第二十三話


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86 名前: 影虎 ◆OTL/VNUGLY [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 22:47:16 ID:xWLnFyo+0
「夜道」

割と最近の話だ。
普段、最寄駅から家までは車で通勤しているのだが、その日はたまたまバスで来ていた。
帰りもバスの予定だったが、思ったより帰宅が遅くなり、終バスは行ってしまっていた。
徒歩20分程度の距離だし、たまには歩くのもいいかと思い、街頭の殆ど無い暗い夜道を歩いていた。
ちなみに、住んでいる所が結構な田舎の為周りは田んぼだ。

蛙の声しか聞こえない夜道をひたすら歩いていくと、ふと違和感を感じた。
何の音なのか…はっきりしないが、何か音が近付いて来る。
敢えて表現するなら「こつ、こつ」という音だった。
女性が履くヒールの音とも違う。
その「こつ、こつ」は次第に「かち、かち」に変わった。そして「かきん、かきん」に。
金属質な音に不安を覚えて辺りを見回すが何も無い。もちろん、誰もいない。

ちょっと足を速めると、その音が私の後ろ5m位をずっと、ついてくる。
急に恐ろしくなって思いっきり走り出すと、その音も、ついてくる。
「かきん、かきん、かち、かち、かち、かち、こつこつこつこつこつこつこつこつ」
駄目だ逃げられない。思い切って振り向いた。

あちこちが壊れた自転車がそこにあった。そして私の真横をすぅっと通り過ぎて行った。
それを目で追うと、丁度T字路だった為左に曲がって、そのまま田んぼの畦道をずぅっと、走っていった。
明かりが無いので、すぐに見えなくなった。音だけが遠ざかっていった。
チェーンが外れかかっていた。誰も乗っていなかった。ペダルも回っていなかった。

何故、誰も乗っていない自転車が動いていたのか。謎のままだ。
追いかけられてばかりである。

【完】