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春。出会いと別れの季節などと銘打たれる季節。 ID:C5Gj/DyD0」(2009/07/22 (水) 15:30:35) の最新版変更点

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39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/14(火) 01:38:01.57 ID:C5Gj/DyD0 春。出会いと別れの季節などと銘打たれる季節。 教室の中には、心地良い雰囲気が漂っていた。 新入生たちの顔は一様に明るく、個々の顔からいよいよ始まろうとしている高校生活への期待が滲みでている。 ある生徒は早速気が合う仲間を見つけて意気投合しており、 またある生徒は外の桜を眺めながら、のどかに微笑んでいる。 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/14(火) 01:39:39.98 ID:C5Gj/DyD0 僕はそんな教室の光景を眺めて、穏やかな気分になりながら 自分も随分と変わったな、と自覚させられる。 以前までの僕は、こんな風に何かに心を動かされることがあっただろうか? こんな風に穏やかな気分になることがあっただろうか? なかっただろうな、と僕は苦笑する。 自分のことしか見えておらず、他人など只の競争相手だとしか思っていなかったあの頃。 思い出すだけで、鬱屈とした気分にさせられる。 でも、そんな僕を変えてくれたのは…… 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/14(火) 01:40:40.02 ID:C5Gj/DyD0 「ねえ、君。一体何見てんのさ?」 声をかけられたのだと分かり、僕が声のほうに顔を向けると、 そこには同じクラスになった男子生徒がいた。 彼の視線は僕の手にある一枚の写真に向いていた。 「へえそれってもしかして君の……」 「違うよ。」 僕は彼が言わんとしていた言葉を予測して、やんわりと否定する。 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/14(火) 01:41:44.84 ID:C5Gj/DyD0 「この子は僕の大切な……」 大切な、なんなのだろう。 僕はあの頃、この子をどんな風に見ていたのだろうか。 ……駄目だ、的確に言い表せそうにない。 少なくとも、今目の前にいる彼が思っているのとは違う、 ということははっきりしている。 僕はしばし考え、適切な言葉を探し、 「大切な……仲間だったんだ。」 言ってみてから、割としっくりきたことにちょっと満足する。 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/14(火) 01:44:06.13 ID:C5Gj/DyD0 僕は、そこで目を閉じる。 湧き出てくる様々な記憶の中から、彼女の姿を探す。 最初に思い出すのはやっぱり (これからしばらくの間よろしくねー) ほんわかとした声から始まる、あの出会い。 記憶の中で茶髪の彼女が微笑んでいる……。 72 :回顧録:2009/07/14(火) 02:21:01.34 ID:C5Gj/DyD0 「ねえ、昨日のアレ見たー?」 「ああ、アレ。ちょーおもろかったよねー。  なんか感動したっつーか。」 「あはは、マジうける~!」 中心の立場にある女生徒とその周りの連中がけたたましい笑い声を 上げている。 何を話題にしているのか、などといったことは正直言ってどうでも良かったのだが、 とにかく騒々しかった。 74 :回顧録:2009/07/14(火) 02:23:14.25 ID:C5Gj/DyD0 (うっせえな……今授業中だろ。) (授業邪魔すんなら出てってくんねーかな。うぜえ……) そんな連中を見て、僕はとてつもなく荒んだ気分だった。 「はいここ、テストに絶対出るからなー!しっかり押さえておけよー!」 教師がそう言ったのを合図にして、僕は授業に集中し始めた。 75 :回顧録:2009/07/14(火) 02:24:26.32 ID:C5Gj/DyD0 ……普段、この教師はよく雑談をして皆を笑わせている。 どうやらその雑談のおかげで、この教師は生徒から結構な人気があるらしい。 僕としては正直雑談などどうでもよく、 興味があるのはどうすればテストの点が上がるか、 どうすれば教師に良い印象をもってもらえるか……それだけだった。 人付き合い?そんなもの何の役にも立たない。 馴れ合いなんて、要るわけない。 競争こそ、自分の生き甲斐だった。 