「確定診断まで」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「確定診断まで」(2008/03/21 (金) 17:53:19) の最新版変更点
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<div>
<p><strong><font size="4">2005/04/02 MRI</font></strong> </p>
<p>導眠剤のおかげか、6時間ぐっすり。<br>
15:05、T医大のすぐそばにある医療施設でMRI検査。<br>
保険証を忘れ、妻がタクシーで往復して取りにいってくれる。</p>
<p>検査自体は特に不快感等はなかった。検査直後、医療施設の看護師さんとは</p>
<p> 「手術の日程とか決まってらっしゃるの?」<br>
「いえいえ。ってゆ~か、ガンっぽくみえないでしょ?ぜんぜんw」</p>
<p>とかいう軽口を叩き合う元気があったんだが、造影剤の影響か、やや吐き気がする。<br>
検査終了後ちょっと散歩して立ち寄ったファミレスでのスープとパンの昼食がほぼ40時間ぶりの食事だったが、はっきりいってマズい。</p>
<p>東急ハンズで新しい腰痛ベルトを選ぼうとするも、疲れてしまい帰宅。<br>
妻、疲れているのか家に着いたとたん約30分ほど熟睡。<br>
おれもマンガを読みながら少しうとうとする。</p>
<p>だいたいにおいて昨夜もメシこそ食わなかったが酒だけはキッチリ飲めてんだから、いくらガンだからってそんないきなり具合悪くなるわけねえぞ。<br>
甘えてたら体力も気力も落ちていくだけだ。</p>
<p> 「医者でガンを宣告されたんだバカヤロコノヤロおめえ」<br>
「コーノヤロおめえ<br>
『手術で取りきれると思うよ』ってなんで不確定な言い方すんだコノヤロおめえ」<br>
「医者でガンを宣告されたんだバカヤロコノヤロおめえ」<br>
「コーノヤロおめえ<br>
『おれは絶対死なない』とか武田鉄矢っぽく盛り上げてんじゃねえぞコノヤロおめえ」</p>
<p> (TM いつもここから)</p>
<p>うん。調子が戻ってきたぞ。</p>
<p><strong><font size=
"4">2005/04/02・その2 脆弱な神経<br></font></strong>夜、登竜門を見たあと「インディ・ジョーンズ3」を見る。<br>
罪のない娯楽映画なら精神衛生上それほど悪くないんじゃないかと思ったからだが、結構この映画も人がよく死ぬなあ。<br>
場面転換のスピード感と刺激の強いシーンの連続で、めまいと不整脈。<br>
CTとMRIの際に用いた造影剤の副作用を考え、23時ごろT医大に電話。<br>
とりあえず着てくださいとの内科医の言葉に、タクシーで病院へいく。<br>
結果、異常なし。<br>
ガンの告知を受けて以来、まともに食事が摂れないという話をすると、医師は<br>
「点滴していかれますか」<br>
と聞いてきた。<br>
「いえ。異常がないのであれば帰ります。帰ってがんばって食事をします」<br>
とんだ深夜のタクシー散歩となってしまった。<br>
「今帰ればお笑いオンエアバトルに間に合うぞ」といったら妻に苦笑された。<br>
本当にオンバトを見て、寝る。<br>
導眠剤、服用なし。<br></p>
<hr>
<p><strong><font size="4">2005/04/03 食事の心配</font></strong><br>
10時、起床。<br>
不思議なことに毎朝感じていた腰の痛みがほとんどなかった。<br>
機嫌よく朝食のしたくなどを始める。<br>
実は妻は料理がまったくダメなのだ。<br>
シャレや冗談ではすまされないくらいに、ダメ。<br>
だから普段、家ではおれが炊事当番をしているのだが、今回は手術のために1ヶ月家を空けることは確実なので、かんたんな料理くらいは作れるようになってもらわなければ困る。<br>
今朝の献立は豆乳スープと納豆・ご飯。<br>
料理というのは恥ずかしいくらいのレシピだが、妻のために残しておく。<br>
1.水250ccをなべにいれ、コンソメキューブを1コ入れて火にかける。<br>
2.温まってきたらお玉の背でキューブをつぶし、<br>
市販のカップサラダとさいのめに切ったを豆腐を入れる。<br>
3.沸騰したら豆乳を入れる。<br>
4.煮立つ直前で出来上がり。<br>
#by jack-dancer | 2005-04-03 12:21 | 確定診断まで | Comments(1)</p>
<p> </p>
