溶媒の乾燥
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反応を行う際,ほとんど必ず用いる事になる溶媒。基質や試薬の物質量に対し,溶媒の物質量はあまりにも大きい。
物質量が多いという事は,溶媒にごく少量含まれている不純物が基質の物質量に匹敵する場合すらあるのである。特に少量スケールの精密合成において,不純物の混入は非常に重要な問題である。
一般に,溶媒に含まれる不純物について重要なものは水である。
実験プロトコル
- 蒸留塔
最も一般的な脱水法。還流と蒸留を一つの装置で行い,そのままシリンジを用いて溶媒を取る事ができるようにした装置。蒸留塔下のフラスコに溶媒と乾燥剤を入れ,しばらく還流したのちに溶媒溜めに溶媒を溜め,その溶媒を取る。
- 還流→減圧蒸留
減圧蒸留が必要な高沸点溶媒の場合,還流してから減圧蒸留を行う。
- 市販品
市販の脱水溶媒を用いる方法も最近では一般的である。
この場合,水などの不純物は除かれているが,溶存酸素などは除かれていない。
嫌気条件である金属反応などに注意を要する。
嫌気条件である金属反応などに注意を要する。
溶媒各論
- 炭化水素
ヘキサン |
ペンタン |
装置 | 乾燥剤 | 不純物 |
蒸留塔 | CaH | 水 |
蒸留塔を用いて水素化カルシウムと1時間還流したのちに蒸留して得る。
- エーテル
ジエチルエーテル |
THF |
ジメトキシエタン |
エーテルに含まれるのは水だけでなく,安定剤である。エーテルは爆発性の過酸化物を形成し,危険であるため,安定剤が混入されている。従って,その安定剤を留去する必要がある。安定剤を欠いたエーテルは過酸化物が生成しやすいので注意する。
装置 | 乾燥剤 | 不純物 |
蒸留塔 | Na, ベンゾフェノン | 水 |
3 mm角に切った金属ナトリウムとベンゾフェノン薬さじ1杯をエーテルとともに蒸留等にて1時間還流し,溶液がベンゾフェノンケチルの青色に色づいているのを確認してから蒸留して得る。
DMFは水と任意で混合するため,湿りやすい。
装置 | 乾燥剤 | 不純物 |
モレキュラーシーブス4A | 水 |
還流→減圧蒸留でも可能だが,モレキュラーシーブスを用いたほうが簡便である。活性化したモレキュラーシーブス4Aを加え,一週間以上放置した後に使用する。
- アミン
トリエチルアミン |
ジイソプロピルエチルアミン |
ピリジン |
アミンは水を含みやすい。また,沸点も高いので,減圧蒸留で得る。
装置 | 乾燥剤 | 不純物 |
還流→減圧蒸留 | CaH2 | 水 |
水素化カルシウムと1時間還流し,直ちに装置を組み替えて減圧蒸留する。