原発被災地を国有化し最終処分場を! 国会で爆弾提言した日本維新の会・中田宏代議士の真意とは/伊藤 博敏
現代ビジネス 4月18日(木)8時5分配信
中田宏代議士の公式HPより
「それでは、原発のその後について、今日の本題、私にとっての本題に進めて行きたいと思います」
4月5日の衆議院予算委員会でこう切り出したのは、日本維新の会の中田宏代議士である。鳥インフルエンザ対策などについて、自身が前横浜市長として苦労した体験談を交えながら質問した後、持ち出した「本題」は、誰もが感じながら言い出せない「帰れない被災地の現実」についてだった。
除染にどれだけの意味があるのか ***
「先に、言いにくいことを申し上げます。私は、どこまで線を引くかはともかくとして、この場所はもはや戻るべきではない。そういうエリアとして国が決断をして、そして当該被災地の皆さんの生活支援をしていくべきだと思います」
帰れない理由として、これまでの累計で1兆2,875億円を投じながら進んでいない除染をあげた。
確かに、作業は進めているものの、線量はなかなか下がらず、いったん下がったとしてもまたすぐ元に戻る。その理由のひとつに、住宅から20メートル以上、離れている森林について、除染を除外していることがある。
中田氏はこう続けた。
「裏山に除染がなされていない森林があれば、なかなか人はそこに戻りたいとは思いませんね。風が吹けば葉っぱは飛んでくるわ、土は舞い上がってくるわ、雨が降れば土砂は流出してくるわというところに、お宅のエリアは大丈夫ですからといわれたところで、戻りたいとはなかなか思わないわけであります」
例として挙げたのは、2011年9月に緊急時避難準備地区を解除され、昨年2月に帰村宣言をした川内村である。1年経っても、帰村者は4割。その大半は50代以上の中高年層で、子供のいる家庭は、放射線量を怖れて、戻るに戻れない。
除染にどれだけの意味があるのか。
線量が上がればまた作業を繰り返す。それでも子供への影響を怖れて帰らない人が多い。それならば、国が土地を買い上げ、次の生活地での生活支援をした方がいいのではないか、という思いを持つ人は、実は少なくない。
「誰かが言わなけれないけないことを言うのが政治家の役割」 ***
だが一方で、そうした"本音"は「故郷へ帰りたい」という思いを持つ被災者がいるという現実の前でかき消されている。
中田氏はそこに踏み込み、さらに最終処分場問題にも言及した。
「この地域に人が住めないということをもうハッキリさせて、私は、放射性廃棄物の最終処分の場所にする、これを政治はどこかで決断するべきだと思います」
要は、原発被災地の土地を一定範囲、国が買い上げて、そこに最終処分場を建設すべきだという提言だ。
これもまた誰も言い出せないが、誰もが感じていることだ。
「福島県を最終処分場にしない、だから『仮置き場』の中間貯蔵施設を設置する」
この「中間」という名のごまかしも、多くの人が感じていよう。福島が「中間」として「最終」はどこになるのか。どの自治体が引き受けるというのか。
中田氏は、数字でその矛盾を明らかにした。
「福島県内の除染等によって生じる汚染土壌や汚染廃棄物の総量、これは1500万立法メートルから3100万立法メートルということで見積もっていることであります。1500万立法メートルというのはどのくらいかといいますと、10トンのダンプカーでおよそ200万台に達するという凄まじい量になるわけです」
さらに、仮に東京都がお台場で最終処分場を引き受けたとして、1日200台で運んで27年、1万日かかると計算、運送道路沿いの住民、東京都住民の反対を考えた場合を併せ、汚染土移動の非現実性を訴える。
国会という自由な発言が許される場ではあるが、「被災者の気持ちを考えているのか! 」といった批判が寄せられることが予想された。だが、中田氏は「誰かが、言わなけれないけないことだった。そして、それを言うのが政治家の役割です」と、言い切る。
被災地の国有化と最終処分場の建設 ***
否定的な声は皆無に近く、「質問直後からウチの事務所や党本部に、電話やメールやFAXで反響が寄せられ、『よく言った』という声が大半だった」(中田氏)という。
事務所宛てに入った次のメールが、その声を代表している。
「政治家の皆さんが、国民、この場合は被災地の住民に、気にいられるような発言をされ、本当のことを言わないことに、私はいらだっていました」
私もそのうちのひとりである。
原発事故から約2ヵ月後、本誌で「試算では費用1兆4,100億円 菅政権が言えない『原発被災地の国有化』というタブー」という記事を書いた。
「収益還元法」で福島原発の半径30キロ圏内を試算、約1兆4,100億円かかるのだが、それだけ費やしても購入した方がいいのではではないか、と訴えた。
もちろん、生活支援もあって、その金額で収まるわけではないが、?国の責任を明確にし、?いつ帰れるかわからない不安に比べると、被災者に前向きな希望を与えられ、?国有地となった広大な土地を多目的に使用できる、といったメリットが考えられた。
その?に含まれるのが、太陽光、風力といったメモリアル的なエネルギー対策の場所にすると同時に、汚染土や廃棄物の最終処分場として利用することだった。
それでなくとも除染作業には、手抜き除染や作業費のピンハネなど多くの問題が指摘されており、「表層の土地を除去、屋根や壁を洗い流すだけの除染は、一時的に線量を下げるだけで抜本的な効果は期待できない」と、断言する専門家もいる。
国有化と最終処分場の建設---。
機は熟した。中田氏の提言を、真剣に論議すべきではないだろうか。
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最終更新:4月18日(木)8時5分