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【私はヒミツ諜報部員】[指令1]ー[私が諜報部員!?]  ギー助 - (2009/10/01 (木) 01:45:20) のソース

273 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:44:01.69 ID:esbY0niM0
【私はヒミツ諜報部員】 

[指令1]ー[私が諜報部員!?] 


「えっ? ホントにっ!?」 

 唯は電話越しに聞こえた憂いの言葉に、思わず声を上げてしまった。 
 無理もない、それは唯にとって最高のサプライズだったからだ。 

「お父さんとお母さんが、帰ってくるの!?」 

 部活が終わり、さて帰ろうかという矢先であった。 
 あまりに唯が大声で話すので、憂は受話器を耳から10センチほど離さなければならなかったほどだ。 
  
『お、お姉ちゃん。声大きいよぉ』 
「だって、嬉しいんだもん!」 
『うん、私もすっごい嬉しいんだ』 
「じゃ、今日は御馳走だねっ!」 

 楽しそうに電話をしている唯を、他の4人は遠巻きにに見ていた。 
  
「ふふ……嬉しそうね、唯ちゃん」 
「無理もないさ。久しぶりに両親に会えるんだから」 
「何か見てるだけでこっちまで嬉しくなってきますね」 

 みんな自然と笑顔がこぼれていた。 



275 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:45:32.64 ID:esbY0niM0
「うん、じゃぁすぐに帰るからねっ!」 
  
 言い終えると、唯は携帯を切って鞄に放り込んだ。 
 そして一目散に駆けだした。音楽室の外へ。 
  
「あっ! みんな、今日は先に帰るねっ!」 
「あいよ~」 

 ドアの所で一瞬止まり、笑顔で言う唯に律がニヤニヤしながら手を振る。 
 どたばたと階段を降りる音がして、それもすぐに聞こえなくなった。 

「行っちゃったな……」 
「うらやましいですね」 

 澪と梓は遠い目をしながらつぶやく。 

「よしっ! 今日は4人で食べにでも行きますかっ!」 
「あらあら、今日はりっちゃんのおごりかしら」 
「ごちそうさまですぅ、律先輩」 
「ななな……」 

 残された4人もまた、にぎやかに階段を降りて行った。 



277 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:46:28.65 ID:esbY0niM0
 家まで止まらず猛ダッシュで唯は走り続けた。 
 頭の中には、父と母のにこやかな笑顔。 
 2人が家に帰ってくるのは、唯が高校生になってから始めてのことだ。 
 だから、もう2年以上は会っていない。 
 もうすぐ、もうすぐ会える。 
 その気持ち一つで唯は走り続けた。 

「はぁ……はぁ……」 

 自分でも驚くぐらい早く家に着いた。 
 玄関の前で、少し呼吸を整える。 
  
「よ、よぉし」 

 唯は恐る恐るインターホンに指を近づける。 

「えいっ」 

 ピンポーンと鳴ってからドアが開くまで、どれだけ待ち遠しかったことか。 
 唯は2人と何を話すかを考え続けて、頭が一杯だった。 
 だからかもしれない。 
 ドアノブが回る音に気が付かなかった。 



279 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:48:03.46 ID:esbY0niM0
「おかえり、唯」 

 懐かしい父の声。 
 唯ははっと気付く。 
 目の前には両親がいた。 

「おとうさん……おかあさん……」 

 自分の声が震えているのが分かった。 
 目の前が霞む。唯は目に涙をためていた。 

「おかえりなさいっ!!」 

 言うと同時に父に抱きつく。 

「寂しくなかったか?」 
「うんっ!」 
「高校楽しいか?」 
「うんっ!」 

 耳元で聞こえる父の声、あの時となんら変わらない。 

「今日は、今日は御馳走だからねっ」 
「あぁ、今日はお母さんと憂が作ってくれたんだぞ」 
「お母さんが!?」 
「そうよ、唯。元気してた?」 
「うんっ!」 

 母もまた、相変わらずだ。 
 変わらない2人に、唯は心一杯の嬉しさを感じていた。 


281 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:49:37.24 ID:esbY0niM0
「よし、じゃぁとりあえず御馳走食べような」 
「うんっ!」 

 そう言って父から離れ、唯は鞄を持って自分の部屋へ階段を駆け上がる。 
 部屋のドアを開き、鞄を放り、すぐに着替えた。 
 そして、ばたばたと階段を下りていく。 
 テーブルには、もう3人が座っていた。 

