第二十七話

97 名前: 暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 22:57:41 ID:tVe40ghs0
第 二十七話  暫定まとめ人、逝きます

【 山、友達 】 1/2

飲み会で聞いた話。

「山の中で、1週間ほど仕事をした時の話なんだけどな。仕事の内容自体はおいておくが、
 ま、ある程度の期間と範囲をこなす必要から、集団になる訳だ。
 勿論、潤いなんざこれっぽっちもない ム ッ サ イ !!(←注:力説)集団だぞ。
 その中で一人、ちょっと変わった奴がいた。仕事は普通、集中する仕事だと有能な位だったが、
 なんつーか、まぁ…無口、なんだが…いや、職人気質とかじゃなくて…精神異常とか、
 境界性なんたらとかそういう変わり方でもなくて…とにかく変わってる奴だった。
 そいつを青森、としておくな。
 
 山の中の仕事、ある程度の班に分かれてやったんだが…ある日の上がりのとき、気づくと
 青森がいないんだ。
 班、と言っても団子状態で動いているわけじゃない。青森がいる場所は転落の危険はない所
 だった。雑木林みたいな感じを思い浮かべてくれりゃいいよ。電力さんみたいに身軽じゃないと
 いけないような場所じゃ、決してない。耐久力さえありゃ。
 とは言え、ほっとく訳にはいかんから、全員で探したさ。知ってのとおり、山の日は釣瓶落とし。
 それでもギリギリまで探して…なお見つからん。かと言って仕事を止めるわけにもいかん。
 一応、報告はして 数日、仕事→捜索、と続いて皆さすがにクタクタになった。
 「一人で山、下りたんじゃねえの?」ってことになって…
 仕事にも障(さわ)りが出るし、捜索打ち切りにしよう、って話になったんだ。

 そしたら、さ。次の日の、早朝だよ。妙に鳥が騒ぐから起き出してみたら、
 寝泊りしている場所からすぐのところに、そいつがボーッと突っ立ってる。
 山に迷ったのか、なんて言いながら皆で取り囲んだんだが、様子がおかしい。
 …そこ、なんで「あっちょんぶりけ」をするかな。
 お前がおかしいのは十分理解してやるから、いいから人の話を聞け。


98 名前: 暫定まとめ人 ◆eR7epxUUIM [sage] 投稿日: 2008/08/22(金) 22:58:28 ID:tVe40ghs0
2/2

 皆が口々に状況を聞いたんだが、どこか遠くを見るような目で、ボソボソッと
「作業中、伸ばした手の先も見えないような霧が掛かったのでその場から動かないように作業していた。」
 ってことを説明して…その説明中、「ひひひひっ、ひひっ…」って…
 何かひきつれたように何度も笑うんだ。
 霧なんて、その日は出ていなかった。朝もや位はあったがな。訳もなくゾッとしたよ。
 数日経ってるのに、居なくなってからすぐに戻ったような風体(ふうてい)、
 あー…野郎が数日風呂に入らないとすげぇ臭(にお)いになるのは判るだろ?
 目が痛くなるような臭(くさ)さって奴だ。
 それがない。持っていた携帯食料も減ってない。ひげも、伸びていない。
 それからは仕事はきちんとして、仕事自体はつつがなく終了したよ。
 だけど、な。そいつ、晩飯のあとにふと気がつくと、散歩なのかどうかは知らんがいなくなって、
 また戻ってきたり、【何か】と話をしていたりしていたよ。
 こっちが話しかければ普通に答えが返ってくるが、目が…死んだ鯉のような、
 (舟盛の魚をさして)ちょうどこんな目だったよ。

 もしかしたら、山に取り込まれたのかもな。
 その作業の後、地上に戻ってしばらくして、青森と会社と連絡が取れなくて…
 俺が見に行ったけど、住んでいたアパートは引き払われていたよ。天涯孤独だって 話だったから、
 実家に帰ったわけでもないし、どこ行ったんだろうな。

 ああ、そうそう。お前さんがくれた例のお守り、帰ってきたらなくなってた。すまんな。
 途中までは確かにあったんだが…
 …あれ…見なくなったのは…いや…

…あいつが居なくなってから…だな。」

【 了 】

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最終更新:2008年08月23日 00:17