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135 :夏のあずにゃんとか 1 ◆a4EuUfghw6 :2009/07/14(火) 04:03:19.40 ID:iisblnGi0  夏真っ盛りです。  街を歩いていると、私、梓もたまらない暑さにへこたれそうになります。街の人も、打ち水をしたり日傘を差して どうにか快適にしようと工夫していますが、皆汗だくです。  私も、ただでさえ暑いのに、背中のギターケースが熱を吸ってしまって、もう頭の中がぐちゃぐちゃです。  それでも、ここに来て引き返すなんて事はできません。もうすぐ、唯先輩のお家なのですから。 「あずにゃぁぁぁん」  先輩の情けない電話が掛かってきたのは、今朝の事でした。 「唯先輩、どうしたんですか?」 「なぁ~んにもね、やる気がでないのぉ~」  電話越しに、フローリングを転がる音が聞こえます。合宿前に先輩のお家にお邪魔した時のあの姿を思い出して、 聞こえないようにため息をこぼしました。 「もうちょっとしゃきっとしましょうよ」 「そうは言ってもねぇ~」  声が転がる音と連動して、ますます情けなく震えます。今度は隠さずに息を吐きました。 「もう……何かないんですか? 宿題するとか――」 「あ、あずにゃんはこんなに暑いのに、宿題をしろと言うのかぁ~! 酷いよあずにゃんー!」 「ち、違いますよ! 例えで言っただけで……そ、そうだ練習! 練習しましょう!」  慌てて私が言うと、不意に電話の先でなっていた、ゴロゴロという音が消えました。 「――れんしゅう」  思わず、私は力いっぱいに言いました。 「そうです、練習ですよ!」  練習、という単語に先輩が反応してくれた事が嬉しかったのです。電話先でしばらく「うーん」と先輩はうなってから、 今日一番の明るい声で言いました。 「それじゃあ、あずにゃんも一緒にやろう!」 「えっ……!?」  私が驚いている間に、憂がスイカを切って待ってるよ、と言い、唯先輩も「あずにゃんがこないならまたゴロゴロするよ~」 なんて事を言い出して――。  こうして、私は暑い中、ギターケースを背負って唯先輩のお家に向かうことになったのでした。 832 :夏のあずにゃんとか 2 ◆a4EuUfghw6 :2009/07/15(水) 04:28:37.48 ID:B7KUwTzX0 「いらっしゃい!」  ようやくたどり着いた平沢家のインターホンを鳴らすと、すぐに憂がドアを開けてくれました。家の中からふわっとしたにおいが 溢れてきます。蕩けそうなくらいだった外の空気と違って、ふわふわした、平沢家独特の、不思議と暖かい空気です。 「もうとけちゃいそうだったよー」 「そうかもね、お姉ちゃんったら、扇風機占領してるのにトロトロだから」 (ああ……やっぱり)  そう思わず声に出しそうになったのをこらえて、憂に笑顔で相槌を打ちました。 「あずにゃぁぁん」 「うわぁっ!」  リビングについて早々、唯先輩が私に抱きついてきました。 「あずにゃん、よくきたねー」 「ほっぺをくっつけてすりすりするのはやめてください! 暑苦しいです……ってあれ、暑くない」  唯先輩のいきなりのスキンシップには驚いたのですが、先輩の体が随分冷たくて、二度ビックリして しまいました。 「先輩、ずっと扇風機に当たってたんじゃないですか? 体冷いですよ?」 「え? そう言われると、あずにゃん温かくて気持ちいいかも……」  そう言って、先輩は益々体を寄せてきます。 「ずーっと当たってるのは、健康に悪いですよ」 「だってー暑いんだものー……ぎゅー」 「ひゃあ!」 「うあー、あずにゃーん。もう今日ずっとこのままでいいよー」 「えっ、先輩、えっ!?」  思わぬ言葉に、私の色々な部分が急にドキドキしだしました。そんな、でも、私も唯先輩とベタベタするのは別に嫌じゃ―― って、そうじゃなくて! 「れ、練習に来たんですよ! 練習しましょう、練習!」 「あ、そだったねー」  ちょっと上ずった声で先輩をなんとか引き剥がし、私は慌てて自分の準備を始めました。  ――準備中もずっと落ち着かなくて、唯先輩がギターを取りに行っている間に、何度も小さく深呼吸をしたのは ここだけの秘密です。

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