第四十話

146 名前: グレゴリー ◆yNuURBcNkQ [sage] 投稿日: 2008/08/23(土) 00:30:31 ID:Dm5O7tk80
廃屋 1/2

ついこの間のお盆のことなんだけど、休みが取れたので友達と山にドライブに行った。
その山に、結構地元じゃ有名な廃屋があるんだけど、いい機会だから見にいくかってことになった。
友達の車で、山道を登ること数十分。
廃屋が見えてきた。友達は山道の脇に車を止めて、おれたちは外に出てみることにした。
廃屋は、草が茂る山の、結構上の方にあって、とてもじゃないけど登って探検なんてできなさそうな
ところにあったんだ。
友達は記念にと写メをとっていた。おれも取った。


147 名前: グレゴリー ◆yNuURBcNkQ [sage] 投稿日: 2008/08/23(土) 00:31:36 ID:Dm5O7tk80
廃屋 2/2

下から見上げるだけの廃屋探検も終わって、おれたちは車でまた山道を下っていた。
そのとき、友達が、
「しかし夏だよな。よくあんなとこまで登るよ」
と言った。おれは意味がわからなくて、
「なにが」
と聞いた。
「あそこ、人いたじゃん、結構」
「いねえよ!」
おれを怖がらせようと思ってるんだろうなと思った。そしたら友達は運転中なのに、びっくりした
顔でおれのほうを見て、
「いたって。あの窓から人が見えたろ」
「いねえよ、おれたち以外車だって通らなかったじゃん」
おれがそう言うと、友達ははっとしたみたいで、道のはじに車を止めて携帯を取り出した。
「絶対いたって。だって写メ取ったし!」
言いながら友達は携帯をいじって、それから固まった。
おれも自分の携帯を確認したが、そこには見上げるアングルでの廃屋が写っていた。
もちろん人なんて一人もいない。
友達の携帯を覗くと、やっぱりおれの携帯の写真と同じような写真だった。
おれ「どんな人だったんだよ」
友達「普通の人だよ。男も女も混じってさあ」
で、そんな会話をしておれも友達も気づいたみたいだった。
あんなやぶの中、夏の格好で歩いていけるはずがない。
その廃屋への道なんてないのは、地元の人間なら誰でも知っているはずだった。
けものみちとかも多分ないんじゃないかと思う。

友達はその後も始終、絶対いたって、と繰り返していた。


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最終更新:2008年08月23日 00:38