<p><strong><font size="4">2005/04/03・その2 痛みはないが</font></strong><br>
午後、妻と二人で買い物にいく。<br>
妻がお世話になっている友人の方(看護師免許をお持ちの方)から、手術後の傷の治りをよくする食生活についてご指導いただいたためだ。<br>
おれは本当に太っており(現在165cm82kg)、緊急を要する場合ででもなけりゃ医者は開腹するのを絶対にイヤがる体型だ。<br>
3/21~告知の日までに5kg近い激ヤセをしたものの、これはあからさまにメシを満足に食えなかったという精神的なものに起因しておるため、体脂肪はあんまり減らずに体力だけが落ちたという最高によくないパターンのヤセ方だ。<br>
貧血などという乙女チックな傾向もあるため、入院までにできるだけ体力をつけなければ。<br>
暑かったのでちょっと疲れたが、少し歩いて、入院用のガウン等も買い、5時すぎに帰宅。<br>
昼食兼夕食はトマトスープスパゲティ。<br>
夜プルーンを2つ。<br>
夕食のレシピ。<br>
【トマトスープ】<br>
水とトマトジュース(無塩)をあわせて400ccにする。<br>
固形コンソメ・野菜・ウィンナーをいれて火にかける。<br>
沸騰したら火を弱めてコンソメを溶かし、3分煮込んでおわり。<br>
【パスタ(1人前)】<br>
パスタ茹でのケースに1人分水を入れる。塩・小さじ1。<br>
スパゲティ100gいれ、茹で時間+5分レンジでチン。<br>
【温泉卵】<br>
温泉卵用ケースに1杯の水をなべに入れて火にかける。<br>
ケースに2個、卵をセットしておく。<br>
湯が沸騰したらケースに注いでふたをする。<br>
20分でできあがるので、すぐケースから出し、冷蔵庫にいれておく。<br>
そのまま食べるときには水につけて冷やす。<br>
#今日は鎮痛剤はなしで過ごせた。<br>
#しかし巨人、開幕三連敗。。。(泣<br></p>
<hr>
<br>
<strong><font size="4">2005/04/04 今の不安</font></strong><br>
不安でまた眠れず、のど元のヒステリー球までが出てきたので、不謹慎な推理ゲームをやってみよう。<br>
ま、他人がコレやったら「不謹慎」なんだろうが、自分のことだからいいか。<br>
注意)<br>
以下の文章には同じ病気で悩んでいる方や、その関係者の方には不愉快になる表現が含まれていると思います。<br>
ぼくはFTMTS(性同一性障害患者)という特殊な立場ですが、不安や苦しみという面では、ほかの患者さんとなんら変わりなく、半べそをかきながら確定診断を待っている状態です。<br>
しかしぼくは自分を鼓舞するために、あえていま流行のお笑いのパロディを随所に盛り込んでいますので、お笑いが嫌いな方は絶対に以下の文章を読まないでください。<br>
*********************************<br>
細胞診 推定終了(クラス告知なし)<br>
「ほぼ(ガンに)間違いないです」という医師の発言。<br>
3b以上か。<br>
触診(直腸検)<br>
「ん。大丈夫かな(触診中)」<br>
「横には広がってないみたいだね~(触診後)」という医師の発言。<br>
その他の医師発言<br>
「MRIとCT見て放射線で小さくしてから手術か即手術か決めるけど<br>
見たところすぐ切れるみたいだよ~。でも初期じゃないよ~」<br>
「(手術のための)入院期間は1ヶ月ぐらいかな~」<br>
「仕事はやめる必要ないです(きっぱり)」<br>
MRI・CT 結果待ち。<br>
すべてフェアに材料を提供してくれる推理小説であるなら、「ステージ2未満」なので来年の桜の心配はしなくても大丈夫というところだが、いかんせん本人告知の内容だからなあ。<br>
やっぱ不安だよう。<br>
いずれにしても4/7、すべての材料は出揃うのだ。<br>
「さっくん体操」でも歌いながらなんとか明日の仕事のために眠らなきゃ。<br>
気にしない、気にしない、気にしないんだよっ♪<br>
絶対いらない臓器にガンができちゃった~<br>
気にしない、気にしない、気にしないんだよっ♪<br>
全摘してくれるならもうけもの~<br>
気にしない、気にしない、気にしないんだよっ♪じゃん♪
<p><strong><font size="4">2005/04/04・その2 きわめて、平然と</font></strong><br>
告知後、初の通常出勤。<br>
腰痛もなく、前回(4/2)の検診から続いている出血以外、とりたてて異常はない。<br>
導眠剤のせいか目覚ましで起きられなかった。<br>
妻がそっと<br>
「食欲ある?ごはん食べられる?」<br>
