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【くずのは!】 最終話 ◆PzD3ftv2xo - (2009/09/14 (月) 06:07:17) のソース

67 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 01:25:17.65 ID:PcmOQwJtO 
放課後、音楽室 

唯「あれ~?今日もいないの?」 
掃除当番で遅れて来た唯が寂しそうに言う。 
梓「最近、凪先輩来ませんよね…。」 
澪「どうしたんだろうな?学校には来てるんだけど…。」 
凪が軽音部に顔を出さなくなってから、もう3日が経った。 
紬「きっと凪ちゃんが手伝わなきゃならない、何か大きな依頼が入ったのよ。」 
律「ま、ともかく練習始めよーぜ!」 
ムギの言うとおり、デカい仕事が入ったんだったらいいけどな…。 
なんか、引っかかってるんだよなあ…。 

翌日 

あたしと澪は登校中、偶然にも凪を見かける。 
澪「おはよう凪。」 
凪「…お早う。」 
こっちを見ずに返事をする凪。 
律「最近部活来ねーな?仕事忙しくなったのか?」 
凪「………。」 
む、返事がない。 
まあ、仕事の事は話す訳ないか。 
特にあたしには。 
72 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 01:44:03.23 ID:PcmOQwJtO 
律「たまには顔ぐらい出せよ?唯が寂しがってるからさ。」 
凪「………。」 
あり? 
また返事がない。 
澪「凪?」 
凪「ごめん。考え事をしていたんだ。」 
澪には即答してるし。 
あたし、何か気に障るような事したか? 

昼休み 

あたしは弁当を食べ終わると、屋上へ向かった。 
多分凪の事だから、また屋上でトランペット吹いてるだろう、と思って。 
案の定、凪は屋上にいた。 
あたしは凪に声をかける。 
律「なんかお前がラッパ吹いてんの見るの、久しぶりだな。」 
凪「………。」 
凪は静かにトランペットをケースにしまう。 
律「あのさ。部活来て…。」 
凪「もう、出ないから。」 
あたしの言葉を遮るように凪が言う。 
律「えっ?それってどういう…。」 
凪「部活には、もう出ない。そう言ったんだ。」 
律「な、何でだよ?あたし、なんかしたか?」 
凪「…じゃあ、そう言う事だから。」 
それだけ言って、凪は屋上からいなくなった。 
80 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 02:14:45.51 ID:PcmOQwJtO 
放課後、音楽室 

律「凪…もう来ないってさ。」 
みんなが集まった所で、昼間の出来事を話す。 
唯「そんなあ、どうして?」 
梓「仕事…ですよね?」 
昨日より一層寂しそうな表情を浮かべる唯。 
それにつられたのか、梓も不安げな表情で聞いてくる。 
律「…訳は、言ってくれなかった。」 
紬「そうなの…。」 
澪「お前、なんか変な事言ったんじゃないのか?」 
律「そんな事……!」 
澪にそう言われて気付いた。 
ひょっとして、あの時の…! 

大瀧探偵事務所 

ぼくは依頼調査の準備をしていた。 
大瀧「最近、帰り早いねえ。部活はどうしたの?」 
凪「暫く出られない、と言ってあります。」 
…もう、顔を出すつもりも無いが。 
大瀧「仕事を言い訳にして?」 
凪「違いますよ…行ってきます。」 
ぼくは調査に出掛ける。 
…もう、いいんだ。 
此以上、彼女達を巻き込む訳にはいかない。 
だから、もう。 
軽音部には、関わらない。 
87 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 02:36:02.90 ID:PcmOQwJtO 
翌日 

ぼくが教室に着くと、珍しく先に居る律が話し掛けてきた。 
律「遅かったなー凪!あたしの勝ちだぜ!」 
凪「………。」 
律「…あのさ。」 
律が急に真剣な眼差しをぼくに向ける。 
律「こないだ言った事ならさ…もう二度とご免だってやつ。別に、凪が嫌になったとかじゃないからな?…言葉が悪かったよ。ごめん。」 
別に、怒ってる訳じゃないさ。 
ただ…もう、皆を巻き込みたくないんだ。 
だから…。 
凪「もう、ぼくに関わらないで。」 
律「いや、ホント悪かったって!そんな怒んないでくれよ。それとも…もう、あたしの事…嫌いになった?」 
凪「関わらないで!!」 
…此でいいんだ。 
ぼくから嫌っておけば、少しでも巻き込む確率を減らせる。 
関わるな。 
誰とも。 
仲良くなんて、しちゃいけない。 
99 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 03:09:12.22 ID:PcmOQwJtO
放課後、音楽室 

