第六十八話

226 : ◆100mD2jqic :2008/08/23(土) 02:52:41 ID:0E6uFjYC0
白狐火 様 代理投稿
『追って来る者』 1/2

 当時高校一年だった俺は、海辺の我が家から友人宅へ向かう
べく歩いていました。時刻は午後九時をまわっていたでしょう
か。 住宅地とはいえ街灯も疎らで薄暗い海岸近くの生活道路
に、俺以外の人影は全くありませんでした。 と、後ろから足
音が聞こえてきました。何気なく振り返ってみると、10メー
トル程後方に男がいます。一見して、それほど若くないことだ
けはわかりました。
 足音が早くなり、その男がどんどん近づいてきました。(追い
越すんだな)と思っていると、その足音は1メートルほど後方で
歩を緩め、俺にぴったりと追従する形になりました。 細い路
地ならともかく、そこは幅員5メートル程もある道です。明ら
かに意図的なその行動に、当時既に武道の有段者だった俺も、
相手の真意を質すことはおろか、振り向くことすらできなくな
っていました。 そのまま10メートルも歩いたでしょうか、
後ろの男が再び早足になると、息がかかるほどに密着してきま
した。


227 : ◆100mD2jqic :2008/08/23(土) 02:53:37 ID:0E6uFjYC0
『追って来る者』 2/2 

 この後の事を書と予定調和臭くなるので気がひけるのですが、
事実なので書きます。

 密着されて俺の恐怖が最高潮に達した瞬間、角を曲がって1
台のバイクが近づいてきて、俺の前に止まりました。「よ~お
、久しぶり。」それは中学時代の友人でした。 その時初めて
目前の異様な状況に気づいたその友人が「え?誰?何?どうし
たの?」と素っ頓狂な声を上げると同時に、男は不自然に顔を
背けると、海岸方向に走り去っていきました。

 横田めぐみさんが連れ去られたとされる場所から数キロ地点の海岸
線で、彼女が失踪してから数ヶ月後に体験した実話です。

【完】

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最終更新:2008年08月29日 15:16