第七十七話

256 :ゆい ◆HgP/Cz.fFY :2008/08/23(土) 03:45:00 ID:9BwJHflr0
あまりにも胡散臭い話だとは、自分でも思うのですが……小さい頃の話です。

その女の子に会ったのは、幼稚園に上がる前だったと思うので3~4歳の頃。
白い着物に赤い帯を締めた、サラサラの髪のとても綺麗なお姉さんだった。15歳くらいだったんじゃないかなと、後で思った。
一人で庭で遊んでいたら、そのお姉さんがどこからかやってきて(←3歳の頃の記憶なのではっきり覚えていない)
「一緒に行こう、すてきな所へ連れて行ってあげる」とかそんなようなことを言われて、ほこほことついていってしまった。
親は私が、いなくなったと血相変えて探しまわったらしい。
夕暮れ時に半泣きの母親が走ってきて、ものすごく怒られたのは覚えている。
さすがにうろ覚えなので後で聞いた話だが、母が私を見つけたのはかなり遠くの空き地で
とても3歳児が歩いていけるような距離ではなかったらしい。(何か乗り物に乗った覚えは無い)
私はずっとお姉さんといっしょにいたような記憶があるのだが、私は一人で、けろっとして遊んでいたそうだ。
正月でもないのに着物姿の女の子なんか滅多にいるものじゃないと思うのだが、母はそんな女の子は見ていないと言う。

その後、県を移動する距離の引越しをした。
小学校2年生くらいの頃、学校から帰ってくる途中、またあの時のお姉さんに会った。
3歳の時たった一度会っただけの人だけど、何しろ綺麗な子だったし、あの時と同じ白い着物と赤い帯という姿だった。
その時は少し立ち話をしただけで、さよならをした。
お姉さんとは会ったのは、その2回きり。


257 :ゆい ◆HgP/Cz.fFY :2008/08/23(土) 03:45:45 ID:9BwJHflr0
で、それからさらに数年たって高校生になった私は、ある少女漫画を友達から借りた。
白い着物に赤い帯をした美少女吸血鬼が主人公の、オカルト?ホラー?系の漫画だった。
漫画なので主人公はちょっと個性的な髪型で、衣装は着物を洋服っぽくにアレンジしたようなデザインだったし
「お姉さん」が着ていたのは普通の着物だった(はず)なので、共通しているのは
白い着物に赤い帯というアイテムだけなのだけど、その漫画を見た瞬間、あのお姉さんを思い出した。
「小さい頃、こんな女の子に会ったことがあってねー」と、漫画を貸してくれた友達に話したところ
彼女は何だか妙な顔をして、翌日今度はアニメの雑誌を持って来てくれた。
そのマンガは当時アニメになっていて、出演したある声優に曰く
「○○(主人公の名前)って本当にいるんですって。私の友達が会ったって言ってた」……とのこと。
その話を聞いた監督だか脚本家だかは「あれは創作! ○○が実在したりしたら、僕は気絶するよ」と言ったらしい。

さすがにもう顔もおぼろげになってしまったけど、私の記憶にあるのは「ものすごく綺麗な、白い着物姿の女の子」。
声優の友人が、どんなモノに会って「○○」と思ったかは書かれていなかった。
都市伝説や現代怪談系の話を少し調べてみたけど「白い着物と赤い帯の少女」のそれらしい話はまだ見つけられない。
もしかして幽霊?とも思ったけど、ベタなイメージのそれにしては帯がやたら鮮やかに赤かった気がする。(派手な幽霊がいたっていいけど)
ただ、もし本当に声優の友人が会ったのがあのお姉さんで、もしそれが本当に○○のような存在だったとしたら
彼女は、3歳の私をどうするつもりだったのかと。
あの日、もし母が私を見つけていなかったら私は一体どうなっていたのだろうと。
でも、頭を撫でてくれて手をつないで歩いてくれたお姉さんは、とても優しかったし。
そういえば、あの手が温かかったか冷たかったかも、もう覚えていないな……と、今気が付いた。

【完】

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最終更新:2008年08月29日 20:06