第九十話

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300 :ゼロ ◆ZMEH0UITvg :2008/08/23(土) 05:34:15 ID:kgzb8S7sO 第90話「飼い猫が来た」 1/4 二年前の話。 俺は、東京生まれ東京育ち、言わば江戸っ子である。 東京から出ず、そのまま一生を東京で過ごすんだろうと思っていた。 が、とある事情で三年ほど前から関西の某県で暮らしている。 ついこの間、菓子博があった県。 とある事情は話に関係ないから省くが。 三年前の2月1日、今住んでいる場所に着いて早々、母からメールが来た。 実家で飼っていた猫が、亡くなったとの事。 俺の実家は俺が出た時点で四匹の猫を飼っていたんだけど、 亡くなったのは一番長く飼っていた、俺が可愛がっていた猫。 名前は「みーちゃん」と言う。 302 :ゼロ ◆ZMEH0UITvg :2008/08/23(土) 05:44:40 ID:kgzb8S7sO 2/4 みーちゃんは、茶虎の至って普通の猫で。 一緒に寝ようとしても、抱っこしようとしても すぐに嫌がって逃げてしまう、そんな猫。 けど、意思の疎通?が出来た。 例えば。 俺が外から帰ってきて廊下を歩いていると、みーちゃんが脱衣場のドアの前にいる。 何か言いたげに上目遣いでこちらを見る。 そんな時、俺は 「みーちゃん、こっち行きたいの?」 と聞く。 するとみーちゃんはにゃあ、と鳴く。 ドアを開けるとみーちゃんは、一目散に脱衣場にある洗面器に飛び乗り、 また上目遣いでこちらを見るから、俺も 「みーちゃん、水飲みたいの?」 と聞くとにゃあ、とまた鳴くから、蛇口を捻り水を出してあげる。 そんな事がしょっちゅうあった。 とても可愛がっていた猫の死を聞いて、素直に泣いた。 死因は多分老衰?だったと聞いたが、俺が地元出る日も、変わらず水をあげていたのに。 きっと、俺が出ていくまで頑張ってくれていたんだと思う。 後日、火葬する際遺体から採取した毛を送ってもらい、 地元出る時に買っていたお守りに挟んで、それからの日々を送った。 303 :ゼロ ◆ZMEH0UITvg :2008/08/23(土) 05:55:48 ID:kgzb8S7sO 3/4 必死に仕事して私生活も徐々に安定してきた、 来て丁度一年後の2月1日、深夜の事だった。 その頃仕事内容が少し変わって、覚える事やる事が多くなり 職場と家の往復のみ、常にヘトヘトな毎日を送っていたから、 前日も帰ってきて夕飯を済ませ、軽く呑んですぐに床に着いた。 明日もまたハードな1日が待っている、そう思うと 気持ちが興奮してしまい、身体はとても疲れているのに、眠れなくなってしまった。 気が付けば既に日を跨いでいる。 もう少しお酒呑もうか?等と考えていると、 突然金縛りにあった。 金縛りってのは何回やっても怖いもので。 身体的な原因でなるものも、霊的な要因でなるものも 何回やっても怖い。 なってすぐ、今回はどっちだろうと考えながら、身体に力を込めて いつも通りに金縛りを解除しようとした。 が、何故かその時は金縛りが解けなかった。 冷や汗が出る 304 :ゼロ ◆ZMEH0UITvg :2008/08/23(土) 06:08:57 ID:kgzb8S7sO 4/4 すると案の定、布団の上に何かがポトン、と音を立てて乗っかった。 位置は右足付近。 何かが覆い被さる(何故か老婆が多い)のは何回かあったけど、 今まで体験した事のない現象にかなりの恐怖を感じ…なかった。 初めての現象なのに、何故か恐怖を感じない。 逆に懐かしい感触だな、と思っていた。金縛り中に暢気な事だが。 布団の上に乗っかったそれは、人が金縛り中なのをいいことに、 布団の上をポンポンポンポン跳び跳ねる。 まるで自分の存在を気付かせる様な。 自分が来てやったんだ、みたいな。 金縛り中だから跳び跳ねるそれの姿を確認する事は出来ない。 身体は相変わらず動かないけど、辛うじて声は掠れながらも出る。 だから、泣きながら必死になって、 なるべく穏やかに、昔呼んでた様に一言だけ、呼んであげた。 「みーちゃん」 「にゃあ」 いつもの愛らしい鳴き声を残して、それの気配は消えた。

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