76 :回顧録:2009/07/14(火) 02:25:24.43 ID:C5Gj/DyD0 ある日の朝のHRで、席替えをすることになった。 僕としては、どうしてそんなことをするのかがまるで分からなかったが、 周りの連中は嬉しそうだった。レベルが低い奴ら。 席替えが終わり、HRの終わりを告げる鐘が鳴る。 僕はロッカーにある一時間目の授業の教材を持ってくるために、 立ち上がろうとした。 77 :回顧録:2009/07/14(火) 02:26:17.45 ID:C5Gj/DyD0 そこで、声をかけられた。 「隣の席になったねー」 なんとも間が抜けた独特の声だった。 僕はそんな声のした方へ顔を向ける。 たぶん、表情はとても怪訝そうなものだったと思う。 「よろしく~」 しかし、声の主の顔を見ても、僕には誰だか分らなかった。 人の顔を覚えるなどといったことは煩わしいし、 そんなものを覚える暇があったら、その分の脳の容量を 暗記科目の勉強のために使いたかったからである。 80 :回顧録:2009/07/14(火) 02:28:28.97 ID:C5Gj/DyD0 (……あー) なんて返せばいいんだろうなあ。正直言って、面倒くさい。 「あっ、自己紹介しなきゃ」 少し慌てた素振りを見せた後、彼女は居住まいを正して 「平沢唯だよ。よろしく~」 と言った。 83 :回顧録:2009/07/14(火) 02:31:46.35 ID:C5Gj/DyD0 「……よろしく」 多分、僕の顔は無愛想なものだったと思う。 内心では、 (自己紹介?もう3年生に進級してから結構経ってんだろ? いまさらしなくて良いよ、かったるい。) (それともなんだ?馴れ合いたいのかよ。  あーやだやだ。一体なんなんだよ) などといった荒んだ感情が渦巻いていた。 561 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/14(火) 22:11:53.20 ID:C5Gj/DyD0 「……おい、どうした?」 はっと気付くと、そこは高校の教室だった。 回想に浸ってから、どれほどの時間が経ったのだろうかと思い、 時計を見遣る。 驚くことに、時間はさほど経過していなかった。 「つい、昔のことを思い出してしまっていたんだ。」 僕がそう答えると、目の前の彼はほっとした顔をする。 「いきなり黙り込むから心配したぞ。」 「ごめん。君に心配をかけてしまったみたいだね。」 「まあ、何事もなくて良かったけど、な。」 そんなやり取りをしているうちに、僕たちのクラスの担任教師がやってきた。 生徒たちは慌てて各々の席に戻り、 僕を起こしてくれた彼もまた自分の席に戻る。 563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/14(火) 22:12:38.82 ID:C5Gj/DyD0 (平沢唯……か) 彼女は今どうしているのだろうか? 自分が夢中になれることを見つけられただろうか? 次に僕が思い出すのは……。 579 :回想:2009/07/14(火) 22:25:52.18 ID:C5Gj/DyD0 このようにして、僕と平沢唯は隣同士となった。 僕としては、正直誰が隣になろうとどうでも良かったので 席替えの結果に特別な感慨を抱くこともなかった。 ところが、クラスの連中の話によると平沢唯は 結構人気が高いらしい。 588 :回想:2009/07/14(火) 22:30:58.73 ID:C5Gj/DyD0 「いやー、お前がうらやましいよ、ホント。  なんてったってあの平沢唯が隣だろう?  俺だったら、飛び跳ねて喜んじまうね。」 そいつはそんなことを言うと、僕の前で気持ち悪く体をくねらせた。 見るに堪えない。 「……ふーん、そうなのか。」 僕は会話を打ち切って席を立とうとする。 602 :回想:2009/07/14(火) 22:39:56.33 ID:C5Gj/DyD0 「ちょ、ちょっと待てよ!?  お前自身は、あの子と隣の席になれてどう思ってんだ?」 面倒くせえなあ、こいつは。 「別に……どうも思っちゃいないよ。」 「いや、お前それはねえだろう。  まず、性格!ほんわかとしていて、とても親しみやすい。  次に、体型!どこかあどけない感じの残る、未発達な感じ。  最後に、顔!とても整っていて可愛らしい!!  一体何が不満なんだ、コンチクショー!」 ……僕は彼の言葉になんて返せばよかったのか。 分からなかったので、そのまま無視した。 604 :あとがき:2009/07/14(火) 22:41:26.96 ID:C5Gj/DyD0 とりあえず、一旦ここまでということで。 中途半端な感じになってしまい、申し訳ありません。 いやーしかし、そろそろ主人公と唯の絡みを描かないとなあ。
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