スカイプスレで出会う その2


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「ゆうりくん、それロンだよ」
男がそう言って、ゆうりと呼ばれた人間から牌を奪う。
「“玉なしのかい”の真骨頂を見たね」
その様子を見た女が言った。声からして若い―彼女いわく、僕と同い年だそうだ。
「その名も伊達じゃないってことさ、“フリテンのむえ”」
かいと呼ばれた男はそう答えた。僕は特に気にせず、次の局の準備を行う。といっても、ただ単にクリックするだけだが――
「かい君、今のはサービスさ…。次は“配達狂いのゆうり”の力を思い知らせてやるよ」
この人は、ゆうりと言うらしい。僕とはまだ知り合ったばかりだが、僕は彼を心の底から尊敬していた。
彼の立ち居振る舞い、気の使い方、打ち筋…どれをとっても非の打ちどころがなかった。
いつかこの人みたいになりたい。僕はそう思っていた。

「さぁはるくん、準備はいいかな?」
むえが言った。
「親は“砂丘の雀聖はる”か…」
かいが言った。

そして僕は――ドラを切った。


スカイプスレで出会う その2

りゅうじとはる




けたたましい目覚ましの音で僕は目覚め、それとともに冬の空気が鋭く頬を刺した。
(あぁ、学校へ行かなくちゃ)
心ではそう思うものの、布団から出る勇気が出ない。

いっそこのままさぼってしまおうか…

甘い誘惑が僕を包み込む。あぁそうだ、それもいい…
そう思った矢先、聞き覚えのある音楽が鳴った。携帯電話からプラチナが流れてくる。
この着信音は奥田だ。出ようかどうか迷ったあげく、夢うつつのまま僕は受話器を取った。

「もしもし。」
「石田、起きてるか?」
「今起きたところだよ。」
「今日は数Ⅱと現国のテストだぜ?遅れないようにしろよ。」

それを聞いて急激に現実世界へ呼びもどされた。そうだ、今日は試験の日だった。
試験勉強が嫌になり、昨日は夜中までスカイプで麻雀をしていたのだ。

「大丈夫だよ、奥田。わざわざ電話ありがとう。」

そう言うや否や、僕は電話切り急いで学校へ行く支度をした。

12月の朝は寒い。寒いという表現では物足りないくらい寒い。
本州では南に位置するこの鳥取と言っても、この寒さには耐えがたかった。

(温暖化なんて嘘じゃないか)

そんな事を独りごちながら僕は学校へ向かう。
世間ではクリスマスが近く、田舎でもその浮かれムードは多少なりとも存在するが、僕ら高校生にとっては
クリスマスより目先の期末試験だった。
学校が近付くにつれ、教科書を持った生徒たちがちらほらと見え始めた。
確かに通学時間を試験勉強に費やす方が効率的なのだろうが、僕は昨夜の麻雀のことを考えていた。
最終的には僕が勝った。かい君が僕に大三元と国士無双を当ててくれたおかげで一瞬で勝負はついた。
気持ちよかった。あの時間、スカイプで皆と話している時が僕の隙間を埋めてくれる。
僕の生きる世界はあそこだと思った。
教室に入ると試験が始まる直前で、誰と話す暇もなく席につき筆記用具を取り出した。
それとほぼ同時に先生が教室に入り、問題用紙を配布して試験が始まったのだった。



「石田、今日の試験どうだった?」
奥田が聞いてきた。そして僕が答えるより早く、再び奥田が言った。
「ま、お前なら大したことなかっただろう?」
「うん。まぁまぁ出来たとは思うよ。」
正直学校の勉強は簡単だった。これまで特に試験勉強を熱心にしたわけでもないのに学年で1番以外になったことはなかった。
それは全国模試でも同様の結果だったし、中学の時の自由研究ではノーベル賞も取った。
しかし、いかんせん学問に情熱がわかず高校を卒業したあとどうするか考えあぐねていた。

「全く、簡単に言ってくれちゃって。よし、テストも終わった事だし飯でも食いに行くか?」
「今日はやめておくよ。あんまり寝てないからね。」
「そうか。昨日女から30万ほどむしり取ったから奢ってやろうと思ったんだけどな。」
「奥田はまたそんな事をしてるのか…ほどほどにしときなよ。」
奥田は中国地方のジゴロ2強のうちの一人だった。もう一人は高橋というらしいが、僕にはどうでもよかった。


うちに帰り、とりあえずパソコンを付ける。
スカイプを立ち上げると石田龍二は眠り、砂丘の雀聖はるが目覚める。
刹那、会議の着信が来た。


――ゆうり 節穴 かい から着信中――


僕は節穴という人は知らなかったし、この先一生忘れられない人になることなんて今はまだ微塵も予想していなかった。
そして何も考えずに僕は、その会議に参加した――
































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