第三十二話

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118 名前: 水妄想 ◆2nGALdxPuM [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 23:37:37 ID:7s0Id5CK0 探している(1/2) 随分と昔ですが、群馬県のある湖に友人と二人で旅行に行った時の事です。 湖畔の古い旅館の旧館は、翌日から団体客が入るそうで、その日の泊まり客は 私たち二人だけでした。 旅館の従業員さんも夜になると帰ってしまうとかで、本当に夜には誰もいなく なってしまいました。 「大浴場も貸し切りだね~!」と最初の内は大喜びだったのですが、夜が更けて くると、広い旅館内を静けさだけが支配して、だんだん怖くなってしまいました。 広い旅館に二人きり、というのがそう思わせている要因なんだと思い、とにかく その場はさっさと寝てしまう事にして床につきました。 夜中の何時頃でしょうか、私は寝苦しさに、ふと目覚ましました。 隣の布団では、友人が寝息をたてて寝ています。 何となく灯りを感じで窓の障子に目をやると、外から懐中電灯でこちらを照らす 人がいるようでした。 割と至近距離からのようで、懐中電灯特有の影というか、二重丸のような明かりが 障子にはっきりと映っていました。 懐中電灯は、障子の上をなでるようにグルグルと照らし続け、私はなんだか気味が 悪くなりながらも、目を離すことができませんでした。 「う・・うう~ん・・」といううめき声が聞こえたので友人を見ると、なにやら うなされていました。 あわてて「どうしたの?!」と声をかけましたが起きる様子はなく、その内また スースー穏やかな寝息に戻ったので、私もそれ以上気にしませんでした。 そのうち外から障子を照らしていた懐中電灯の明かりもどこかへ去り、眠かった ので私もそのまま眠りました。 119 名前: 水妄想 ◆2nGALdxPuM [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 23:38:39 ID:7s0Id5CK0 探している(2/2) 翌朝、窓を開けてみてハッと気が付いたのですが、この部屋は3階で、しかも 窓の外はすぐ湖で誰も外には立つことは出来ない構造になっていました。 友人にうなされていた事を聞いてみましたが、「きっと悪い夢でも見てたんでしょ?!」 と、全く覚えていない様子でケロッとしていました。 朝食の時に女将に昨晩の事を話したら、一瞬顔が曇りましたが、 「まぁ怖い夢をご覧になったのねぇ」と一笑され、結局はぐらかされたような 気分のまま、宿を後にしました。 その日の午後、桜の名所と言われる公園で、その公園の管理人さんから 「どこから来たの?」と話しかけられ、色々と話す内に昨晩の話になりました。 そして、その人から聞かされ話ですが。 私たちが泊まった前の年に、その湖で親子の乗ったボートが転覆して子供が 湖に落ちて亡くなったそうです。 そして、助けようと飛び込んだ父親もまた還らぬ人になったとか・・・・。 友人は管理人さんの話を聞くと青くなり、実はうなされている時に金縛りに あっていたのだと言いました。 誰かが上にのし掛かってきて、すごく苦しかったそうです。 翌朝訊ねた時になぜ知らないフリをしたのかは、金縛り体験が初めてだった ので、それを認めたくなかったからそうです。 あの懐中電灯の明かりは、何かを必死で探しているようでした。 父親の霊が、自分が死んだことに気が付かずに子供を捜して続けてるような、 そんな気がしました。 【完】

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