と起こしてくれる。こんなことはいままで一度もなかった。<br>
パスタを半分くらい食べてやや早めに出勤。<br>
ゆっくり歩いたから遅刻ぎりぎりかと思ったのに、普段の電車より2本も早かった。<br>
点滅信号を妻と手をつなぎ、ダッシュで渡っていたことがはるか昔に感じる。<br>
少しぼんやりしながら仕事。<br>
できるだけふつうに過ごさないと、体よく肩を叩かれる。<br>
戻ってくる場所がないということが今は最高に怖い。<br>
いや、本当はもちろん死ぬことの方がずっと怖いのだが、いまはひたすらそれより怖い事があると信じていたい。<br>
昼食は中華粥。一人前を完食して、妻にホメられた。<br>
ほんとごめんな。これからもっと食えるようにがんばるよ。<br>
一所懸命がんばってくれる妻と職場の女の子をホメてあげたら、妻が泣き出してしまった。<br>
バカだなあ。そんなに泣いたらみんなにバレちゃうじゃないか。<br>
そしていつも程度の残業に入る。<br>
きわめて、平然と。</p>
<strong><font size="4">2005/04/04・その3 自分の不安を罵倒する</font></strong><br>
告知以来、わずか数日で体力がガタ落ち。<br>
身体のおかしいところがすべてガンのせいに思えてくる。<br>
そこで具合の悪い(ガンのせいじゃないか?と思ってしまう)箇所を列挙し、ひとつづつ自分自身で論破してみる。<br>
1.腰痛<br>
なんと快方に向かっている。<br>
本当にガンのための痛みだったらこんなにヘラヘラしていられない。<br>
2.肛門前部の違和感<br>
あまり食事をしていないので便が出ないんだからあたりまえ。<br>
告知直前に神経がやられて下痢をしたときには違和感なんかまったくなかった。<br>
数日というレベルの短期でここまで進行するガンはさすがにないと思う。<br>
3.不正出血<br>
内診”前”に、「タンポン入れますね~」と看護師さんが言っていた。<br>
つまり内診後の出血はある程度見越されていたはず。<br>
しかもガンなんだから多少の出血なんかあたりまえなのである。<br>
4.嘔吐感<br>
食事をまともに摂っていないんだし、神経が疲れてるんだからこれも当然。<br>
「治療前」子宮ガンの自覚症状として吐き気なんてのはありえない。<br>
5.疲労感<br>
いや。だからさあ。そりゃあ疲れるだろうよ。<br>
メシも食わず寝不足でまともに行動できるほうがおかしいよ。<br>
【結論】<br>
ぐだぐだ言わずに食って寝ろ。<br>
ガンも手術もほぼ確定なんだから、こんなところで盛り上がって、勝手に悲劇の主人公やって、体力落とすのは愚の骨頂。<br>
なに? 導眠剤がないと眠れない?<br>
じゃあ飲んで寝りゃいいだろ~が。<br>
お前の飲んでるのなんか、たかが市販の「ド●エル」じゃねえか。<br>
<br>
<hr>
<p><strong><font size="4">2005/04/05 夢を見たいね<br></font></strong>朝、また妻に起こされる。<br>
なれない手つきで作ったのだろうリゾットを、すまなそうに勧めてくれる。<br>
「あんまりおいしくないかもしれない。。。」<br>
そんなこと言われたら胸が詰まって、せっかくの朝メシが食えなくなっちゃうよ。<br>
いいんだ。おまえは気にするな。<br>
職場に着いてすぐクライアントとの打ち合わせがあるため、スーツで出勤。<br>
約5日ぶりのネクタイが心地よい。<br>
やっぱり服装がキマらないと姿勢も悪くなるし、体調もどんどん悪くなっていくような気がする。<br>
#昨日のおれはノーネクタイにスニーカーという<br>
#普段からは想像もつかないラフな格好で出勤したので<br>
#上司からも部下からも「うっわ~。相当キてるな~」という<br>
#目で見られてしまった。<br>
打ち合わせの席で、一時ではあるが担当を外れる挨拶をしなければならないのが少し憂鬱だったが、クライアント側担当者に<br>
「大丈夫。みんなで仕事を分散すればなんとかなるって」<br>
といってもらい、ひと安心。<br>
昼食時、突然「鶏のからあげwithおろしぽん酢」が食いたくなる。<br>
さっきまで米の飯も油ものもまったく欲しくなかったのに。<br>
さすがにそんな都合のいい弁当はないだろうと思っていたが、妻が慌てて近所の弁当屋に買いに走ってくれた。<br>
ゆずぽんとおろしのから揚げ弁当。ビンゴ!こいつだよこいつ。<br>
おいしい。すごくおいしいよ。あんなうまいもの久しぶりに食ったよ。<br>
さすがに1.5人前はあろうかというデカさの弁当を完食するのは無理だったけど(笑)。<br>
