中国人は竹島を、韓国人は尖閣をどう見る? 意外と多い「日本支持」
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2012/09/01 19:12更新
収まる気配のない尖閣諸島、竹島をめぐる騒動。視点を変え、中国人は竹島を、韓国人は尖閣をどう見ているのか、それぞれのインターネットの書き込みから探ってみた。日本敵視で中韓は歩調を合わせていると思われがちだが、中国で「竹島は日本の領土」、韓国で「尖閣は日本のもの」という声が意外と目につく。そこからは、中韓の微妙な関係と互いに抱く本音も浮かんでくる。
■「釣魚島は中国のもの、竹島は日本のものだ」
中国の最大手検索サイト「百度(バイドゥ)」には、ネットユーザーがさまざまな事柄に関する質問とそれに対する答えや意見を自由に書き込む「百度知道」という人気コーナーがある。
そこには、「竹島は誰のもの?」という質問が複数、掲載されている。
それに対して「1905年に日本の島根県に編入されたが、52年に韓国側が『李承晩ライン』を宣言して主権を行使。日韓双方が領有権を争っている…」などと客観的に事実経緯を記した答えが意外に多い。
「最もいいのは両国が争っていること。そうでなければ連合して中国に対抗してくる」といううがった見方や「韓国のものだ」という意見があるが、目につくのが「日本のものだ」という声だ。
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「百度」のコミュニティーサイトには、竹島問題を主題にしたものもある。書き込みの一つは、「(韓国人は)中国と関係する資料を用いて独島(竹島)が韓国に属していると証明する。つまるところ、自分に都合のいいものを引用するが、朝鮮の宗主国、明朝の海図文献には竹島は日本に属すると記載されている」と指摘した上で、「釣魚島は中国のものだが、独島(竹島)は日本のものだ。恥知らずの韓国人は出ていけ!」と韓国批判と日本支持を打ち出している。
これに対して「親日的だ」という批判も書かれるが、それに再反論して「国際法的に言って竹島は日本のものだ」「世界に独島なんてない。あるのは竹島だけだ」というコメントがいくつも続く。
■ネットの8割が日本を応援?
こんな書き込みもある。
「竹島問題では、8割のネットユーザーが日本を支持する。韓国に声援を送る中国人は1割に過ぎない」
8割は誇張し過ぎと思うが、その理由として以下のように記されている。
「地震で日韓は全く違う態度を取り、中国人の韓国人に対する印象が非常に悪化した。加えて文化衝突や『白頭山』の嘘などでますます多くの中国人が韓国は友好国ではないと感じるようになった」
これには背景の説明が必要だろう。中国で「地震」と言えば、2008年の四川大地震のことだ。
真偽は不明だが、地震直後、韓国人がネットに「ざまを見ろ」と書き込んだという話題が中国のネットに広がり、「炎上」したことがあった。反対にいち早く救助隊を送った日本に対しては「謝謝(ありがとう)! 日本」という書き込みが相次いだ。
震災後に開催された北京五輪の野球の日韓戦では、中国人観衆が「加油(頑張れ)! 日本」と一斉に日本に声援を送る現象も起きた。
文化衝突と言っているのは、中国のネットに広がる「韓国人は何でもかんでも韓国発祥だと歴史を歪曲(わいきょく)している」という批判を指すものだ。韓国で、漢字や漢方医学、風水思想は「韓国発祥だ」という意見が飛び出すたびにこれが中国のネットで誇張されて伝わり、韓国批判が繰り広げられてきた。
「白頭山」は中朝国境にまたがり、朝鮮民族の間で聖なる山とされる存在。中国側では「長白山」と呼び、歴史的背景や“領有権”をめぐって中朝韓で論争が続いている。
そのため、竹島問題と関連付けて「竹島は古代から韓国の領土だというロジックに照らせば、長白山も古代から韓国領土になってしまう」と自国の領土紛争への波及を危惧する書き込みも見られた。
つまり、中国のネットユーザーにしてみれば、韓国人との間にさらに熾烈(しれつ)な衝突があり、「韓国人憎し」の感情から日本支持になびいているのだ。
「私は日本が好きではないが、韓国人をもっと敵視している」という「竹島は日本領」支持者のコメントがそれを如実に示している。
■「尖閣」には冷めた目線の韓国
一方、韓国人は「尖閣」をどう見ているのか、韓国最大手の検索サイト「ネイバー」の質問コーナー「知識イン」の書き込みを拾ってみた。韓国で「百度知道」に相当するサイトだ。
尖閣問題についての質問に「琉球諸島の住民がここに工場などを建てたこともあった。第二次世界大戦後、米国の施政下に入ったが、1972年に沖縄とともに返還された」という日本側の主張と、「1372年の明朝時代に発見した」などと中国側の言い分を両論併記した答えが多い。
「尖閣諸島は現在、日本が実効支配中です。中国領土ではなく、日本の領土です」と日本領であることを断言する書き込みも見られた。韓国が実効支配している竹島は「韓国のものだ」という主張の裏返しのようだ。
韓国で尖閣問題は、竹島と関連付け、「国際司法裁判所に提訴しようとするなど韓国には高圧的だが、尖閣に上陸した活動家らをすぐ送還するなど中国には低姿勢だ」と日本のダブルスタンダードを批判する文脈でよく取り上げられる。
しかし、尖閣の領有権そのものについては、問答無用に日本の主張を切り捨てる竹島問題とは異なり、“ひとごと”だけあって比較的客観的に受け止められているといえる。
■韓国の暗礁も中国の標的?
尖閣問題は「単純に独島問題のような領土紛争ではない」と前置きしつつ、背景に中国側の事情があると指摘する書き込みもある。
「日本は最近、中国と紛争を拡大させる理由はなく…」とやや日本の肩を持ちながら、中国はベトナムなど東南アジア各国と領土紛争を抱えており、尖閣でも引くわけにはいかないと解説する内容のものだ。
さらには、「中国当局が尖閣と離於(イオ)島は自国領土と記載したとんでもない事実がある。これは歪曲だ」と中国側を非難する声もある。
中国で「蘇岩礁」と呼ぶ離於島は、東シナ海の中韓の排他的経済水域(EEZ)が重なる海域にある。厳密には島ではなく、海面下に沈む暗礁だが、中韓双方がこの海域の主権を主張し、紛争のまっただ中に置かれている。
韓国では、これまで特段の主張をしてこなかった中国が突然、この暗礁に強い関心を持ち始めたのは、「尖閣諸島と同じく石油、天然ガスなど海底資源が多く分布している」ためだととらえられている。
尖閣と重なる構図だ。
「知識イン」の離於島についての書き込みでは、「日本は韓国の立場を支持して『離於島』と表記している」と日本を持ち上げた記載も見られた。
つまり、離於島との関連でいえば、中国は日韓共通の紛争相手であり、日韓は共闘関係にあるととらえられているわけだ。
韓国への反発から竹島問題で「日本支持」を打ち出した中国のネットユーザーたち。一方で、中国との領海争いから、尖閣問題に日本との共通点を見いだす韓国人。領土観はどの国を「敵」とみなすかで見方が180度変わるものだとつくづく実感させられる。
そして、いまのところ、日中韓3国の“領土”をめぐるネット炎上に鎮火の兆しはない。(外信部記者)
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