スカイプスレで出会う その1
スカイプスレと出会う
失恋した――らしい。
節穴にはどうにも実感がわかなかったが、それでもそれは事実であり受け入れなければならないことだった。
自分の何が悪かったのか。
一体どうすれば良かったのか。
節穴は今そんなことを考えながらアダルトビデオ店で働いていた。
時計を見ると、すでに日付が変わっている。
もうこんな時間か…帰ったら何をしよう…
そう思ったところで気づく。
どうせいつも通り飯を食って風呂に入り、一人でパソコンの前に座りながら夜が明けるのを待つ。
そして人々が一日の始まりを迎えるころに眠りにつくのだ。
失恋したとか関係なく、それが節穴の日常だった。
一体いつまでこんなことしてるんだろう?
これも幾度となく考えたことだ。
会計の専門学校を出たものの、資格取得のためという理由で今の状況に甘んじている。
節穴は小説家になりたかった。いや、その夢はまだ捨て切れていない。
最後に一度だけ何かの賞に応募する。そう決めていたが筆は一向に進まなかった。
22歳
フリーター
彼女無し(童貞)
考えれば考えるほど鬱になりそうなのに、節穴にはその気配はなかった。
それが彼の良いところなのか、悪いところなのか、自身ではわからない。
でもこんな自分は嫌いじゃない、節穴はそう思っていた。
そんなことを考えながら仕事をこなしていると、いつの間にか終業時間になっていた。
節穴はいつも通り店の片付けをした後、店長にあいさつをして帰宅した。
「さてと、今日はおもしろいスレでもあるかな?」
節穴はいつもパソコンをつけると、2ちゃんねる専用ブラウザからVIP板へ飛ぶ。
基本的にはここが彼の住みかだ。
…
…
特に目に留まるスレもなく、節穴はこう呟いた。
「VIP終わったな」
俺は何をやっているのか
これでいいのか
気を抜くとこんなことを考えてしまう自分があまり好きではなかった。
大丈夫、まだ時間はある。俺は若い。やればできるはずだ。
小さいころはどちらかというと神童と言われる側だったのだ。
それがこんなところで終わるはずがない。
そんなことを考えている節穴に、一つのスレが目にとまった。
スカイプskypeすかいぷ(87)
この瞬間が、これから節穴の人生に多大な影響を与える事件の始まりだった。
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最終更新:2009年06月08日 22:55