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207 : ◆gqCNLT9EC. :2009/06/14(日) 02:47:07.62 ID:2zbtRehy0
恋と友情
コンコン
俺「律、入るぞ。」
毎度のことだが、律の部屋の壁に貼られてる絵は慣れない。
キングクリムゾンだかなんだか知らないけど、こんな訳のわからん絵を
でかでかと飾ってる女子高生も、世界広しといえどコイツくらいだろう。
律「あんたかよ。何しに来たの?」
俺「病人の部屋にギターの練習しに来るヤツはいねえよ。ほら、ポカリ飲め。」
律「…ありがと。」
おかしい。なんでこんなにしおらしいんだ。
律とは小学生の時からの付き合いだが、コイツは風邪を引いたくらいで
ここまでおとなしくなるようなヤツじゃない。
コイツがこんな風になるきっかけと言えば、思い当たる節は一つしかないな。
209 : ◆gqCNLT9EC. :2009/06/14(日) 02:48:37.95 ID:2zbtRehy0
俺「で、どうしたんだ?」
律「ん…何が?」
俺「澪と何かあったんだろ?」
律「な、何でわかるんだよ!?」
図星か。
中学時代に組んでたバンドで、ドラムの律とベースの澪は、リズムパート同士、
そして女同士で、とても仲良しだった。
仲良し過ぎて、同じ高校に進学したくらいだもんな。
あの律が、あんなお嬢様学校に進学できるなんて、バンドメンバーは夢にも思っていなかった。
まぁ、それも澪の努力の賜物だったんだろうけど。
俺「で、何があったんだよ。」
律「澪が、クラスの女子と仲良くしてるのが気に入らなくてさ、
ちょっかいをかけても、いつもみたいなノリで返してくれなくなって、
なんか私だけが空回りしてて、バカみたいでさ…。」
俺「全く、何やってんだよ高校生にもなって…」
律「私だってそんなこと分かってるよ!!」
211 : ◆gqCNLT9EC. :2009/06/14(日) 02:49:53.78 ID:2zbtRehy0
思わぬ大声にひるんでしまう。病人の癖にどっからこんな声が出るんだよ…
俺「あー、悪かった。でもさ、ホントは嬉しいんだろ?」
律「…何が。」
俺「澪に新しい友達が出来たことだよ。それに…」
律「…それに?」
俺「それでも、澪にとって一番大切な友達が律であることは変わらない。
それを一番分かってるのは、お前なんじゃないのか?」
律「………そう…だよな。…それ、なのに、私、
澪に、ひどいこと…言っちゃって…っ」
俺「泣くなよ。澪だったら絶対分かってくれるから。」
律「…っ、ごめん…」
俺「ほら、鼻かめよ。澪はまだ来てないんだろ?
澪が来るまでに泣き止んどかないと、また心配させちまうぞ?」
律「うん……ありがとう。もう大丈夫。」
俺「そっか、よかった。でも、さっきノックしたのが俺じゃなくて
澪だったら、今頃澪の前で泣き喚いてたかもな(笑)」
律「ふふっ、それはないって分かってたよ。澪だったら足音で分かるもん。」
俺「…そっか。そうだったな。」
212 : ◆gqCNLT9EC. :2009/06/14(日) 02:50:42.14 ID:2zbtRehy0
まただ。いつもコイツは、何も知らないまま俺を苦しめる。
澪への気持ちは友情だし、俺への気持ちも友情。澪への気持ちの方が、律の中で強いだけ。
…だけど、俺の律への気持ちは、違う。
澪に嫉妬してしまう俺に、今日の律のことをガキ呼ばわりする資格なんてない。
ちくしょう。それもこれも、鈍感なコイツが一番悪いんだ。
今日だってバンドの練習抜けて来たのに、コイツが俺に見せる表情は変わらない。
でも…
律「…話聞いてくれてありがと。助かったよ。」
この笑顔を見れるだけでも、他のヤツの何倍も幸せなんだよな…。
くそぅ、とんだ小悪魔だ。
214 : ◆gqCNLT9EC. :2009/06/14(日) 02:52:17.10 ID:2zbtRehy0
俺「いいっていいって。それより早く風邪治して、澪とちゃんと仲直りして、
学園祭の練習、頑張れよ。」
律「うん、あんたもね。今年もあんたの高校と同じ日になっちゃったんだよな。」
俺「そうだな。俺のギターを聞かせられなくて残念だよ」
律「それは私のセリフだよ。私のドラム、あの頃より断然上手くなってるんだからな。」
俺「ほー、それはそれは、聞ける日が楽しみだな。」
いつもの悪ノリ。こんな時間も、本当に楽しいんだけど…
律「約束、忘れてないだろうな?私たちとあんたのバンドは…」
俺「いつかフジロックで対バンする、だろ?」
…その日までには、ちゃんと気持ちを伝えよう。