「わっ! すごいっ!」 

 テーブルの上には、今まで見たこともないような御馳走が並べられていた。 
  
「お姉ちゃん、お帰り!」 
「ただいま、憂!」 

 憂もまた、満面の笑みを浮かべていた。 
 唯は両手をしっかりと合わせた。 
 それを追うように、他の3人も手を合わせる。 

「いただきますっ!」 

 家まで走ってきたということもあり、唯はかなり腹ペコだった。 
 次から次へと御馳走を口に放り込む。 

「はむはむ、はふっ」 
「はは、相変わらずだな、唯」 
「はむはむっ!」 

 和やかな食事の合間に、懐かしい話を沢山した。 
 学校生活のことや、高校受験のこと。それから部活のことも。 


283 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:51:37.54 ID:esbY0niM0
「そうか、唯は部活を始めたのか」 
「軽音部に入ったんだ!」 
「あら、楽器は何をやってるの?」 
「ギターだよっ!」 
「おぉ、恰好いいな。今度父さんに聞かせておくれよ」 
「うんっ、もちろんっ!」 

 楽しかった食事が終わり、両親も今日は帰ってきたばかりで疲れているからと、そのまま寝ることになった。 
  
「唯、また明日な」 
「うん、起こしに行くからねっ!」 
「こりゃ驚いた。唯に起こしてもらえるなんて」 
「お姉ちゃん、早起きになったんだもんね」 
「てへへ……」 

 照れ笑いをする唯に、母が優しい笑顔を向ける。 

「それじゃぁ、おやすみなさいね」 
「おやすみなさいっ!」 

 唯と憂は声を合わせて応え、そのまま階段を上って行った。 




284 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:53:25.25 ID:esbY0niM0
 日付が変わった頃だった。 
 コンコンというノック音に唯は起こされた。 

「うぅん……誰ぇ?」 
「唯、父さんだ。ちょっといいか?」 
「うんっ!」 

 父の声が聞こえると、唯はすぐに元気になった。 
 父はそのまま部屋に入ってきた。 

「どうしたの?」 
「唯、ちょっと散歩に行かないか」 
「うんっ!」 

 2人は静かに家の外に出た。 
 月が綺麗に2人を照らす。 
 雲ひとつない、綺麗な夜空。 
 珍しく星が輝いて見える。 

「綺麗……」  

 唯が思わずため息を漏らす。 
 だが、父は空を見ずに唯の横顔を見つめていた。  

「唯……父さんな、唯に話さなきゃいけないことがあるんだ」 
「えっ?」 

 唯が振り向いた先にある父の顔は、少し暗かった。 



287 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:54:43.94 ID:esbY0niM0
「唯は、父さんと母さんがいつも何してるか知ってるか?」 
「う~んと、いつも海外で旅行してるんでしょ?」 
「そうだな。お前達2人にはいつもそう言ってたよな……」 

 父はふと昔を思い出して、何ともいえぬ哀愁を漂わせた。 
  
「思えば、お前達も大きくなったもんだ」 
「やだなぁ、照れちゃうよっ」 

 唯は思わず顔を赤らめる。 

「実はな、父さん達は唯に隠していることがあるんだ」 

 そう言って父は歩みを止め、唯の顔を見つめた。 
 唯も自然と歩みを止め、父の顔を見つめる。 

「あのな……父さんと母さんはな……」 

 しばしの沈黙。 
 唯は生唾をゴクリと飲み込んだ。 

「諜報部員なんだ」 

 月明かりに照らされた父の顔が、今まで見てきた中で一番真面目に見えた。 






288 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:56:49.32 ID:esbY0niM0
「えっと……お父さん?」 

 唯は次に言うべき言葉を選びたかったが、頭がこんがらがってしまった。 

「その……つまり……」 
「そう、父さん達は『スパイ』なんだ」 
「はわわっ」 

 唯は思わず天を仰いだ。 
 相変わらずため息の出そうなほど綺麗な夜空だ。 
 だが、今度はため息は出なかった。 

「今まで黙っていて、すまなかった」 
「うん……」 
「だが、もうすぐお前も18歳だ。もう知らなくてはいけない年になってしまった」 
「別に……嫌じゃないよ」 
「……?」 
「お父さんとお母さんがスパイでも、私、大丈夫だよ」 
「そうか……」 

 だが、父はそのまま黙ってしまった。 

「……お父さん?」 
「唯……スパイ映画は見たことあるか?」 
「えっ」 

 突然の質問に、唯は思わず戸惑う。 



290 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 21:58:01.06 ID:esbY0niM0
「ん~と……テレビでちょっとだけ」 
「そうか」 

 再び父は歩き出した。 
 つられて唯も歩き出す。 
 ただ来た道を戻るだけなのに、なんだか全然違う道のように見えた。 
 家の前まで来ると、再び父は歩みを止めた。 
 そして、そのまま何かを考えているようにうつむく。 

