第五十七話

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198 名前: 影虎 ◆OTL/VNUGLY [sage] 投稿日: 2008/08/23(土) 02:10:15 ID:ayCqAQPk0 「誰?」1/2 祖母から聞いた話。 我が家は旧い街道沿いにある。 今は少し奥に引っ込んだが、戦後しばらくは本当に街道にはみ出す様に家があった。 そして我が家は田舎である。 今は交通機関の発達により大して苦ではない坂道も、当時は峠扱いされている程急な坂だった。 道はぬかるみ、山は深い。 日が暮れてから街道に入ってしまった人は、大体我が家の軒先で雨露をしのごうとしていた。 「軒先で眠らせてくれればいい」という人たちを、曾祖母は家へあげ、風呂を沸かし、飯を食べさせていた。 そんな人たちは食事中などに「どこそこから来て、どこそこへ行く途中なんです」と話してくれる。 その話を聞くのが、当時10歳やそこらの祖母の楽しみだった。 ある日、泊まっていった人は少し変わっていた。 髪も、長い髭も真っ白で、白装束を着ている。そしていつも杖を持っていた。 幼い祖母には仙人に見えたそうだから、恐らく80歳前後だろうと思う。 その人も、軒先で眠りかけていたのを曾祖母が見つけて家に上げた。 しかしその人は、自分がどこの誰で、どこから来てどこへ行くのかを一言も言わなかった。 ただ朝になると「ありがとう」とだけ言って去っていった。 それから、半年に一回位のペースで来る様になった。 来れば何某かの面白い話(祖母はもう忘れてしまったらしいが)をし、次の朝には去っていく。 199 名前: 影虎 ◆OTL/VNUGLY [sage] 投稿日: 2008/08/23(土) 02:11:08 ID:ayCqAQPk0 「誰?」2/2 それが、祖母が22歳の時に嫁に行くまで続いた。 祖母が嫁にいき、そして6年後に嫁イビリに耐えかね離婚するまで一回も来なかった。 腹の中に私の母を抱えたまま帰ってきた祖母は、少しして私の母を産んだ。 その後、仙人の様な人が一回だけ来た。 そして祖母をじっと見つめ、こう言った 「あんたには神様がついている。だから心配する事はない」 そしていつも通り、次の朝に「ありがとう」と出ていった。 それきり見ないそうだ。 当時は誰も不思議に思わなかったが、我が家に初めて来た時に80歳だったとしても最後に来た時には98歳だ。 そんな老人が一人で峠を越えてどこぞへ行くだろうか? しかも、その18年間老人は年を取った様にはみえず、いつまでも80歳前後の見た目だったそうだ。 その老人が誰だったのか、未だに分からない。 祖母は、「神様はあの爺様だった」と信じている。 【完】

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