<福島第1原発>核燃料損傷が進行か 線量計が振り切れる
毎日新聞 3月27日(日)22時26分配信
陸上自衛隊がヘリで撮影した福島第1原発=2011年3月27日、防衛省提供
東京電力福島第1原発の1~4号機で放射能を帯びた水がタービン建屋の床にたまっていることが明らかになった。特に2号機は、水の表面での放射線量が毎時1000ミリシーベルト以上と、一般人の年間被ばく限度の1000倍を1時間で超えてしまうほどの高い値だ。原子炉内で核燃料の損傷が進み、炉内の水が漏れたとみられている。【西川拓、酒造唯】
【2号機で高濃度の放射性物質】排出作業を中断
第1原発で使われている「沸騰水型軽水炉」は、原子炉内で核燃料の核分裂反応によって出た熱で水を沸騰させ、その水蒸気を直接タービンに送り込んで発電する。元々、放射性物質を含んだ水蒸気でタービンを回す仕組みだが、通常は外に漏れない。
出光一哉・九州大教授(原子力工学)は「放射性物質の濃度から見て、使用済み核燃料プールの水ではなく、原子炉圧力容器内の水の可能性が高い。圧力容器からタービン建屋への配管には、途中にポンプや計測装置があり、それらの継ぎ手などから漏れたのかもしれない」と指摘する。
東電は、復旧した外部電源を使い、タービン建屋に隣接する淡水タンクからポンプで原子炉内に注水して炉内の冷却を試みようとしている。現在の注水ルートより高い冷却効果が期待できるが、2号機ではポンプが故障しており、交換が必要だ。
しかし、タービン建屋内の高濃度汚染水のため、27日夜現在、作業は中断したままだ。東電は、汚染水をポンプで復水器に排水して除去する計画だが、現場では線量計が振り切れ、正確な放射線量も分からない状況で難航している。
1号機は27日午後から排水量を3倍に増やし、毎時18トンを復水器に排水しているほか、3、4号機は排水方法を検討している。出光教授は「放射性物質の吸着剤などを使って、いったん放射線量を下げてから排水する手段が考えられる。除染して作業しやすくし、炉内の冷却を急ぐ必要がある」と話している。
◇誤情報9時間半
福島第1原発2号機のタービン建屋で見つかった水に含まれる放射性物質の濃度を巡り、東京電力と経済産業省原子力安全・保安院の27日の発表は大混乱した。午前11時前に保安院が発表した「1立方センチ当たり29億ベクレル」というヨウ素134の値は、通常運転中の原子炉内の水の1000万倍という超高濃度。東電は正午過ぎには誤りに気付きながら、訂正を出したのは午後8時半ごろで、9時間半にわたり誤情報を流し続けた。
ヨウ素134は半減期が53分と短い。もし高濃度で検出されれば炉内で核分裂反応が続いている可能性を示唆する一大事だ。実際は、核分裂に伴って放出される中性子が検出されておらず、臨界の可能性は極めて低い。
伊藤哲夫・近畿大原子力研究所長は「あり得ない値だ。専門家が見れば誰もが疑問に思うようなデータをそのまま発表すれば、国民の不信感が増大する。東電や国には、正確なデータを速やかに公表していくよう改めて求めたい」と話す。
東電の正午過ぎの会見で、担当者が分析の難しさに言及しながら、誤りに触れなかったことについて「その時点で知っていたのでは」との質問が続出。武藤栄副社長は「再評価の必要性があるとみて、そう申し上げた。もう少し分かりやすく表現すればよかったかと思う」と釈明した。【山田大輔、須田桃子】
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最終更新:3月28日(月)2時15分