「……どうしたの? 入らないの?」 

 唯の声にも、父は動かなかった。 
 しばらく、そのまま時が流れた。 
 5分ほどそうしていただろうか、突然父が口を開いた。 

「唯……来てくれないか」 
「えっ?」 
「……ボスが待っているんだ」 
「ぼ、ぼす?」 

 唯にはとても理解できなかった。 

「えっと……それはどこかに出かけるっていうこと?」 
「すまない、もう時間がないんだ」 

 父は突然、懐から携帯電話のような端末を取りだした。 
 何度かボタンを押し、それを耳に当てる。 




292 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/29(火) 22:00:27.92 ID:esbY0niM0
「私だ。昨日の場所に来てくれ」 
『了解しました』 

 短いやり取りを終えると、再び唯に目をやる。 

「今から出発だ。朝までには戻れると思う」 
「はわわっ?」 
「車に乗るぞ、唯」 

 そう言って父は車の所まで歩いて行き、助手席のドアを開けた。 

「細かい説明はここでは出来ないんだ。乗ってくれ」 
「う、うん……」 

 唯は少し迷った。 
 だが、目の前にいるのは紛れもなく父である。 
 心の中で決心を付け、唯は車に乗り込んだ。 
 すぐに運転席へ父が乗り込む。 

「眠かったら寝てていいからな」 
「うん……」 

 車の緩やかな振動は、唯を再び深い眠りへと誘ってゆく。 
 薄れゆく意識の中で、唯はぼんやりと思った。 

(夢、なのかな……これ) 

 丑三つ時の住宅街を、車は走り抜けて行った。 


476 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 21:17:58.74 ID:2w+NyyNI0
「唯、着いたぞ」 

 父が車のドアを開けた音で唯は目を覚ました。 
 眠そうに眼をこすりながら、車の中から外を見回してみる。 

「……ここは?」 
「秘密基地、だ」 

 助手席のドアを開けながら、父は唯の問いに答える。 
 その直後、背後から声がした。 

「待ったぞ、ヒラサワ」 
「すみません、ボス」 

 相手はいい感じに太った中年男でいい感じにスーツを着こなす、どう見てもそこらにいそうなおじさんだ。 
 だが、声はその体に似つかず妙に澄んでいた。 
 男は唯ににこやかに笑いかける。 

「初めまして……かな? 平沢さん」 
「は、はじめまして!」 

 いきなりだったので、妙に緊張してしまった。 
 だが、唯は頭の片隅で妙に引っかかるような気がしていた。 
 そう。この男、見たことがあるような…… 
 そして男は唯の疑問を見透かすように笑い声を上げた。 


477 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 21:22:15.68 ID:2w+NyyNI0
「はははは。これなら分かるじゃろ」 

 笑い声の後のしわがれ声。 
 その声を聞いた瞬間、唯は確信した。 

「こっ、校長先生!?」 
「いかにも」 

 満足げに頷きながら、校長は唯に背を向ける。 

「君の話はさわ子君からも聞いておる」 
「そ、そうなんですか?」 
「うむ。随分と天然な女の子だそうじゃないか」 
「はわわっ」 

 唯は少し照れた。 
 自分でも半分自覚しているつもりだったが、それでも面と向かって言われると少し恥ずかしい。 

「すまないが、ここからは元の声でいかせてもらうよ」 

 そう言いながら、校長の声はしわがれ声から元の妙に澄んだ声に変わっていった。 
 何かすごい隠し芸でも見たかのように目を輝かせながら、唯は尋ねた。 

「どっちか地声なんですかっ?」 
「ふふ、秘密だ」 

 口に軽く指を当てながら、校長は済んだ声で答える。 
 そして、そのまま近くにあった椅子に腰を下ろした。 




478 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 21:33:02.28 ID:2w+NyyNI0
「まぁ、座りたまえ」 

 そう言いながら進められた椅子に、唯は遠慮がちに座る。 
 父も続けて座った。 

「自己紹介がまだだったね」 
「えっ、校長先生ですよね?」 
「それは表の顔で本業は秘密諜報部員のボス。という訳だ」 

 校長が不敵な笑みを浮かべる。 
 唯は校長の言葉が理解できなかった。 

「まぁ、突然言われて納得しろというのが筋違いだ」 

 黙りこくってしまった唯を見ながらそう言うと、手元のスイッチを押す。 
 校長の後ろの壁に、突然映像が浮かび上がった。 

「聞いたと思うが、君のお父さんも秘密諜報部員だ」 
「は……はい」 
「ヒラサワには世界中を駆け巡って活躍してもらっている。仕事熱心な奴でな」 

 そう言って校長は父に視線を移す。 

「はは、照れますよボス」 
「だが、それと引き換えに家庭という大切なものを奪ってしまった」 

 校長は二人に向き直った。 


480 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 21:38:05.75 ID:2w+NyyNI0
「いまさらだが、許してくれ。これには私の責任もあるんだ」 
  
