第八十五話

281 :zar ◆zJYORZSm4M :2008/08/23(土) 04:42:06 ID:K+MstECH0
第85話 「永遠に続く死の鎖」 1/4

さて、僕自身も怖いし、本当は余り語りたくない話なんだけど、去年も参加したので(81話)今年も話してしまおう。
僕が聞いた断片的な話を時系列で追ってみたいと思います。これも本当の話です。少し長くなるけど聞いて下さい。

話は今から50年くらい前から続いている。僕の良く知っている、ある人の父親をAとする。
Aの実家では奇妙な事に、精神疾患を遺伝的に持つ人間が稀に生まれてくる家柄で、
実家の離れに納屋があるのだが、その「二階」にあたる部分になぜか狭い和室が存在した。
そこに精神疾患を持つ「Aの叔父」にあたる人間が隠されるように、閉じ込められるように生活していた。
そしてこの「Aの叔父」にあたる人間が最終的に癌に侵され、自殺したと聞いたのは随分後の話である。
「Aの叔父」にも家庭はあったらしいが、晩年は完全に一人きりになり、死んだ後の納骨さえ拒否されたらしい。
この辺の事情は知らないが、随分嫌われていたようだ。この頃Aの父親の体の一部に奇妙なできものが出来る。
それは握りこぶし程に大きくなり、目も覆いたくなるような異形のものになってしまった。
実際僕も写真でみたことがあるが、生まれつきでなければかなり奇妙なものだった。

今から40年程前。中学生頃にAはある事件を起こす。
Aの村では大騒ぎになったと聞いているが、なにをしたのかは具体的には知らない。
Aは訳もわからないことを言っていたらしい。思えば彼の心も既に病に侵されていたのかもしれない。
そしてAの行動パターンが次第に「Aの叔父」に似ていく。

そして今から10年程前。
Aは酷いアルコール中毒だったりもしたので、実家に帰っても煙たがられていた。
Aもいい年だったので家庭は持っていたが、そんな人間だったのでまもなく妻と子供は出て行った。
彼の娘は精神的な病を患っていたので、息子(当時17位)だけが彼の元に残った。
それからまもなくAの父親は死去する。Aの父親の奇妙なできものは巧妙に隠され、遺体には見当たらなかった。
そのことについては誰も触れなかった。その後Aの母親が入院することになる。
入れ替わるようにAの背中の部分に奇妙なピンポン玉位のこぶが浮き出てくる。
そしてそれから二年程時間は流れていく。


282 :zar ◆zJYORZSm4M :2008/08/23(土) 04:43:32 ID:K+MstECH0
2/4
8年程前。ある日Aの息子はそれまで何年も寄り付かなかった「Aの母親」の病院にほんの気まぐれで
見舞いに行くことにする。住んでいた所からは随分距離があったので、いい時間になってから病院に着いた。
そしてAの息子はそこで祖母が癌に侵されていることを知らされる。着いた時には意識不明で、
足はまるで木の棒のようにパンパンに膨れ上がってうなされていたという。
その場にいた叔母(Aの姉妹)に、「Aの事を宜しくねっておばあちゃんがいってたわよ」と聞かされるが、
正直Aの息子はAを嫌っていたのでどうでもいいと思いながら聞いていた。
そして事件は起こる。Aの母親が突然苦しみだし、そしてそのまま他界してしまったのである。
Aの息子は呆然とし、「あんたが来たから死んだ!!」などと叔母などに激しく罵られる事になる。
Aは冗談じゃない、俺のせいじゃないと怒り、そのまま帰ってきて葬式にも出なかった。
実際彼はほんの気まぐれで行っただけであり、それを責任問題にされてはたまらなかったのだろう。
Aは喪主を務め、その後すぐ仕事をなくす。
Aはそのまま家に寄り付かなくなり、そのまま姿をくらます。
Aの息子は受験を控えていたが、突如住む家と、全財産を失いホームレスになる。