夕刻、以前おれの上司だった女性にロビーで会う。<br>
「お身体、大丈夫ですか」<br>
そういう彼女の方が華奢で折れそうだ。<br>
「はは。不摂生がたたりました」<br>
「お仕事のし過ぎなんですよ。ゆっくり休めるといいですね。待ってますからね」<br>
「ありがとうございます」<br>
おれの存在を許してくれて、認めてくれた元上司の言葉はほんとうに胸にしみた。<br>
そうか。おれって仕事ばっかしてるように見えてたんだなあ。<br>
本当は適当に手を抜いたりして、要領よくやってたんつもりなんだけどなあ。<br>
明日からは優秀な助っ人くんが手伝いにきてくれる予定。<br>
この職場は本当に得がたく、すばらしいところだと思う。<br>
以前冗談混じりに「この会社には死ぬまで居座ってやる」とか言っていたのだが、いまこそ本当にこの職場の良さがわかる。<br>
体調もすごくいい。もう夕方なのに腰のだるさ以外はほとんど不快な部分がない。<br>
今日までの数日間は、飲みすぎて見た悪夢なんじゃないだろうかと。<br>
しかし結果は48時間後。<br>
#by jack-dancer | 2005-04-05 18:28 | 確定診断まで | Comments(0)</p>
<hr>
<strong><font size="4">2005/04/05・その2 もういいよ</font></strong><br>
妻が寝床でこんなことをきいてきた。<br>
「今度の検査結果が最後なんだよね。もう待たなくてもいいんだよね」<br>
そうだなあ。もう待つのはいやだよな。<br>
どんな結果でもいいから、おれも早く知りたいよ。<br>
もうハラは決めた。<br>
手術で取れると言い切るなら、即開腹。<br>
ダメかもしんないなんぞとほざくなら、このヤブと吐き捨て即転院。<br>
ホント、こんな思いはもうたくさんだ。<br>
検査結果がどうあろうと、4月7日はやってくる。<br>
<br>
<hr>
<br>
<strong><font size="4">2004/04/06 あと24時間を切りました。</font></strong>
<p>妹に電話をした。<br>
しばらく前から一緒に住んでいるひとがいることを告げた。<br>
妹にはおれが性同一性障害だということを話していなかった。<br>
最後まで隠して生きようと思っていた。</p>
<p>だが、手術ともなれば見舞いや付き添いで、妻と妹がかち合うのは目に見えている。<br>
そしておれにもしものことがあったとき、妻に肩身の狭い思いをさせたくない。</p>
<p>「お前に言わなきゃいけないことがある」<br>
「なに?」<br>
「好きなひとがいる。もうずいぶん前から一緒に住んでるんだ」<br>
「そうなんだ~。で、男のひとなの?」</p>
<p>ああそうか。お前は知っていたんだよな。<br>
同じ腹から出てきて、十数年の時を過ごしてきたんだもんな。</p>
<p>「。。。いや。女だ」<br>
「へ~。コイビトって感じなんだあ」</p>
<p>倫理的にとても厳しい精神を持っている妹に、このドサクサにまぎれてカミングアウトするしかない、ケツの穴の小さい野郎だと笑ってくれ。</p>
<p>でもおれは夢を見る。</p>
<p>ワガママで強気で潔癖な妹を、こんなふうにものわかりよくしてしまったのは、おれの病気のせいなのだ。だから。。。だから夢を見る。</p>
<p>数年後、妹がおれと妻に向かって必ず</p>
<p> 「あんたたちなに考えてんのよ! ヘンタイ!! サイテ~!!!」</p>
<p>と罵るようになってくれることを。</p>
<p>そして</p>
<p> 「なんであのときカミングアウトなんかしちまったんだろうな~<br>
気が弱くなってたんだよな~。くっそ~」</p>
<p>と後悔の臍を噛んでいる自分を。</p>
<p><strong><font size="4">2005/04/06・その2 あと半日。。。</font></strong><br>
朝になったら仕事に行く。<br>
いつもの電車で会社に行く。<br>
普段どおりに仕事して。<br>
でも15:30には病院に行く。<br>
「人間は悩みたがる生き物だ」と誰かエラいひとが言ってたらしい。<br>
だからどんなに幸せでも、悩みの種を探さずにはいられないのだと。<br>
おれはもう一生分以上悩んだよ。もう悩みのタネなんていらねえよ。<br>
だからさ。<br>
中くらいでもいいから「春」をくれよ。<br></p>
<hr></div>
<div>
<p><strong><font size="4">2005/04/02 MRI</font></strong> </p>
