第三十一話

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112 名前: マツリ ◆rr07IS1hMw [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 23:27:29 ID:tVe40ghs0 " 広い池 "  1/3 聞いた話。 「昔、俺が若い頃に住んでいた場所での話だよ。  小高い山々の間を抜けていくと、道脇に神社さんと、広い池がある。  ガイドブックにも載ってるし、イベントも行われるような所。  怪異が起こると言われている場所も市内には在るが、そこはそんな噂もない、  すっきりした場所で、渋滞があまりないこともあって自分は好んでその道を使ってたんだ。」 星がキィンと澄んだ音を出しそうなくらいの冬の夜中。しぃんとして、他に通る車もない。 いつものようにその池の脇を通ると、ハンドルを取られた。 「車の運転には自信がある。なんせ、プロの下(もと)で徹底的にしごかれたからな。」 すかさず退避措置を取るが、グイグイと池のほうに引き寄せられる。道路状況によるものじゃない。 「なんぞ…仕方ないなあ。」一人ごち、往来の邪魔にならない場所に車を止め、 道脇の神社さんに一通りのご挨拶をした後、池に向き直り、対峙(たいじ)する。 印(いん)を組み、経文(きょうもん)を唱え、行(ぎょう)を行う。 自分に縁(えにし)のある神仏絡みだったので、適切な処理をしてその日は終了。 数日後。彼女を助手席に乗せてその道を運転すると、池に向かってその神仏の真言を唱え拝む彼女。 「よく判ったな?」 「電波受信は慣れてますよ?wアマ無線三級持ってるしw…ってまあ、冗談だけどね。」 そんな他愛無い会話。 113 名前: 暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 23:28:17 ID:tVe40ghs0 2/3 さらに数日後。 彼女が家に来る予定だったのに、なかなか来ない。日はとっぷりと暮れている。 さすがに心配になり、迎えに行くことにした。いつも来るルートを逆に辿り、探すがいない。 携帯電話もつながらない。 焦る。昼寝で寝過ごしているだけなら良いが。 ペダルをこぐ足に力が入る。まもなく大通り。 夜だというのに、いつにない人だかり。 赤いパトランプが回る。サイレンが響く。カメラのフラッシュ。 路上に散らばるガラスの破片。黒く変色した路面の一部。大きくフロントのひしゃげた車。 …事故。 まさか。まさか。まさか。 「あれ。」 気がつけば、見慣れた風景。いつもお参りする、大きい神社さんの前。 彼女の家 - 大きい神社 - 大通り - 俺の家 - 池、単純に言うと、こんな位置関係。 114 名前: マツリ ◆rr07IS1hMw [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 23:29:06 ID:tVe40ghs0 「パニックでこんな所まで来ちまったのか?…修行が足りんな。とりあえず、戻らないと。」 自転車を方向転換し、鳥居の方に視線をやれば、そこには彼女が。 「おまっ…!何でこんな所にいるんだ?!うちに来る言(い)うてたろうが!今何時と思ってるんや!」 「あ、ああああ!何でここにいるん?助かったよー!」 半べそかいて子供のようにしがみついてくる彼女。 落ち着いてから話を聞くと、いつものように [ お参りしてから家に来る ] という行動を取り、 参道まで戻ろうとしたら、何度歩いても同じ場所に戻ってしまったらしい。 夜の神社とは言え、その時は「とっても暖かくてほんわりしていた」から恐怖は感じなかった らしいが、それでも異界から戻れなくなるのでは、と不安になる。 化かされた時にはタバコを喫(の)むと良い、という話があるが、彼女も俺もタバコを吸わない。 仕方ないから、ミルクケーキ(注:加糖練乳にカルシウムを加え板状にした菓子)を 取り出して、一度お供えしてからかじっていたところ、俺の”におい”がしたらしい。 「汗臭くってすまんの。お前が来(こ)んから心配で走り回ったからな。」 「におい、っても嗅覚によるものじゃないよ。存在が発する雰囲気…みたいなもの…かなあ」 においの方向を見れば、そこには今までなかった、いつもの見慣れた参道が延びており、その先に俺がいたらしい。 ミルクケーキをお供えした摂社を見てみれば、池で呼ばれた神仏のお社。 「守って、もらってたんだなあ。…しかしミルクケーキ。」 「…タバコって、ある種の神様仏様には失礼でしょ?ミルクも生臭(なまぐさ)かもしれないけど、甘いお菓子だからいいかなと。」  その日以外、大きな神社さんに夜中参りしても不思議なことは起こらなかったらしい。 「…さて、と。そろそろ帰らないとうちの【山の神】が怖いからなw二次会で失礼するよ。」 「山の神を守る山ノ神…ペトリョーシカ(注:ロシアの入れ子人形)山ノ神状態ですなwお疲れ様。」 【完】

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