要な役割を担っていくと思う。これから日本のサッカーがどうやって発展していくかを担っていく責任を感じています」
■阪口夢穂
「こういう舞台で借りを返せてうれしい。ピッチの中でも『あきらめるな』という声が飛び交っていた。後半の途中から相手も疲れてきたし、澤さんを前に出して自分が守るというつもりだった」
なでしこの花言葉は「純愛」、「大胆」、そして「勇敢」だというが、サッカーと仲間、周囲への「純愛」を貫き、ワールドカップ決勝という大舞台で「大胆」にプレーし、アメリカという強敵に対して最後まで「勇敢」に戦い抜いた“なでしこ”が、ドイツの地で世界一の満開の花を咲かせた。
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