<p>導眠剤のおかげか、6時間ぐっすり。<br />
15:05、T医大のすぐそばにある医療施設でMRI検査。<br />
保険証を忘れ、妻がタクシーで往復して取りにいってくれる。</p>
<p>検査自体は特に不快感等はなかった。検査直後、医療施設の看護師さんとは</p>
<p> 「手術の日程とか決まってらっしゃるの?」<br />
「いえいえ。ってゆ~か、ガンっぽくみえないでしょ?ぜんぜんw」</p>
<p>とかいう軽口を叩き合う元気があったんだが、造影剤の影響か、やや吐き気がする。<br />
検査終了後ちょっと散歩して立ち寄ったファミレスでのスープとパンの昼食がほぼ40時間ぶりの食事だったが、はっきりいってマズい。</p>
<p>東急ハンズで新しい腰痛ベルトを選ぼうとするも、疲れてしまい帰宅。<br />
妻、疲れているのか家に着いたとたん約30分ほど熟睡。<br />
おれもマンガを読みながら少しうとうとする。</p>
<p>だいたいにおいて昨夜もメシこそ食わなかったが酒だけはキッチリ飲めてんだから、いくらガンだからってそんないきなり具合悪くなるわけねえぞ。<br />
甘えてたら体力も気力も落ちていくだけだ。</p>
<p> 「医者でガンを宣告されたんだバカヤロコノヤロおめえ」<br />
「コーノヤロおめえ<br />
『手術で取りきれると思うよ』ってなんで不確定な言い方すんだコノヤロおめえ」<br />
「医者でガンを宣告されたんだバカヤロコノヤロおめえ」<br />
「コーノヤロおめえ<br />
『おれは絶対死なない』とか武田鉄矢っぽく盛り上げてんじゃねえぞコノヤロおめえ」</p>
<p> (TM いつもここから)</p>
<p>うん。調子が戻ってきたぞ。</p>
<p><strong><font size="4">2005/04/02・その2 脆弱な神経<br /></font></strong>夜、登竜門を見たあと「インディ・ジョーンズ3」を見る。<br />
罪のない娯楽映画なら精神衛生上それほど悪くないんじゃないかと思ったからだが、結構この映画も人がよく死ぬなあ。<br />
場面転換のスピード感と刺激の強いシーンの連続で、めまいと不整脈。<br />
CTとMRIの際に用いた造影剤の副作用を考え、23時ごろT医大に電話。<br />
とりあえず着てくださいとの内科医の言葉に、タクシーで病院へいく。<br />
結果、異常なし。<br />
ガンの告知を受けて以来、まともに食事が摂れないという話をすると、医師は<br />
「点滴していかれますか」<br />
と聞いてきた。<br />
「いえ。異常がないのであれば帰ります。帰ってがんばって食事をします」<br />
とんだ深夜のタクシー散歩となってしまった。<br />
「今帰ればお笑いオンエアバトルに間に合うぞ」といったら妻に苦笑された。<br />
本当にオンバトを見て、寝る。<br />
導眠剤、服用なし。</p>
<hr /><p><strong><font size="4">2005/04/03 食事の心配</font></strong><br />
10時、起床。<br />
不思議なことに毎朝感じていた腰の痛みがほとんどなかった。<br />
機嫌よく朝食のしたくなどを始める。<br />
実は妻は料理がまったくダメなのだ。<br />
シャレや冗談ではすまされないくらいに、ダメ。<br />
だから普段、家ではおれが炊事当番をしているのだが、今回は手術のために1ヶ月家を空けることは確実なので、かんたんな料理くらいは作れるようになってもらわなければ困る。<br />
今朝の献立は豆乳スープと納豆・ご飯。<br />
料理というのは恥ずかしいくらいのレシピだが、妻のために残しておく。<br />
1.水250ccをなべにいれ、コンソメキューブを1コ入れて火にかける。<br />
2.温まってきたらお玉の背でキューブをつぶし、<br />
市販のカップサラダとさいのめに切ったを豆腐を入れる。<br />
3.沸騰したら豆乳を入れる。<br />
4.煮立つ直前で出来上がり。<br />
</p>
<p><strong><font size="4">2005/04/03・その2 痛みはないが</font></strong><br />
午後、妻と二人で買い物にいく。<br />
妻がお世話になっている友人の方(看護師免許をお持ちの方)から、手術後の傷の治りをよくする食生活についてご指導いただいたためだ。<br />
おれは本当に太っており(現在165cm82kg)、緊急を要する場合ででもなけりゃ医者は開腹するのを絶対にイヤがる体型だ。<br />