唯「よ~しみんな!次の曲練習しよー!」 
唯は凪がいない寂しさを紛らわすように練習に打ち込む。 
梓「えっ?休憩いいんですか?」 
いつもなら一曲合わせが終わると休憩してたからな。 
唯「あずにゃん!サボりは禁物だよ!」 
澪「お前が言うか。…律?」 
ボーっとしてるあたしに澪が気づく。 
澪「どうしたんだよみんなして?唯はやけに張り切ってるし、律は妙に静かだし。」 
律「…ごめん。」 
澪「へっ!?いっいや、別に私は責めてる訳じゃ…。」 
…何でだよ! 
関わるなって…理由を教えてくれよ! 
…訳分かんねーよ、凪…! 
律「だーもう!」 
澪「ひっ!ご、ごめ…。」 
律「あ、わりい。別に怒った訳じゃねーからさ。」 
考えてたってラチがあかねーし。 
こうなったら意地でも凪を連れて来て、直接聞き出してやる! 
287 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 18:06:09.64 ID:PcmOQwJtO 
うし、決めた。 
律「あたしも、しばらく部活出るの止めるわ。」 
澪「ちょっ!何言ってんだよ律!」 
唯「そうだよ!りっちゃんまでいなくなるなんて…。」 
律「その代わり!必ず凪を連れて来るから!それまで、待っててくれ!頼む!」 
あたしは土下座した。 
自分の決意が本物だって事を示すために。 
紬「顔上げて、りっちゃん。」 
梓「土下座なんて止めてくださいよ!そんなの…らしくないです。」 
澪「全くもう…しょうがないな。一回言い出したら聞かないんだから。…必ず連れて来いよ?約束だからな?」 
律「ああ、ありがとう!じゃあ、早速行ってくるぜ!」 
あたしは音楽室を飛び出した。 
目指すは大瀧探偵事務所だ。 

大瀧探偵事務所 

事務所にたどり着いたあたし。 
律「たのもー!」 
大瀧「おお、律君か。どうしたんだい?」 
290 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 18:22:07.66 ID:PcmOQwJtO 
律「凪いますか?」 
大瀧「悪いね~、ついさっき調査に出たとこなんだよ。」 
入れ違いか。 
大瀧さんにお礼を言って、凪を探しに街へ繰り出す。 
…そういや、何の依頼受けたか聞いときゃよかったな。 
まあ、守秘義務って言葉でかわされるだろうけど。 
辺りが暗くなるまで捜したけど、結局見つからなかった。 
その次の日も、そのまた次の日も入れ違いで、捜して…を繰り返して、結局見つからなかった。 
途方に暮れそうになった時、あたしはある事を思い出す。 

凪捜索3日目、桜高屋上 

あたしは一か八か、『彼女』に呼びかけてみた。 
律「妖精さん、いるんだろ~?出てきてくれよ~。」 
???「妖精なんていませんよ~。」 
何もない空間から声がする。 
律「…いるんじゃんか、アカネさん。」 
アカネ「バレたか。よくここにいるって分かったわね。」 
律「前に凪と話してるの見てたからな。」 
アカネ「えっ、あの時いたの?気づかなかったなあ。」 
292 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 18:50:15.67 ID:PcmOQwJtO 
律「気づかないフリだろ?…それと、毎日こっそり凪の様子見に来てるんだろ?」 
アカネ「それもバレてたか。で、何の用?」 
あたしはアカネに事情を話す。 
アカネ「そうなんだ。…まったく、あの子ったら。相変わらず自分を責めてるのね。」 
律「昔なんかあったの?」 
アカネは凪の過去を話し始めた。 
アカネ「実はね。凪の親御さん、悪魔に殺されちゃったのよ。凪がまだ小さい頃に。」 
律「その原因が自分にあるんだって思ってるとか?」 
アカネ「そうなのよ。それで、サマナー見習いの頃はずっと、人とは関わるまいとしてて。自分が原因で人が傷つくのが怖いのかもね。」 
凪…あたしは傷ついてなんかないぞ。 
むしろ、あたしが凪を傷つけちゃったじゃんか。 
謝って許してもらおうなんて思わねー。 
ただ…もう一度軽音部に戻って来てくれ。 
297 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 19:22:09.52 ID:PcmOQwJtO 
アカネ「今日はショチョーさんが依頼片付けちゃったから、凪は事務所にいると思うわよ。」 
律「情報提供ありがとうございます、アカネさん!」ビシッ 
アカネ「凪の事、ヨロシクね!」 
あたしは事務所へと急いだ。 

