第九十一話

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306 : ◆100mD2jqic :2008/08/23(土) 06:10:36 ID:0E6uFjYC0 『赤いワンピース』 1/2 もう10年以上前、バイトの同僚(当時30代)から聞いた話です。 彼女はその日友人と2人で、札幌近郊のとある山へ行っていたそうです。 山といっても小さな、一般人が気軽に山菜など採りに入れるような山ですが 短い夏を一斉に謳歌する北海道の植物達、その生命力をなめてはいけません。 ワッサワッサと生い茂る草を、木の枝葉を、避けながら引っ掛かりながら 山道をひぃこら進んでいた時のこと。 「?」 何か音が聞こえた気がした。 人の声のようにも思えたが、もしもヒグマの唸り声だったら…! 少々焦りながらそちらの方角を見遣ると、チラッと一瞬赤いものが見えた。 髪の長い女性のようだった気がする。赤いワンピースか何かを着た。 それにしてもすごい声だったな。あんな格好だし足もハイヒールみたいな、 山歩きには適さない靴だったのかもしれない。それでコケたのかも。 「ねぇねぇ、今の聞こえた?」友人に尋ねてみる。 「あーなんか聞こえたねー」 「見た?赤い服着た女の人っぽくなかった?」 「えー、何も見てないよー。女の人だったの?」 残念。あの派手な格好を話題にしようと思ったのに。
306 : ◆100mD2jqic :2008/08/23(土) 06:10:36 ID:0E6uFjYC0 『赤いワンピース』 1/2 もう10年以上前、バイトの同僚(当時30代)から聞いた話です。 彼女はその日友人と2人で、札幌近郊のとある山へ行っていたそうです。 山といっても小さな、一般人が気軽に山菜など採りに入れるような山ですが 短い夏を一斉に謳歌する北海道の植物達、その生命力をなめてはいけません。 ワッサワッサと生い茂る草を、木の枝葉を、避けながら引っ掛かりながら 山道をひぃこら進んでいた時のこと。 「?」 何か音が聞こえた気がした。 人の声のようにも思えたが、もしもヒグマの唸り声だったら…! 少々焦りながらそちらの方角を見遣ると、チラッと一瞬赤いものが見えた。 髪の長い女性のようだった気がする。赤いワンピースか何かを着た。 それにしてもすごい声だったな。あんな格好だし足もハイヒールみたいな、 山歩きには適さない靴だったのかもしれない。それでコケたのかも。 「ねぇねぇ、今の聞こえた?」友人に尋ねてみる。 「あーなんか聞こえたねー」 「見た?赤い服着た女の人っぽくなかった?」 「えー、何も見てないよー。女の人だったの?」 残念。あの派手な格好を話題にしようと思ったのに。 308 : ◆100mD2jqic :2008/08/23(土) 06:11:25 ID:0E6uFjYC0 『赤いワンピース』 2/2 その後、他の人間の声を聞くことも、姿を見ることもなく、もちろん ヒグマに出遭うこともなく、2人は無事何事もなく山を下りたそうです。 翌日。 朝のニュースを見ていた彼女は驚きました。 昨日行ったあの山で女性の焼死体が見付かった、と報じられているのです。 そういえばあの声は、最初ヒグマかと思ったほどすごい声だった。 ワンピースか何かだと思ったあの「赤い服」は本当に服だったか? 実はあの方角は崖などになっていて、だから声も姿も一瞬だったのでは? いや、もしかしたらあの時あの女性は既に死んでいたのかもしれない。 だから友人には見えなかった-霊だったのではないだろうか。 「真相はわからないけどねー。今思い出してもゾワッとするよあの声」 そう語ってくれた彼女。 ですが私は、ちょっと怖い点に気付きました。 ニュース報道はあくまで『焼死体が発見された』と報じられていただけで 『焼身自殺の可能性』には触れていなかったのです。 もし、彼女の見た女性が、今まさに死んでいこうとしている瞬間だったなら。 その女性に火を放った人間が、同じ時間、同じ山の中…いや、それどころか 彼女達2人のすぐ近くにいた可能性が…。 【完】

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