3/21~告知の日までに5kg近い激ヤセをしたものの、これはあからさまにメシを満足に食えなかったという精神的なものに起因しておるため、体脂肪はあんまり減らずに体力だけが落ちたという最高によくないパターンのヤセ方だ。<br />
貧血などという乙女チックな傾向もあるため、入院までにできるだけ体力をつけなければ。<br />
暑かったのでちょっと疲れたが、少し歩いて、入院用のガウン等も買い、5時すぎに帰宅。<br />
昼食兼夕食はトマトスープスパゲティ。<br />
夜プルーンを2つ。<br />
夕食のレシピ。<br />
【トマトスープ】<br />
水とトマトジュース(無塩)をあわせて400ccにする。<br />
固形コンソメ・野菜・ウィンナーをいれて火にかける。<br />
沸騰したら火を弱めてコンソメを溶かし、3分煮込んでおわり。<br />
【パスタ(1人前)】<br />
パスタ茹でのケースに1人分水を入れる。塩・小さじ1。<br />
スパゲティ100gいれ、茹で時間+5分レンジでチン。<br />
【温泉卵】<br />
温泉卵用ケースに1杯の水をなべに入れて火にかける。<br />
ケースに2個、卵をセットしておく。<br />
湯が沸騰したらケースに注いでふたをする。<br />
20分でできあがるので、すぐケースから出し、冷蔵庫にいれておく。<br />
そのまま食べるときには水につけて冷やす。<br />
#今日は鎮痛剤はなしで過ごせた。<br />
#しかし巨人、開幕三連敗。。。(泣</p>
<hr /><br /><strong><font size="4">2005/04/04 今の不安</font></strong><br />
不安でまた眠れず、のど元のヒステリー球までが出てきたので、不謹慎な推理ゲームをやってみよう。<br />
ま、他人がコレやったら「不謹慎」なんだろうが、自分のことだからいいか。<br />
注意)<br />
以下の文章には同じ病気で悩んでいる方や、その関係者の方には不愉快になる表現が含まれていると思います。<br />
ぼくはFTMTS(性同一性障害患者)という特殊な立場ですが、不安や苦しみという面では、ほかの患者さんとなんら変わりなく、半べそをかきながら確定診断を待っている状態です。<br />
しかしぼくは自分を鼓舞するために、あえていま流行のお笑いのパロディを随所に盛り込んでいますので、お笑いが嫌いな方は絶対に以下の文章を読まないでください。<br />
*********************************<br />
細胞診 推定終了(クラス告知なし)<br />
「ほぼ(ガンに)間違いないです」という医師の発言。<br />
3b以上か。<br />
触診(直腸検)<br />
「ん。大丈夫かな(触診中)」<br />
「横には広がってないみたいだね~(触診後)」という医師の発言。<br />
その他の医師発言<br />
「MRIとCT見て放射線で小さくしてから手術か即手術か決めるけど<br />
見たところすぐ切れるみたいだよ~。でも初期じゃないよ~」<br />
「(手術のための)入院期間は1ヶ月ぐらいかな~」<br />
「仕事はやめる必要ないです(きっぱり)」<br />
MRI・CT 結果待ち。<br />
すべてフェアに材料を提供してくれる推理小説であるなら、「ステージ2未満」なので来年の桜の心配はしなくても大丈夫というところだが、いかんせん本人告知の内容だからなあ。<br />
やっぱ不安だよう。<br />
いずれにしても4/7、すべての材料は出揃うのだ。<br />
「さっくん体操」でも歌いながらなんとか明日の仕事のために眠らなきゃ。<br />
気にしない、気にしない、気にしないんだよっ♪<br />
絶対いらない臓器にガンができちゃった~<br />
気にしない、気にしない、気にしないんだよっ♪<br />
全摘してくれるならもうけもの~<br />
気にしない、気にしない、気にしないんだよっ♪じゃん♪
<p><strong><font size="4">2005/04/04・その2 きわめて、平然と</font></strong><br />
告知後、初の通常出勤。<br />
腰痛もなく、前回(4/2)の検診から続いている出血以外、とりたてて異常はない。<br />
導眠剤のせいか目覚ましで起きられなかった。<br />
妻がそっと<br />
「食欲ある?ごはん食べられる?」<br />
と起こしてくれる。こんなことはいままで一度もなかった。<br />
パスタを半分くらい食べてやや早めに出勤。<br />
ゆっくり歩いたから遅刻ぎりぎりかと思ったのに、普段の電車より2本も早かった。<br />