大瀧探偵事務所 

大瀧「おかえり~。そうそう、ここんとこ毎日、律君がここに来てるよ。」 
…ぼくに何の用が有るのだろう。 
もう関わるなと言った筈なのに…。 
大瀧「依頼の方は片付けちゃったから、今日は休んでいいよ~。」 
ぼくは自室に入る。 
ふと、ギターが目に入る。 
そう言えば、皆で買いに行ったんだったっけ。 
今頃、どうしてるかな…。 
…否。 
気にするな。 
もう、ぼくには関係のない人達だ。 
そう自分に言い聞かせる。 
それでいいんだ、それで…。 
律「こんにちわー!」 
律が来たようだ。 
もう、関わらないけど。 
298 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 19:48:41.65 ID:PcmOQwJtO 
律「凪いますか?」 
大瀧「あ~、悪いね。今ちょっと出かけててね~。」チラッ 
律「(いるんだな…。)…そうですか。」 
律…毎日来ているらしいが、そろそろ諦めてくれないか? 
ぼくはもう…。 
律「じゃあ、帰ったら伝えといてください。」 
君達とは…。 
律「『音楽室で待ってるから』って。」 
…え? 
どうして? 
ぼくは君達を、仕事に巻き込んでしまったのに。 
もう巻き込みたく無いのに。 
律「あいつ、多分早とちりしてるんですよ。こないだも様子変だったし。…ちゃんと確かめたいんです。あいつの、本当の気持ち。」 
大瀧「…分かった。確かに伝えとくよ。」 
本当の…気持ち? 
ぼくは、軽音部の皆が好きだ。 
だから、ぼくが原因で皆が傷付くのは嫌だ。 
でも、もし…今ぼくがしている事が、皆を傷付けているとしたら…? 
最低だ! 
こんな簡単な事に気付かないなんて! 
303 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 20:12:20.95 ID:PcmOQwJtO 
凪「律!」 
ぼくは自室から飛び出した。 
律はもう帰ってしまったようだ。 
大瀧「聞こえてたろ?…行ってきな。これ以上、後悔したかないだろ?」 
凪「はい…行ってきます!」 
今ならまだ追いつける! 
ぼくは事務所の扉を開け、桜高へ行こうとする。 
律「おせーぞ、凪。」 
振り返ると、律が事務所の入口に立っていた。 
凪「律、あの…。」 
律「おっしゃ!行くぜ!」 
律はぼくの手を掴んで走り出した。 

桜高、音楽室前 

凪「ま、待って!」 
律「何だよ今更?」 
いざ目の前に立つと、入るのに勇気が要る。 
…入部する時以来だな。 
皆に会うのに、こんなに緊張するのは。 
律「よし、入るぞ!」 
凪「ちょっ、待っ…!」 
律「みんなー!凪を連れて来たぞ!」 
唯「おかえり!りっちゃん、凪ちゃん!」 
梓「もう…遅過ぎです!」 
澪「一週間も何してたんだ?凪。」 
紬「さあ、お茶にしましょう?」 
319 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 21:11:51.72 ID:PcmOQwJtO 
其処には、何時もと変わらない、暖かな皆が待っていた。 
…言わなきゃ。 
ぼくの気持ちを。 
凪「ごめん。…サグメの件で、皆を巻き込んでしまって。」 
唯「そんなの気にしなくていいよ~。」 
梓「ていうか、直接巻き込まれたおっちょこちょいは律先輩だけですけどね。」 
律「おい。」 
凪「もう…皆に会わないつもりでいた。其れが皆の為に成ると思って。」 
紬「そんなの、間違ってるわ。会えなく名ったら、寂しいじゃない。」 
凪「…嫌なんだ…ぼくのせいで親しい人が傷付くのは…。」 
澪「友達の為に傷付く事を怖がるやつなんて、いるわけないだろ?」 
唯「凪ちゃんは1人で抱え込み過ぎなんだよ。たまには誰かに甘えたっていいんだよ?」 
澪「そうそう。頑張るのも程々にな。」 
凪「…いいの?わたし、此処にいても…?」 
律「当たり前だろ?あたし達、友達じゃんか!」 
333 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/13(日) 21:50:21.49 ID:PcmOQwJtO 
ぼくは、皆の前で初めて泣いた。 
皆…また迷惑をかけるかも知れないけれど…此からも宜しくね。 
ぼくが泣き止むと、律が突然宣言した。 
律「という訳で!一週間も部活サボった凪に罰を与えたいと思います!」 
凪「…へ?」 
唯「さんせー!私に寂しい思いをさせた罰だー!」 
澪「お、おい!待てよお前ら!」 
梓「せっかくきれいにまとまりそうだったのに…。」 
紬「あらあら。うふふ。」 
律「本日ただ今から、凪に『ぼく』禁止の刑を執行します!」 
紬「そんなのダメよ!(せっかくの僕っ娘要員が!)」 
律「なんでムギが言うんだよ。」 
凪「それ、罰になってないよ?」 
律「あら凪さん?ご不満でしたらイナゴの佃煮食べ放題の刑でも…。」 
凪「喜んでお受けします!」 

ぼくは…否。 
わたしは細野凪。 
デビルサマナー・葛葉ハヅキである前に、何処にでもいる、普通の女の子だ。 



最終話 わたしは凪 完