6年前。Aの息子はその後日払いの仕事や、バイトなどでなんとか金を稼ぎ、
風呂なしのアパートを借りてギリギリの生活をしていた。
彼は頭のいい人間で国立医大などに合格していたが、Aが恐らくブラックになっていたのか、
教育ローンなども組めずにそのまま夢を断念することになる。
Aに関しては死んでいても構わないとさえ思っていた。
ある日彼が眠っていると突如息が出来ないほど胸が苦しくなった。
目を開けると死んだはずの祖母が彼の胸を押さえつけて凄まじい形相で
「Aを頼むと言ったじゃないか!!!!」
と怒鳴った。何度も何度も胸を押さえつけられ、Aの息子が
「わかった、わかったから!!!!」
と言うと気配がさっと消えた。
それから随分後になって、その頃ホームレスになったAの父親が誰も住んでいない実家に帰り、
実家を放火して全焼させ、刑務所に入っているらしい事を人から聞くことになる。


283 :zar ◆zJYORZSm4M :2008/08/23(土) 04:44:23 ID:K+MstECH0
3/4
3年程前。Aの息子はまだ貧乏なまま、ギリギリの生活を続けていた。
出所したAが彼の家を訪ねてくる。彼はドアも開けずにAを追い払った。
その後何度もAは訪ねてきたがその度に冷たく追い払い続ける。
彼は自分の未来と、家族を奪ったAを生涯許すつもりはなかった。
その後Aは生活保護を申し出たらしくその件で福祉事務所から連絡がきたが、それも無視した。

そして二年程前。
Aの息子は自分の生活に限界を感じ始め、酒の量が増えていった。彼は人に迷惑をかけるような飲み方はしないが、
もともと頭の非常にいい人間だったので、見ていて痛々しい程に追い詰められていた。
彼に少し話を聞く機会があって、上記のような話を断片的に聞きだした。
今はどうなのか、と聞くと、最近変なんだと言った。
「誰かに何時も見張られているような気がするんだ。そしてそれは自分に死が訪れるまで付きまとうんじゃないか。」
と彼はいった。しばらくして、彼の体には突如湿疹が出始めた。
そしてその後彼の両腕が丸太のように突然パンパンに膨れ上がり曲がらなくなってしまった。
病院で検査を行うも異常はなし。その腫れは直ぐに直ったが、湿疹は広がっていた。

一年程前。
その湿疹の後を見せてもらった。酷いなこれは・・・と思ったが、それよりも気になったのは彼の
右肩の部分に奇妙なできものが出来ていることだった。
Aの事を聞いてみた。最近は彼のことはまったくなにも知らないらしい。死んだんじゃないか。
と彼は言いながらふと窓を見た。僕も釣られてそっちを見てしまった。
少しだけ開いた窓の隙間から白っぽい人間の様なものの目がこちらをじっと見ていた。
Aは無表情のままこちらを見て、諦めたように首を振って笑った。そして僕は最悪の展開を悟った。
恐らくこの「できもの」は次のターゲットの証なんだ。
その人物が不幸な死を遂げるまで付きまとうんだ。
そしてそれは連鎖的に、人から人へ永遠に付きまとう死の鎖なんだ。
今それが彼についているんだ。
僕はその事実を伝えられなかった。そして彼は会社を辞めて何処かへ行ってしまった。


284 :zar ◆zJYORZSm4M :2008/08/23(土) 04:45:15 ID:K+MstECH0
4/4
今彼がどうしているのかわからない。
生きているのか、死んでいるのか。伝えればよかったのか、伝えなくてよかったのか。
もうこんな事は忘れよう、と僕は思った。
僕の勘ではあの「死の鎖」は恐らく彼の叔父に端を発している。そして、彼の親族、あるいは
血縁関係にあるものにしか伝染しない。だからもう僕には関係ないし忘れよう。

と思っていた。今この長くなった文章をまとめてる最中にふと気付いた。
僕の左手の薬指の外側に変なイボが出来てるな。タコってこんな所に出来ないよね。
って書いていたら外で誰かが階段を登ってきた。隣の部屋に入ったな。
隣は空き部屋なんだけど。(午前3:23分)
あれ、出て行った。(午前3:27分)
なんか変な笑い声聞こえるんだけど。夏休みだから?(午前3:49)
なんだろう、本当はもうちょと続くんだけど、背中の寒気が止まらないのでこれちょっと書くの止めます。
ごめんなさい。

[完]

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最終更新:2008年08月29日 20:23