点滅信号を妻と手をつなぎ、ダッシュで渡っていたことがはるか昔に感じる。<br />
少しぼんやりしながら仕事。<br />
できるだけふつうに過ごさないと、体よく肩を叩かれる。<br />
戻ってくる場所がないということが今は最高に怖い。<br />
いや、本当はもちろん死ぬことの方がずっと怖いのだが、いまはひたすらそれより怖い事があると信じていたい。<br />
昼食は中華粥。一人前を完食して、妻にホメられた。<br />
ほんとごめんな。これからもっと食えるようにがんばるよ。<br />
一所懸命がんばってくれる妻と職場の女の子をホメてあげたら、妻が泣き出してしまった。<br />
バカだなあ。そんなに泣いたらみんなにバレちゃうじゃないか。<br />
そしていつも程度の残業に入る。<br />
きわめて、平然と。</p>
<strong><font size="4">2005/04/04・その3 自分の不安を罵倒する</font></strong><br />
告知以来、わずか数日で体力がガタ落ち。<br />
身体のおかしいところがすべてガンのせいに思えてくる。<br />
そこで具合の悪い(ガンのせいじゃないか?と思ってしまう)箇所を列挙し、ひとつづつ自分自身で論破してみる。<br />
1.腰痛<br />
なんと快方に向かっている。<br />
本当にガンのための痛みだったらこんなにヘラヘラしていられない。<br />
2.肛門前部の違和感<br />
あまり食事をしていないので便が出ないんだからあたりまえ。<br />
告知直前に神経がやられて下痢をしたときには違和感なんかまったくなかった。<br />
数日というレベルの短期でここまで進行するガンはさすがにないと思う。<br />
3.不正出血<br />
内診”前”に、「タンポン入れますね~」と看護師さんが言っていた。<br />
つまり内診後の出血はある程度見越されていたはず。<br />
しかもガンなんだから多少の出血なんかあたりまえなのである。<br />
4.嘔吐感<br />
食事をまともに摂っていないんだし、神経が疲れてるんだからこれも当然。<br />
「治療前」子宮ガンの自覚症状として吐き気なんてのはありえない。<br />
5.疲労感<br />
いや。だからさあ。そりゃあ疲れるだろうよ。<br />
メシも食わず寝不足でまともに行動できるほうがおかしいよ。<br />
【結論】<br />
ぐだぐだ言わずに食って寝ろ。<br />
ガンも手術もほぼ確定なんだから、こんなところで盛り上がって、勝手に悲劇の主人公やって、体力落とすのは愚の骨頂。<br />
なに? 導眠剤がないと眠れない?<br />
じゃあ飲んで寝りゃいいだろ~が。<br />
お前の飲んでるのなんか、たかが市販の「ド●エル」じゃねえか。<br /><br /><hr /><p><strong><font size="4">2005/04/05 夢を見たいね<br /></font></strong>朝、また妻に起こされる。<br />
なれない手つきで作ったのだろうリゾットを、すまなそうに勧めてくれる。<br />
「あんまりおいしくないかもしれない。。。」<br />
そんなこと言われたら胸が詰まって、せっかくの朝メシが食えなくなっちゃうよ。<br />
いいんだ。おまえは気にするな。<br />
職場に着いてすぐクライアントとの打ち合わせがあるため、スーツで出勤。<br />
約5日ぶりのネクタイが心地よい。<br />
やっぱり服装がキマらないと姿勢も悪くなるし、体調もどんどん悪くなっていくような気がする。<br />
#昨日のおれはノーネクタイにスニーカーという<br />
#普段からは想像もつかないラフな格好で出勤したので<br />
#上司からも部下からも「うっわ~。相当キてるな~」という<br />
#目で見られてしまった。<br />
打ち合わせの席で、一時ではあるが担当を外れる挨拶をしなければならないのが少し憂鬱だったが、クライアント側担当者に<br />
「大丈夫。みんなで仕事を分散すればなんとかなるって」<br />
といってもらい、ひと安心。<br />
昼食時、突然「鶏のからあげwithおろしぽん酢」が食いたくなる。<br />
さっきまで米の飯も油ものもまったく欲しくなかったのに。<br />
さすがにそんな都合のいい弁当はないだろうと思っていたが、妻が慌てて近所の弁当屋に買いに走ってくれた。<br />
ゆずぽんとおろしのから揚げ弁当。ビンゴ!こいつだよこいつ。<br />
おいしい。すごくおいしいよ。あんなうまいもの久しぶりに食ったよ。<br />