 すこし頭を下げる校長に、父が慌てて声を掛ける。 

「そんな、ボス、あなたのせいじゃないんだから」 
「私の人望が無かった。それが元で人材不足に落ちいったのは事実だろう?」 

 校長は遠い目をしていた。 

「それを言ったら国の責任でしょう」 
「む……」 
「景気が悪くなれば、給料も安くなる。しょうがない話です」 
「しかし、それで残ってくれたのはわずかばかり」 
「こんなに命懸けの国家公務員なんてありませんからね」 

 唯には何が何だか分からない。 
 ただ、乾いた笑いが交る会話が景気のいい話でないことは分かった。 

「人材不足という四文字がいつも私の頭に付きまとう……」 
「察しますよ」 
「ふむ……」 

 ふと、唯は校長の視線を感じた。 




481 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 21:42:13.46 ID:2w+NyyNI0
「しかし、本当にいいのかね?」 
「えぇ、能力は間違いなくあります」 
「ふむ……私としても、軽い任務を優先的に与えるつもりだ」 
「そうして頂けるとありがたい」 

 そして、その視線が2人に増えたのを感じた。 

「唯……」 
「な、何っ?」 
「耳をすましてみてくれ」 

 突然何を言われるかと思った唯は、意外な言葉に言われるがままに従った。 

「どうだ、何か聞こえるか?」 
「うん、話声が……」 
「ほほぅ」 

 とたんに校長が驚きの声を上げた。 

「話は本当のようだな」 
「えぇ」 

 唯には何が何だか分からない。 
 ただ、人の会話が聞こえたのは事実だ。 




482 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 21:49:21.30 ID:2w+NyyNI0
「唯、落ち着いて聞いてくれ」 
「う、うん。大丈夫だよ。もう驚き過ぎて、落ち着いちゃってるから」 

 父は少し間を置いて言った。 

「お前は普通の人より、すこし優れた能力を持ってるんだ」 
「へっ?」 
「そのな、例えば今のを例に挙げれば、お前はすごく耳がいい」 

 そう言われて思い出した。 
 梓に耳だけでチューニングをしていたことに驚かれたことを。 

「でも、そんな人よくいるし……」 
「それだけじゃない」 
「ふぇ?」 
「目もいいし、体も丈夫だ」 
「で、でも私、体育の成績あんまり良く無いしぃ……」 
「すまんな、少し力を押さえさせてもらったのじゃ」 

 校長がにこやかに暴露する。 

「へっ!? 校長先生が?」 
「そうじゃ。少なくとも学校ではな」 
「でも、どうやって?……」 
「学校には銅像があるだろう? それがいわゆる『結界』のように君の力を押さえていたのだ」 
「???」 
「まぁ、そんなに深く考えなくてもよい」 


483 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 21:54:56.74 ID:2w+NyyNI0
「母さんと父さんは、そういう能力を生かして国のためにスパイをやってきたんだ」 
  
 父がさらりと言う。 

「ま、職場結婚には驚いたがな」 
「それは言わない約束でしょう」 

 唯は悟った。 
 この二人が自分にしてほしいことを。 

「えっと……」 
「何だ? 唯」 
「もしかして、私がこの仕事をすることになるの?」 

 二人は顔を見合わせ、そして同時に言った。 

「そういうことだ」 
「そいうことじゃな」 

 唯はそれを聞き、満面の笑みになった。 

「じゃぁ空も飛べるの!?」 
「えっ?」 
「魔法みたいに、指先一つで物も動かせるの!?」 
「おほっ?」 

 そう言いながら、唯はくるくる回ったり、跳ねたりしてみせた。 




484 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/30(水) 22:01:29.28 ID:2w+NyyNI0
「ホイミっ!」 
「……」 
「ファイラ!」 
「……」 
「懐かしいのぅ」 
「えぇ。どこで聞いたんだか」 
「……」 

 二人の軽薄な反応に、唯はすぐに黙ってしまった。 

「まぁ、今日の所はこんなもでいいじゃろ」 
「そうですね」 

 校長が立ち上がると、父も立ち上がった。 

「唯、明日は学校だ。この話はまた今度しよう」 
「ふぇっ!?」 
「明日学校に行けば、また知ることがある、残りはその時までのお楽しみだ」 
「えっ!? それってどういうこ――――」 

 唯の記憶はそこで途切れる。 
 気付けば朝で、唯はベッドの上で寝ていた。 
 そう、いつものように。 

[指令1]‐[終わり]