さすがに1.5人前はあろうかというデカさの弁当を完食するのは無理だったけど(笑)。<br />
夕刻、以前おれの上司だった女性にロビーで会う。<br />
「お身体、大丈夫ですか」<br />
そういう彼女の方が華奢で折れそうだ。<br />
「はは。不摂生がたたりました」<br />
「お仕事のし過ぎなんですよ。ゆっくり休めるといいですね。待ってますからね」<br />
「ありがとうございます」<br />
おれの存在を許してくれて、認めてくれた元上司の言葉はほんとうに胸にしみた。<br />
そうか。おれって仕事ばっかしてるように見えてたんだなあ。<br />
本当は適当に手を抜いたりして、要領よくやってたんつもりなんだけどなあ。<br />
明日からは優秀な助っ人くんが手伝いにきてくれる予定。<br />
この職場は本当に得がたく、すばらしいところだと思う。<br />
以前冗談混じりに「この会社には死ぬまで居座ってやる」とか言っていたのだが、いまこそ本当にこの職場の良さがわかる。<br />
体調もすごくいい。もう夕方なのに腰のだるさ以外はほとんど不快な部分がない。<br />
今日までの数日間は、飲みすぎて見た悪夢なんじゃないだろうかと。<br />
しかし結果は48時間後。</p>
<strong><font size="4">2005/04/05・その2 もういいよ</font></strong><br />
妻が寝床でこんなことをきいてきた。<br />
「今度の検査結果が最後なんだよね。もう待たなくてもいいんだよね」<br />
そうだなあ。もう待つのはいやだよな。<br />
どんな結果でもいいから、おれも早く知りたいよ。<br />
もうハラは決めた。<br />
手術で取れると言い切るなら、即開腹。<br />
ダメかもしんないなんぞとほざくなら、このヤブと吐き捨て即転院。<br />
ホント、こんな思いはもうたくさんだ。<br />
検査結果がどうあろうと、4月7日はやってくる。<br /><br /><hr /><br /><strong><font size="4">2004/04/06 あと24時間を切りました。</font></strong>
<p>妹に電話をした。<br />
しばらく前から一緒に住んでいるひとがいることを告げた。<br />
妹にはおれが性同一性障害だということを話していなかった。<br />
最後まで隠して生きようと思っていた。</p>
<p>だが、手術ともなれば見舞いや付き添いで、妻と妹がかち合うのは目に見えている。<br />
そしておれにもしものことがあったとき、妻に肩身の狭い思いをさせたくない。</p>
<p>「お前に言わなきゃいけないことがある」<br />
「なに?」<br />
「好きなひとがいる。もうずいぶん前から一緒に住んでるんだ」<br />
「そうなんだ~。で、男のひとなの?」</p>
<p>ああそうか。お前は知っていたんだよな。<br />
同じ腹から出てきて、十数年の時を過ごしてきたんだもんな。</p>
<p>「。。。いや。女だ」<br />
「へ~。コイビトって感じなんだあ」</p>
<p>倫理的にとても厳しい精神を持っている妹に、このドサクサにまぎれてカミングアウトするしかない、ケツの穴の小さい野郎だと笑ってくれ。</p>
<p>でもおれは夢を見る。</p>
<p>ワガママで強気で潔癖な妹を、こんなふうにものわかりよくしてしまったのは、おれの病気のせいなのだ。だから。。。だから夢を見る。</p>
<p>数年後、妹がおれと妻に向かって必ず</p>
<p> 「あんたたちなに考えてんのよ! ヘンタイ!! サイテ~!!!」</p>
<p>と罵るようになってくれることを。</p>
<p>そして</p>
<p> 「なんであのときカミングアウトなんかしちまったんだろうな~<br />
気が弱くなってたんだよな~。くっそ~」</p>
<p>と後悔の臍を噛んでいる自分を。</p>
<p><strong><font size="4">2005/04/06・その2 あと半日。。。</font></strong><br />
朝になったら仕事に行く。<br />
いつもの電車で会社に行く。<br />
普段どおりに仕事して。<br />
でも15:30には病院に行く。<br />
「人間は悩みたがる生き物だ」と誰かエラいひとが言ってたらしい。<br />
だからどんなに幸せでも、悩みの種を探さずにはいられないのだと。<br />
おれはもう一生分以上悩んだよ。もう悩みのタネなんていらねえよ。<br />
だからさ。<br />
中くらいでもいいから「春」をくれよ。</p>
<hr /></div>